スローウォーキング「人生最後の1杯になっても」 | メトロガイド「いい店見つけた」椎名勲の凡夫荘便り

午後、ワイフが買物に出かけた。

その間、bonpusouは、西六奇庵から徒歩60秒の「カフェ・ド・ミュー」へ、コーヒーを飲みに行った。

このカフェは、美味いコーヒーを淹れて、美しいコーヒーカップで飲ませてくれる。


(今日もけっこう混んでいるナア!) カウンター席に座る。

右に、原書を読む若い女性一人客。

左に、母子連れが、ケーキ(ミューさんは、ご近所のパティスリー「トレカルム」からケーキを仕入れている)を2つ注文し、母はコーヒーとケーキ、子はオレンジ・ジュースとケーキ、を楽しんでいた。


bonpusouの席にコーヒーが運ばれた。

皿をひっくり返して確かめると、フランスのリモージュ製のカップだった。


戦後の物資乏しい時代に生まれ、わが国を欧米のような豊かな国にしたいと思い、後悔しない人生を送ろうと決心し、あまり良くない頭で懸命に勉強し、それこそ寝食を忘れて激しく働き、中近東へも赴任して汗水垂らして働いてきた。

今は引退して、ようやく自分一人の時間ができるようになって、カフェで1杯のコーヒーを楽しんでいる。


bonpusouは、店内の観葉植物を静かに見ていた。

(このコーヒーが人生最後の1杯になっても後悔することはない)、と思えるほどに働き続け、今、こうして、ミューさんでコーヒーを楽しんでいる。

・・・とはいえ、思い返せば、後悔することは、山ほどある!


新しい女性ニ人客が入ってきて、空席を探すように、店内を見渡した。

bonpusouは、勘定をしに席を起った。


・・・人生の晩年に、美味しい1杯のコーヒー楽しむひと時。「幸せ」と云うべきであろうか。

私どもを生かして下さるなにものかに、心から感謝します。