鈴木俊隆 「禅マインド ビギナーズ・マインド」 サンガ新書 2012 | 日々是本日

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bookudakoji の本ブログ

アメリカで禅の指導を推進した鈴木俊隆老師の本である。

 

帯には「スティーブ・ジョブズが愛読した禅のバイブル」とある。

 

これはジョブズの伝記で深い影響を受けた本として挙げられていることに由来するようである。

 

▼新書版

※単行本の出版年は2010年

 

タイトルからは思想的な説明が中心の本である印象だったが、

実際には禅マインドであるための凄く実践的な内容であった。

 

読む前に思ったもう一つのことは、

「ビギナーズ・マインド」とはどういうことだろうということだった。

 

プロローグの冒頭はこう始まる。

 

「初心者の心には多くの可能性があります。

しかし専門家といわれる人の心には、

それはほとんどありません。」(p30)

 

どういうことだろうか。

 

「初心者の心、「初心」には、「私はなにかを得た」というような思考がありません。」(p33)

 

「このとき、私たちは、初めてなにかを学ぶことができます。」(p33)

 

そして、「常に初心者でいるということ、ここに禅の本当の秘密がある」(p34)という。

 

実際の禅の心は「無心」であるという。

 

それ故に、「私たちの心は、ものごとをなんの難しさもなく、

ありのままに受け入れなければなりません。」(p235)ということなのであり、

これが「不動の思考」であり、「マインドフルネス」であるという。

 

ソローの言葉が思い出される。

「見るべきものをつねによく見る、という訓練に比べれば、たとえその内容がどれほどみごとに選ばれたものであろうと、歴史、哲学、詩などの講義は取りに足らないし、最高のひとびととの交際、あるいはこのうえなく立派な平素な暮らしぶりなどにしても同様である。」(ソロー「森の生活(上)」岩波文庫p201)

 

こうした心の在り方に続く道は「一途の道」であり、

「一瞬一瞬に己の真の性質、誠実さを表すという道」(p100)であるという。

 

孔子の言葉が思い出される。

 

「私は一つの事を貫いている」(「論語」衛霊公第十五の三)

 

ソローも孔子もマインドフルであったのだ。

 

「初心」に帰ろう、「ビギナーズマインド」に戻ろう、まだ遅くはない。