『レイル』129号~ドコービルと川越鉄道の客車 | 書斎の汽車・電車

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 発売されたばかりの『レイル』129号をご紹介します。

 

 本号、私はまず特集じゃないほうの記事、「西武鉄道4号機関車に牽引された客車」(藤田吾郎氏)を読んでしまいました。

 ちょうど1年前の『レイル』で、西武鉄道4号機関車の修復を特集したのは、当ブログでもお伝えしましたが、今回はその「補遺」ともいえる記事が掲載されました。

 

 西武鉄道4号機関車が牽いた客車というと、川越鉄道由来の「マッチ箱」と通称される4輪客車です。明治生まれの何分古い車輛のことですから、これまで不明点も多かったのですが、近年国立公文書館所蔵の許認可書類のおかげで、その全体像がある程度わかってきました。実は私も川越鉄道由来の客車については調べており、どこかで発表しようかと思っていましたが、このたび先を越されてしまいました。

 しかしまあ、今回の記事は解説、車歴表が充実しているのは勿論ですが、素晴らしい写真の数々と図面もふんだんに収録されていますので、西武ファンにとっては保存版といえましょう。

 

 今回の『レイル』、メイン記事はあくまで「蘇った糸魚川のドコービル」の方です。

 糸魚川の「東洋活性白土」専用線1号機(ドコービル製ではありませんが、「ドコービル系」に分類される機関車)が、羅須地人鉄道協会の皆様の手により動態復元され、成田ゆめ牧場まきば線でお披露目されたのを機に、このユニークな機関車を特集したものです。

 

 まず巻頭グラフで、昨年12月16日の「お披露目」の模様が紹介されています。本号の編集後記で前里孝氏も述べられていますが、12月の出来事を翌月発売号に掲載するあたり、普通の雑誌であればともかく、普段は速報性とは無縁の『レイル』では極めて異例のことといえましょう。

 

 続いて、宮田寛之氏による「”ドコービル系機関車”と東洋活性白土1号機」は、日本におけるドコービル系機関車の全貌と、東洋活性白土1号機を巡る思い出にも触れた記事です。本邦のこの種の機関車のすべてを概観できるという点で、実に得難い記事なのですが、後半部分の東洋活性白土1号機と鉄道趣味人の関わりに触れた部分も、今となっては実に貴重です。昭和45(1970)年5月25日、鉄道趣味人13人が集まっての撮影会があり、臼井茂信氏と西尾克三郎氏が一緒に撮影をしたのはこれが初めてだったとか、白衣姿で撮影する臼井氏の姿を広田尚敬氏が記録されていたり、西尾氏は組立暗箱写真機で撮影されたなどのエピソードは、タイムマシンがあればその場に立ち会いたいと思わせるものでした。なお、西尾氏に敬意を表してのことでしょうが、今回の動態復元に際して、前里孝氏も組立暗箱写真機で本機の形式写真を撮影され、本号に掲載されています。

 

 羅須地人鉄道協会の髙橋卓郎氏は「1号機<活白ドコー>動態復元の記録1999~2023」を執筆されています。鉄道趣味人たちが余暇を利用して古い蒸気機関車を再び動かそうというのですから、その大変さは並大抵ではありません。20年以上の長期に及んだのは致し方ないところでしょう。関係者の皆様の努力には頭が下がります。

 

 『レイル』129号、どの記事を読んでも「鉄道趣味の楽しさ」が溢れています。「ドコービル」「マッチ箱」なんて関心ないよという方も、是非読んでみてください。この趣味の奥深さ、楽しさを再認識できるはずです。