形もなく価値もなかったりするけど大事なもの
バナタイム
よしもとばなな
よしもとばななの結婚直後のエッセイです。
結婚にまつわる色々個人的なややこしい話が、いつものようにほぼ全肯定的に書かれていて、ばなな節が楽しめます。
エッセイは、あまりにも肯定的すぎてお腹いっぱいになってしまうことも多いのですが、今回はいくつか心に留まったものがありました。
一つは片思いについて。結局片思いは、片方の過剰な思い入れが原因で、男女の仲というのは、もっと自然なもの、と言い切っていました。
そう言い切られるとそうかな、と思ってします。
あと、何でもないことですが、よしもとばななの夫のやっている整体の治療院に記者が患者と偽って結婚について取材や撮影をしたことについて、よしもとばななは非常に気分を害していたのですが、まわりの友人は「お金払っているし、法的には・・・」みたいなことをいうしよしもとばななもそうとは思っていたのですが、奈良美智が「それって、犯罪じゃないのかな!」と強くいい、よしもとばななは、その一言をとても欲していたことに気が付きます。
うーん、そういう、言葉や形にしづらくって、価値を与えにくい何かって、大事に思うのも口に出したり実行したりするのもすごく難しくて、油断していたらなくなってしまいそうな何かを、自分で確固としたものとして大事にもっていることは重要なんだな、と思いました。
この場合は、オトナな理屈を口にせずに当たり前に大事なことを口にだした、という話ですが、それは色々な場面でもあることだと思います。
うまく言葉にできませんが、この話を読んで以来、何かがずっと心にひっかかっているような気がしています。
10年以上前のコラムを読む
CWニコル
森の時間
これは、「The Daily Yomiuri」に93年3月から94年の4月まで連載されたコラムです。
CWニコルは、北極観測隊やカナダやエチオピアのレンジャー、捕鯨船に同乗など話題に事欠かない人ですが、日本で永住し始めてからもなかなか楽しそうです。
縁あって老木・閑貞桜の治療に関わった話や、今までみたことがなく最近多く見られるようになってきた熊の虫歯の話、野尻湖の違反観光船、日本のレンジャー専門学校の話など政治の話から自然の話まで幅広く楽しめます。
なかでも自分で森を作ってしまう(アファンの森)のは、いいなと思います。
自分の森。
しかし10年も前からダムの問題など提言をしているのですが、今も変わらず開発が進んでいることを考えると、本当に暗たんとした、恥ずかしい気持ちになります。
小説は読まないのですが、コラムやエッセイは面白いですね。
サービス精神旺盛で話題満載です。
こんな雑誌にこんなコラムがあるとは知りませんでした。
今は、何をしているのでしょうか。
デーモニッシュ、は日常的に必要か
意味がなければスイングはない
村上春樹
あとがき部分で「一度音楽についてじっくりと書いてみたい」の一言に惹かれて購入。
村上春樹の薦める小説や音楽には、いまいちぴんとこないことが多い(レイモンドカーバーは別ですが)のですが、和田誠の絵にあわせてジャズミュージシャンに解説をつけた「Portrait in Jazz」が、実に小説家らしく過剰で主観的で、それでいて甘美で滋養たっぷりな解説を楽しく読めたので、今回も期待して読み始めました。
内容は「シダーウオルトン」「シューベルト」「スタンゲッツ」「フランシスプラーク」など、ジャズとクラシックを中心に書いています。
また、それ以外にも「ブルーススプリングスティーン」「スガシカオ」などロック、Jポップについてもいささか見境なく、書いています。
シダーウオルトンのすっぽりとおさまる過剰すぎないピアノについて「ジョンコルトレーンがなくなって以来、マイルズデイヴィスのいくつかのアルバムを別にして、いったいどれだけの真に「デーモニッシュな」ジャズが僕らの前に登場しただろう?」、と「デーモニッシュではない」とのシダーウオルトンについての評に反論していましたが、過剰に「デーモニッシュな」ものに反応しているようにも思え、なかなか興味深かったです。
他にも、
シューベルトの、制御できない精神がほとばしる、ピアノソナタ。
破綻していると生活と全く関係なくすばらし音楽を奏でる、スタンゲッツ。
と、なかなか面白い読み物です。
いささか理に走り過ぎた感はありますが、音楽から受け取った滋養を心の底から語る様子は、読みごたえがあります。
しかし、聴いたことあるのがスガシカオについてのみなのですが、やっぱり解説とは、ギャップがあるような気がします。
うーん、どうしたものか。
村上春樹の解説は面白くても、それ自体は楽しめない、というのは本質的にどうなのでしょうかね。
最後に。
村上春樹自身に興味ある方はあとがき必見です。
今までになく率直に過去のことが書いてあります。
現役の作家とつきあうということ
東京奇譚集
村上春樹
「僕の身におこった不思議なできごと」というふれこみの短編小説?です。
たしかに小説にしてしまうと興醒めで、事実とするには置きどころのない物語が数遍と、村上春樹らしい事実を装った小説が数遍の短編集です。
この本を読んで、何かが変わる、というものではありません。
ただ、都会の不思議な光景をみたような、上品な短編ドキュメンタリーフィルムのような味わいのある作品です。
「回転木馬のデッドヒート」に似た感じです。
「偶然の恋人」の主人公のクールさ(ある時主人公はピアニストとしての才能よりも調律師の才能があることに気が付く)や、「ハナレイベイ」のサチといけ好かないアメリカ人との会話など、村上春樹の技術水準の高さを感じました。
最後の「品川猿」も「神々の子はみな踊る」「アフターダーク」的な冷たい悪意がよかったです。
「海辺のカフカ」「アフターダーク」がうーんという感じ(あくまで村上春樹レベルの他の作品と比べての話ですが)だったので、より実験的な位置付けの短編集の購入はどうしようか迷っていたのですが、「もう新刊をみることができるのもそんなにないことかも」と思って、ほとんど期待もせずに買ったのですが、期待しなかったせいか、なかなか面白く読めました。さすが、レベルが高い。
期待せずに読んでみて下さい。
1冊売れるとこういう本が出るんですね
人間通の勘どころ
谷沢永一
谷沢永一の著作を全て読んでいるという鷲田氏からの質問に答える形で、谷沢永一の生涯を自ら振り返る作品です。
青年期の偶然、評論を書くようになったいきさつ、開高健との出会いの話。関西大学に入って文学評論で色々な人の助けで名を上げる話。関西大学での学長戦などの政治の話。この政治の話が一番ウェイトがあり、「人間通」を書くだけの人生修行をした、という話です。
どこでも同じですが、実績だけでなく政治力がないとなかなか出世はしないようで、大学人事にくちを挟むなら、勉強のことだけでなく人間のこともよく分かってないといけないという話です。
「関西の人間は他人を誉めたり後押ししたり、ということはせぇへん」
などの観察はなかなか頷けるものがありました。
「人間通」などという本が書ける謎が解けました。
しかし「人間通」100万とはいいませんが、結構売れたみたいですね。
うーん、修学旅行より歩行祭のほうがいいかも
夜のピクニック
恩田陸
ついにあの本屋大賞受賞作「夜のピクニック」を読みました。
高校の行事で丸一日歩き続ける行事「歩行祭」。それぞれのそれぞれへの思いを持ちながら望む男女4人を中心に繰り広げられるさわやかな青春物語です。
本筋はシンプルな「告白」の話なのですが、さすが恩田陸とでもいうのでしょうか。様々な伏線を用意し、最後まで盛り上げていく手腕は、当代指折りのストーリーテラーだけはあります。
自分の思い込みにとらわれる幼い一途さと、人生のイマココ、というタイミングを惜しまずに見過ごしていく感覚は、時間を贅沢に使う高校生ならではで、なんだか懐かしい感じがします。
また、丸一日歩きつづけて夜になったときの昂揚は、修学旅行で、蒲団をひいて電気消して蒲団に入って、しん、となって何を話そうかと思う瞬間の感じを思い出しました。
途中で気が付いて軽い青春エンターテイメントとして読んだので、楽しむことができました。
この技と軽さとアイディアが、きっと恩田陸さんの魅力なんでしょう。
でも、その分類ではスタンド・バイ・ミーのほうが面白かったかな。
重さもあったし。
読んだ年齢が若かったからスタンド・バイ・ミーを美化しているのかもしれませんが。なんだか自分が年寄りに思えていきます。
今更なんですが
スローカーブをもう一球
山際淳司
さて、熱血だけがスポーツではない、といったノンフィクションが面白かったですが、オーソドックスにもう少し読後感がさわやかなものも読みたかったです。
秀作があればさらに読んでみたいですね。
スポーツノンフィクション作家山際淳司の短編8遍。
第8回日本ノンフィクション賞受賞作の「スローカーブをもう一球」の、進学校の予想外の甲子園出場とは裏腹に、エースピッチャーの飄々とした現代っ子感も良かったですが、プロといえども試合中は人間臭い強みも弱味もある心理の動きを描いたデビュー作「江夏の21球」が面白かったです。
江夏の僻みとか動揺とか。
ヤクザみたいな人でしたが、繊細なんですね。
そういえば400勝投手の金田さんも麻雀賭博の東尾さんも最近なくなった名将仰木監督もヤクザにみえることがありましたね。
なごやん、って本当においしいのだろうか
逃亡くそたわけ
躁病の女患者と鬱病の男患者が福岡の病院を脱走し、逃避行を続ける話です。
躁病の様子が丁寧に書かれていたり(ポジティブなまま視野狭窄に陥っていく様子がなかなか)、地方愛についても具体的に、博多人のグルメ観(都会は素材がまずいから料理しておいしくしている。素材がよければ手をかけなくてもおいしい)とか名古屋(とはかぎらないけど)の東京信仰が書かれていたりで、なかなか面白いのですが、何を書きたかったのでしょうか。
その部分が見つらず、残念。
男女の奇妙な友情が書けるのが貴重、との世論ですが、そこは確かにうまいのですけれども。
地方愛、かな。
芥川賞も取ったことですので、長編を心待ちにしたいと思います。
そうか、炊飯器があった
炊飯器で作るからおいしい
大石寿子
古本屋でみつけた炊飯器クッキング本です。
ようは炊飯器で蒸し焼き料理、ということなのですが、準備して内釜にいれこめば後はスイッチを入れるだけで良し、というところがお手軽で、ついついいくつか作ってしまいました。
量が多いときも簡単にできるので重宝します。
これもおせち関連なのですが
焼豚500gぐらい
大根餅(直径は20cmぐらい)
鯛のかぶと蒸し
ミートローフ
と、なかなかお手軽の割りにはおいしくできました。
チャーシューとかぶと蒸しはまたやってみたいですね。
大根餅はまだ上新粉の使い方がよく分からず(よくこねなかったからでしょうか)すこし粉っぽかったです。









