好き好き大好き超愛してる
好き好き大好き超愛してる。
love love love you I love you
舞城王太郎
図書館で72人待ちの末、やっと借りることができました。
これで舞城王太郎は4冊目ですが、やっと分かってきました。
SFぽいというか話がガンガン跳ぶのとかは、持ち味なんですね。
もしくは、それだけストーリーが沸いてくる才能があるというか。
もう、「普通にストーリーを読ませてください」なんていうわがままは言いません。
この話は書評家の豊崎が言っているように、「セカチュー」への舞城王太郎なりの回答かもしれません。
内容は、難病を患ってしまった恋人と付き合っている小説家の話です。
「セカチュー」のにおいがしますよね。
でもあまりにも舞城は舞城なので、言われないと私は気付きませんでした。
病人である恋人に対し、主人公は、相手が聞きたがっていることを言おうとしてしまう自分について、
本当は周りの人や本人にどのように思われようと、自分の思っていることを言ったりしなきゃ、
と回想するあたりは、舞城のテーマの1つと感じました。
その部分がまず一番大事な部分ですからね。
その他「メタ化した友人」とか、記号化された、もしくは友人の役を演じている、という意味だとおもうのですが、そのあたりの書きぶりはやぱり現代作家のなかでも群を抜いています。
ま、いつものように本歌取り的なストーリーは変わりません。
何か言いたいことがあって、それを全然別のSF小説と仕立てて並列に進める作風に、やっと耐性がついてきました。
やっと舞城フィーバーも冷めてきて落ち着いて読むことができそうです。
次作に何がくるかわからない、でも期待してしまう作家として今は町田康と双璧となりました。
楽しみです。
幇という生き方-[中国マフィア]日本人首領の手記-
幇という生き方-[中国マフィア]日本人首領の手記-
宮崎学
この本を原作にした「アジア無頼~戦場の突破者~」がヤングチャンピオンで連載しているみたいですね。
この本は、養父の恩により中国の結社「青幇」に入ることになった主人公の数奇な運命を描いた実話です。
宮崎学は、この本で金や権力でなく「義」に生きる日本人もアジアにはいる、ということ伝えたかったそうです。
満州で武術を覚え、日本に戻り愚連隊となり、日本にいれなくなると、養父の伝手をたよりにベトナムへ出国し。そこで「青幇」への入会を許され、さらにベトナム戦争の最中、戦闘隊長としてマフィアの活動に参加。
ベトナム戦争が終わるとまたさらに予想もしなかった運命が待ち受けていた。
ざっとあらすじはこんな感じですが、無国籍の犯罪人として海外でアイデンティティを保つことはなかなか難しく、日本人的な「義」を持ち、さらに「青幇」の「義」を持つことで、自分を失わずいられたのかなと感じます。
マンガ的要素が豊富で漫画化も当然かなと思いますが、「義」の熱さに今の若者はついていけるのでしょうか。
また、宮崎学が驚いているのは、ベトナム戦争の話が現地の人間としてニュートラルにかかれており、北も南も戦争がひどくなると、どちらも現地住民への収奪が激しくなっているということでした。
宮崎学は安保闘争時の共産党シンパ(当時は多くの学生が反アメリカ)で、「北(共産党)にこそ正義あり」として闘争を繰り広げていた人ですが、戦争末期にはすでに現地住民にとっては北も南も収奪者となり、やはり戦争に正義はなく、両者のエゴのぶつかり合う現場でしかない、ということにあらためて衝撃を受けていました。
宮崎学の「義」モノとして「海賊」とこの本は、なかなか興味深い本でした。
ふと中国小説が読みたくなる
異色中国短編傑作大全
宮城谷昌光、田中芳樹 他
たまに、漢文調の小説が読みたくなります。
そんなときは、中島敦や酒見賢一が効くのですが、他にも幅を広げるため読んで見ました。
さすがは人気作家田中芳樹ですね。
「茶王一代記」という残唐の時代、馬殷という武将が勢力をつけていくに連れ、茶に惹かれ茶を扱いそのために領土や商いを広めていく様子が、なかなか面白く読めました。
「屈原鎮魂」真樹操は、中国史上初めての詩人と呼ばれている屈原の話。
単に左遷された思いを、新しい漢詩の形式まで模索して詩文を作り出すわけの分からない熱情が楽しめました。
「汗血馬を見た男」伴野朗は、中国人らしい、十年以上もかけて使命を果たす物語。
漢の武帝の時代、北方の匈奴を打ち破るため、西方の月氏と組む必要があり、その特使として張騫(ちょうけん)が派遣される。が、匈奴のすぐに捕まり上手く逃げ出せたのが10年後、そして月氏のところに向かうが説得できず漢に戻るのが13年後。しかしその後は匈奴や西方の地理や情勢に詳しいことを買われ、西方外交は活発化し、博望候張騫の名は、その後、漢の正使を「博望候」と呼ぶにまでいたったそうです。
漢に汗血馬をもたらしたのも張騫の伝聞があり、始まったようです。
中国モノの面白いのは、話が大きいので日本の小説では1冊になる内容をサクと短編ぐらいに濃度濃くまとめてしまうあたりが快感です。
でも、今回は残念ながら中島敦や酒見賢一に継ぐ人は見つかりませんでした。
候補として今後探っていきたい人は何人かいました。
今回の候補も含め、もうすこし根気良く探してみましょう。
パレオマニア(古代狂)の旅
池澤夏樹
パレオマニア
大英博物館からの13の旅、ということで、大英博物館で気にいった遺物をみつけて、発掘された地に赴き、さらにそこで遺跡を楽しむ、というなんともうらやましい企画です。
ギリシャ、エジプト、インド、イラン、カナダ、イギリス、カンボディア、ヴェトナム、イラク、トルコ、韓国、メキシコ、オーストラリア、イギリスと世界中をまわり、各地でできるだけ専門家に会い、詳しい話を聞いています。
表紙の写真は金とラピズラズリという貝でできている「藪の中の牡山羊」です。木に1枚だけ残った葉を食べている様子は、なんともかわいらしく、とても紀元前2600年にイラクにあったものとは思えません。
しかしこの本でも触れられているように、100年後に残したくなるような建物などを現代文明は作れたのだろうか、5000年もたって、文明は進歩したのだろうか、と本のなかでいっていて、考えると残したい物はなにもないかな、と思ってしまいます。うーん、ふと浮かんだのはモエレ沼公園 とかでしょうか。
見ていて気に入ったのは、カンボディアの不思議な笑みを浮かべた彫像と、オーストラリアのアボリジニのモノによらない精神性でしょうか。
知らなかったのですが、エアーズ・ロックはアボリジニの聖地なので、その入り口に控えめに「なるべく登らないでいただきたい」という看板があるのだそうです。パンフレットにも、写真を撮るものでも登るものでもない「聖地」を感じてほしい、と書いてあるそうです。
他にも「虹の蛇」という想像力を刺激される絵だとか、ブルース・チャトウィンの「ソングライン」というアボリジニの本だとか、興味深い話が多かったです。
難点は、ちょっと気障なかんじと(三人称だったりする)、遺跡への甘いつっこみ、現在の世界的博物館がもつ「過去の収奪物を返還するかどうか」という問題にひっかかったりと、いくつかみられますが、企画の魅力と13箇所に赴いた事実は、好きな場所だけでも広い読みする価値ありです。
私的には池澤夏樹の本では「ハワイイ紀行」が一番です。
池澤夏樹の公式HPです。
厄介だけど魅力的
山歩き山暮らし
西丸震哉
登山にも、家族で楽しむ自然探索みたいなものから、探検・冒険的なハードな登山まで、趣味趣向や時代によって千差万別です。
とくに時代が古いほど冒険的要素が多く、人によっては「ヒラリーがエベレストに登頂して、登山は終わった」という人もいます。そんなハードな時代もあったんですね。
西丸震哉はそんなハードな登山のにおいを残しつつ、湿原・未開地好きを徹底して推し進めている人です。
戦後すぐのまだ食料もあまりないころから山に入り、登山道ができていないところを好んで一人で歩いては、「この池を岸から見た人間は私以外にはいないだろう」とかいっています。
そんな人のいないところばかりに行っている話も面白いのですが、なんともえらいのが、農林水産省の職員として山歩きを続け、最後には食物と僻地の研究を専門にして、好みと職を結び付けてしまったことです。
その執念というか腕力も読んでいると納得です。
好きなことを好きなように続けるための努力は惜しまない、的な発想が文章の背後に見て取れます。
文章も言動にも非常に癖があり、いいたいことは山ほどある、という古い時代の活躍している人(1923年生まれ)の典型で、お付き合いしても厄介だけど魅力的という感じがします。
ちなみに名前は関東大震災の最中に生まれたからだそうです。
オーソドックスミステリーとなじみのモツ煮
「死の蔵書」
ジョン・ダニング
1996年に「このミステリーがすごい」で海外部門1位になった本です。
タフで古本収集家の主人公。
ミステリアスで大金持ちのヒロイン。
野心とポジティブ全開の移民少女。
博覧強記で癖のある古本書店店主。
読みながら、キャラの設定があまりにも典型的だったので、嫌気がさしてきたのも事実です。
でも最後まで読んでしまうのですね。
夜中1時に、起きだして思わず読んでしまいました。
なんていうのでしょうか。
なじみの店?
いつ行っても楽しめるけど、新しいものはあまりない、でもやっぱりおいしい、みたいな。
オーソドックスなミステリーというのは、そういう楽しみ方があるんですね。
久しぶりのミステリーでしたが、なんだか楽しめました。
パキラハウスと1DK
おしゃべり用心理ゲーム
日本作法マニュアル
1DK棲息者の自己分析
パキラハウス(佐藤雄一)
パキラハウスのセンスのよさにあこがれたものです。
「おしゃべり用心理ゲーム」では、あまり親しくない人とふと会話が止まったときに、もう一歩親しくなるための手段として心理ゲームをしてみるという本です。心理学というよりはむしろ会話の技術として紹介しているあたりが、さすがという感じです。心理ゲームにこだわらず、会話の種になるような話も色々載せられています。その後心理ゲームが流行りましたが、ここまで心理ゲームを使いこなして面白い本は、そうは見つかりませんでした。
「日本作法マニュアル」については、日本料理の心得、招待状の返事の書き方、旅館での過ごし方、など「まじめるやると笑ってしまうけど、知識として知っていて興味本位で実践してみる」というスタンスでまじめに書かれているので、役に立ちながら作法からの微妙な距離の取り方を勉強できて、何度も楽しみながら読み直しています。
この後しばらく「ちょっとしたものの言い方」「辞書にない「言葉と漢字」3000」など、比較的普通な本を何冊かだしていました。
そして「1DK棲息者の自己分析」です。
自分で自分を知るために書かれた奇妙なエッセイです。
出版社の編集者から独立、パートナーとの別れ、離婚、といったことを背景に書きながら、筆者は三浦海岸の奇妙な一軒家に引越し、その後千葉の浦安にアパートに引越し、自分のために小説を書き始めます。
なにか本来の自分とはずれた感覚を取り戻し、自分の欲望をはっきりとさせ、もう一度やり直すための隠遁生活。そこで見つけたのが、自分の断片を登場人物に仕立て、抑えていたり忘れてしまった感情や欲望を推し進める「小説」を書くことです。「箱庭治療」のように。
こういったことが、紆余曲折をえながら多くの思い出と自己分析で、丁寧に書かれています。
いちいちの分析や気付きがなかなか非凡で、飽きさせません。
しみじみ思ったのは、人によっては40すぎても自分との決着は、つけるときにはつけなくてはいけないんだ、ということです。
ひさしぶりに、まっすぐ頭に入ってこない変化球の本を楽しく読めました。
パタゴニアまで行って何をするか(2度目)
椎名誠
「でか足国探検記」
探検記好きの椎名誠が、冒険記的血沸き肉踊る要素と図鑑的知的好奇心満足要素を併せ持った探検記を目指した旅行記。
と、そのようなことがあとがきに書いてありました。
ところが冒険の方面は予定していたダーウィンを模した帆船の旅は、帆船が観光船であることが現地で判明し、急遽予定変更でパタゴニア各地を思いつきのように回る旅になり、
図鑑的な方面は、椎名誠の他の旅行の思い出話と底から急に掘り下げる思いつき図鑑のような内容になっています。
椎名誠らしい肩のはらない面白い読み物にしているのは、さすが当代随一の旅行作家の豪腕を感じますが、全体像を俯瞰すると、さすがにちらかりすぎの印象があり、何がしたいのか良く分かりません。
帆船でつまづいたのをよくここまでの物にしたというべきでしょうか。
しかしこれ、10年も前の本です。
いまどきの旅行作家はここまでやられたらなにをしたらいいんですかね。
それと椎名さんは今何をやっているのでしょうか。
問題作の問題
「Deep Love」 Yoshi
「世界の中心で、愛をさけぶ」 片山恭一
「蹴りたい背中」 綿矢りさ
「蛇にピアス」 金原ひとみ
やっと「セカチュー」を読んで、一応自分の中での最近の四大問題作を読み終えました。
最近の小説のベストセラーですね。
せっかくのなので、自分なりの結論を出してみたいと思います。
まず「蛇にピアス」。
簡単にまとめてしまうと、自己嫌悪が自身の体への破壊衝動に向かったお話。
ピアスとか刺青とかスプリットタンとか。
現代的なゆがんだ肉体表現が耳目をひきますが、「自己嫌悪」でくくり、「現代」を引くと何も残っていないのが残念。文章や展開の技術の技術向上が待たれますが、内容の深化が一番求められます。
次に「蹴りたい背中」
まず文章が上手い。
最初の数ページの文章だけで思春期の緊張感が伝わってきます。
が、「上手い」でくくってしますと、これもまた何も残らない作品。
異性への、恋愛以外のわけのわからない感情についての着目も「上手い」で終わってしまう。
自分なりの深いテーマを見つけられたとき楽しみな作家です。
この二つはご存知の通り芥川賞受賞作ですが、取るべくして取った、というところでしょうか。
ただ、読みどころはあるものの、この本自体の評価は「新人」という部分が一番大きいのではないでしょうか。
次は「セカチュー 」。
この本の問題は、内容どうこうではなく、なぜこんなに売れたかにつきます。
これはやはり、いままでこういった潜在需要に気付かなかった、ということに尽きるのではないでしょうか。
生涯小説読書数が30冊以上超えている人であれば、この本が日本で一番売れている小説だということに、なんらかの疑問をもつと思うのですが、いかがでしょう。
逆にいえば、あまり本を読まない人向けの本、というのがいかにないがしろにされてきたか、ということですね。
出版社の皆さん。がんばってください。
私はよく理解していない可能性があるので、ファンサイトにリンクしてみました。
で、最後に「Deep Love 」
この本の問題は、なんでこの本は世間で売ることができたか、ということですね。
内容や展開など、一度でも編集者の目に触れたなら、校正されて同じ形では決して世に出なかったでしょう。
しかし、世に出ましたし売れました。
本屋でもあきらかに今までとは違う客層に売れていた、という話も聞きます。
ここにも潜在需要があったんですね。
しかもこれはきっと携帯電話によって掘り起こされた需要でしょう。
この掘り起こされた需要が今後どうなるかはわかりませんが、やはり出版社のみなさん、今までとは違うがんばりが必要なようです。
こちらについても間違いがないように、オフィシャルサイトにリンクしてみました。
個人的にはこの4冊「ベストセラーになった本」ということで、心惹かれる何かがあるかと思ったのですが、私には見つかりませんでした。残念です。
なんだか全体的にえらそーになってしまいました。
気分を害された方には申し訳ございません。
ただ、1読者に合わなかっただけと、ご容赦いただけたら幸いです。
昭和を尊敬してみる
フィラリア
小林照幸
今のところ今年の最大の発見は小林照幸の発見です。
そのなかでも一番の収穫がこの「フィラリア」。
フィラリアは寄生虫病の1種です。
蚊の媒介により人体に入り込み、体の中で繁殖します。
その結果、栄養を虫に取られ、体の一部が肥大化していきます。
熱帯では「象皮病」とも呼ばれ、足や局部などが膨れ上がり皮膚が乾燥し象の皮膚のようにガザガザになります。
外見の変形が著しく、発病すると差別されることも少なくありません。
この病気はかつては熱帯の風土病と考えられてきました。
しかし日本でもこの病気が蔓延していることに戦前戦後にかけて日本の医師たちが気付きだします。
しかしまだ研究されていないフィラリアの治療に着手すると、多くの問題がでてきました。
負担の少ない治療法の模索。
伝染メカニズムの解明。
遺伝病と誤解ある住民への教育。
動かない行政への根回し。
効率的な蚊の撲滅作戦。
地域によっても状況が変わります。
沖縄における占領軍の不理解からの放置状態から、間違いを認識した後の軍を挙げての大撲滅作戦。
日本で最悪の罹患率をみせ、とくに低年齢者の罹病が多い奄美大島でのフィラリアの治療と予防。
初めてのテストケースとして愛媛で官民一体となった住人への教育と徹底した蚊の撲滅作戦。
この本は1つの病気を直すだけ簡単な話ではなく、それにまつわる多くの人々のドラマです。
本にある話の1つが忘れられません。
ある医師が山をハイキングしていると、畑がありそこに一人の患者が生活しています。
フィラリアに罹患し、生活にも支障がでるほど体にも影響がでているが、
「遺伝病なので村の住人にしれると家族に迷惑がかかる」
というので、一人ですんでいるとのこと。
この体験からその医師はフィラリア治療の研究を志すようになります。
このような恐ろしい病気が昭和の時代にまだあり、この病気を日本人が克服した、という先人の偉業に感謝するとともに、尊敬の念を禁じえません。
こういう本こそ図書館に1冊は必ずいれてほしいものです。
このようすだと昭和も尊敬するべき点は多くありそうです。
小林照幸さん、今後も昭和史の発掘、よろしくお願いします。









