バレエダンサーの熊川哲也氏は、子供時代、バレエ教室でやたらと「わからない」を連発していたという。
新しいプロセスを教えようとすると「そんなことできねーよ」という。「じゃあやってみて」と言われ、先生がやってみせると、また首をかしげて「わかんない」が始まる。
先生を見た動きを再現すると、具体的な動きがよくわからなくなる。総論ではわかっても、各論ではわからない。
それでも、少年熊川哲也は、各論が体のパーツに理解できるまで「わからない」を続ける。
そうして、「どうやらこういうものらしい」と理解すると、家に帰って、レッスンをし、翌日には、ちゃんとできるようになっていた。
熊川哲也氏のすごさは、次の日にはできるようになっていたことではなく、自分の理解の届かないところを確実に発見して、それに対して「わからない」を明確に確認していたことである。
と作家の橋本治氏はいう。
しかし、「何がわからないかが、わからない」ことは少なくない。これは難しいことかもしれない。
(「わからない」という方法、橋本治、集英社新書)
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