ロバート・A・ハインライン No.39.5◇落日の彼方に向けて・下◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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モーリンはテラス・ターシャスに帰れるのか。そしてウロボロス・サークルはロング家の始まりの人を救出する!

 
 

 
◇落日の彼方に向けて・下◇ -To Sail Beyond the Sunset-
ロバート・A・ハインライン 矢野徹 訳
 
 
『メトセラの子ら』で登場し『愛に時間を』『獣の数字』『ウロボロス・サークル』でも活躍する、ハインラインの作品中もっとも魅力的なキャラクターであるラザルス・ロング。本書はこのラザルス・ロングの母であり、共同妻のひとりでもあるモーリンを主人公とし、その生い立ちからいまに至るまでを綴ることで、「未来史」シリーズにふくまれるすべての作品を、見事に結合させた。SF界の巨匠、ハインライン最後の長篇。
 
 
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あらゆる時間線を管理・修正するウロボロス・サークルの救助はメッセージをつけた猫ピクセルにかかっている。モーリンはその間、1982年に救出されるまでの人生を振り返る。
 
 
ラザルス・ロングとの出会い、彼が教えてくれた彼にとって「事実」(=モーリンにとっては「予言」)を基に自身にもハワード財団にも利をもたらす。一方、私生活の方は激変する。良人ブライアンと離婚し、末息子ドナルドと末娘プリシラの近親相姦と非行に悩まされる。そして新しい愛人のハリマンと一緒に宇宙企業を発展させる。
 
 
モーリンは死刑になる直前に「美的削除委員会」なる団体に救助させるが、そこもモーリンの助けにはならなかった。モーリンをついに助けた「ウロボロス・サークル」は今度はラザルス・ロングの始まりであるモーリンの始まりーーー父親アイラ・ジョンソンを戦時下の英国から救出する作戦に出る!
 
 
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ついにハインライン最終作です。
モーリンをはじめ、ラザルス・ロングら〈未来史〉シリーズ、「宇宙の呼び声」「月は無慈悲な夜の女王」の主要キャラクターたちがウロボロス・サークルのメンバーとして一堂に会します。
 
 
ここで「月を売った男」が出るとは。ハインラインはどこから〈未来史〉の構成を練っていたのでしょう。モーリンの歴史の中にどれだけのハインライン作品が盛り込まれていて、それがラストーーー第二次世界大戦の結末に繋がるとは! ウロボロス・サークルのーーーというかハインラインの狙いはここにあった!
 
 
蛇足ですが、本書を読んで「あー、ウロボロス・サークルってアシモフの「永遠の終わり」で〈永遠人〉がやっていることじゃん」と気づきました。気づくの遅いよあんた……
 
 
さて、本書の目玉はここでもモーリンの人生回顧録です。ここではある意味純真だった時代は終わり、決別したり、決裂したり、後々まで悩みを抱えたりと背中を向けるモーリンの姿が描かれています。これってつまり、自分の属する世界線から永遠に後にする準備なんですよね。
 
 
モーリンは性愛のことになると(私たちの感覚では)節操なしに見えますが、悔しい、カッコいいんだな。どんな時でもブレずに自分の価値観を持っている人というのはどんな人間でもつい尊敬できちゃうんですね。
 
 
これはハインライン最後の作品です。故に本書の最後はハインラインにとって「1番描きたかった最上にして、最後のゴール」だと思います。
ハインラインはハード過ぎるジュヴナイルで青少年たちに「自由と個人主義と責任」を問い、ハードな運命を背負わせ、右翼も左翼も論じ、愛情と結婚の「自由とそれに伴う責任」を論じて……文章の行間いたるところにハインラインの意思と意志がありました。
 
 
「わたしが生まれ変わる頃には21世紀の論理や道徳は逆転し、または古くて馬鹿げたものになっているかもしれない。それでも宇宙に進出して、貴方達に会えたら、きっと楽しいかもしれないじゃないか!」
 
 
Good bye! ビッグ3!
 
 
 
 
 
 
ーーーロバート・A・ハインライン著作、読破達成。
2018年9月4日。