松村進吉・丸山政也・鳴崎朝寝「エモ怖」
私は流行り言葉に疎くて【エモい】の意味が分からず、ググってみたところ『なんともいえないすてきな感情に揺さぶられる』ことを指すようだ。
一見、ライトノベルとみまごうばかりに可愛い表紙だが、中身は不可思議なお話揃い。読む前はタイトルの印象から、恋愛や親子の情に限られたセレクションかな?と思い込んでいたが、そんなことはなかった(もちろんそれらが無いわけではないが、メインストリームではない、みたいな)。
お気に入りを下記に。
歌声/のどかなようで、怪異のビジュアルはかなり不気味!
はねるさかな/怖いのに、なぜかほのぼのしてしまう。
連れてきた少年/涙…。
終点より先/物理法則を無視して近づく、怪異のありようにゾッとする。
憧れの延長線上/あり得たかもしれない未来だったのか、過去の亡霊か、平行世界の賜物なのか…。
祖父のこと/高齢化社会では、他人事ではない話。人の生き方とは…読んでいて、ズシッとくるものがあった。
加藤一 編著「恐怖箱 心霊外科」
超1出身者に、新たな書き手も迎えて送られる病院怪談アンソロジー。
タイトルから、外科に限局した怪談なのか?と思いきや、病院のみならず、保健室や通院中の人の怪談まで幅広く収録されていた。
印象に残った怪談を下記に。
カーテン/怪異よりもひとの反応が悍ましさ覚える一編。
ロシアンごみ箱/お茶目な怪異…なのかも??
流行怪/我が身に起きたらと思うと、グロすぎる…!
かれらのことー奇譚ルポルタージュ/引き込まれる謎。解かれないことで、一層余韻を残す。
ぼっかけてくる/稀有な才能かもしれない…。
痺れ/妙に納得してしまう、因果。
なれはて/呪いの迫力たるや!
巣くう/どうなってしまうのか、ハラハラしてしまった。
ファントム・ペイン/本書と同時発売の怪談四十九夜・断末魔収録の拙作と共通項があって興味深い。「幻の左」も併せて是非(宣伝)。
黒木あるじ編著「怪談四十九夜 断末魔」
もうシリーズも8冊目だそう。
参加させていただいて手前味噌になるが、ほんとにレベルの高いアンソロジーであると思う。毎回、〆切前には青息吐息の私だが、見本誌は純粋な読み手として、一怪談ジャンキーに立ち戻って拝読している。
印象的だった話を下記に。
つくね乱蔵/小川さんの願い いずれにせよ異能持ちなのだから、ネガティブなことのみに使用するのはもったいない!
我妻俊樹/ブンブン 意味不明さと奇妙さとが際立つ作品。切りっぱなしのようなラストの余韻も良。
鷲羽大介/消えた僕 想いがそこに残っていたのだろうか…。
冨士玉女/アがなく 伝えたかったが伝わらなかった、忠告がやるせない。
川奈まり子/サコシン 怪異のタイプ自体はありふれているかもしれないけれど、それを見つめ考察する著者の眼差しがあたたかく、こころよく感じられた。
黒木あるじ 連作のため、一編のみを切り出してどうこう言うのは難しいが、ラスト「資料」の謎解きにはハッとさせられた。
小原猛/はらのなか ええ話や…毒をもって毒を…のようでハラハラしながらもスカッとする。
小田イ輔/猿と煙 煙ながら、ずっしりと存在感のある怪異!
黒史郎/レストランにて 微笑ましかった様子が鮮やかに裏返るラストに慄く。
2020年11月の読書まとめ
戸神重明「怪談標本箱 毒ノ華」
北関東の怪物こと、戸神怪談新作は冷え冷えと恐ろしい内容で重めの読後感(
)。
いつもの昆虫怪談はなりをひそめ、死んでからも生きていたときと変わりなく、否、生前以上の悪意を理由もなく炸裂させる、困った霊たちがわんさか登場する。
やはりな、霊もかつては生きていたヒトだったんだものな…と実感させられる。
私的お気に入りを下記に。
新犬鳴トンネル/出現した怪異そのものよりも、体験者の体質(?)が恐ろしい。
秋のトンネル/もし袋を開けられていれば、運命も異なっていたのだろうか…?
山手線の朝/なんとも不気味!見てみたいような、見てみたくないような…。
アウトサイダー/真相が気になる!
鹿児島の一家/こんなに奥ゆかしい男性なら怖くないかも(でも、やっぱりいやかも)。
福岡のループ/取り込まれてしまうということなのか…恐ろしい。
(
)鬱エンドが多いので、今までの著作と比べてヘヴィーに感じるのかも。
そして、明日土曜日は高崎駅からバス20分ほどの場所で、帰ってきた高崎怪談会が開催されるそうですよ!近隣じゃなくとも、ネット配信で聴けるとか。怪談ファンは注目ですな。
詳しくは著者のTwitter、@togamiをどうぞ。