◆「それぞれのやり方で愛情を伝えることができれば」
田島さん:忙しい子育ての中、毎日毎日お弁当を作るのは、本当に大変なこと。私などは一週間分のお弁当の絵を描いただけでくらくらしました。それを何年も何年も毎日作り続けるなんて!子育てしているお母さんはみんな、それだけですごい。本当に尊敬しています。
清田さん(編集担当):子どもたちの好きなものを入れたり、彩りを考えたり。少しでも栄養のあるものを、楽しく食べてほしいと工夫したり。お弁当の中身というより、そのお弁当に込められた、子どもたちへの思いと愛情ががとても素敵だなと思うんです。だからお弁当をつくるすべてのママへ「ありがとう」の思いを込めて、絵本を企画しました。
東條:みんなそれぞれに事情も違うし、好きな事、得意なことも異なる。きっとみなさん、その人なりのやり方で子どもを愛しているんですよね。
田島さん:お弁当を通して、お母さんの思いや愛情がお子さんに伝えられるように、絵本を通して、私と清田さんがこめた思いが読者のお母さんたち、お子さんたちに伝わったらとってもうれしいです。
(写真:田島さん手作りのお人形。丸い鼻が特徴のうさぎは『NEIGE』の主人公。
◆ひとみしりな子ども時代
東條:田島さんご自身は、幼い頃どんなお子さんでしたか?
田島さん:完全な内弁慶でした(笑)。今から思うとうそみたいに 、外ではなんにもしゃべらない子どもだったんです。初めてお会いする人とでもきちんとお話できるようになったのはアメリカから帰ってきてからなので...わりといい大人になってからです。アメリカでの体験談をいろいろな方に繰り返しお話しするうちに、話し方のコツがつかめてきたからだと思います。
子どものころから絵を描くのは大好きで、いつもなにかを描いていました。
◆「子どもの本・・・大人も読んでいいんだ!」
東條:本との出会いはどんなものでしたか?
田島さん:小学校に入って童話を夢中で読むようになりました。
『くまのこウーフ』(神沢利子作)や『車のいろは空のいろ』(あまんきみこ作)・・・中でも『はなはなみんみ物語』(わたりむつこ作)、『だれも知らない小さな国』(佐藤さとる作)が大好きで、この2シリーズは今も手元にあるんです。何度も繰り返し読んだので、もうぼろぼろです。
小学校の担任がよく本を読んでくださる先生で、この2シリーズもその先生に教えていただいて読むようになりました。
当時は「大人になったら子どもの本はいつか手放さなくちゃいけなくなっちゃうのかなあ。国語の先生はいいなあ、大人になっても童話が読めて。」なんて思っていたので、小泉今日子さんの出現にとても感謝しました。ミヒャエル・エンデの『モモ』を当時トップアイドルの小泉さんが愛読、大人が童話を読むことがちょっとおしゃれ、というように世間の流れが変わったからです。
◆絵本作家になりたい
田島さん: あとさき塾に入ったきっかけはあとさき塾出身の酒井駒子さんの作品が大好きになったからです。あとさき塾に入塾した当初は絵本についてよく知らなかったので、まわりの人たちが話している会話の内容が全くわかりませんでした。「あべひろしさん?たぶん俳優の阿部寛さんのことではないんだろうけど…???」なんてことも(笑)
(写真:田島さんの手作りお菓子。原画展で絵本購入の方に先着限定で配られた“幸せのお菓子”)
◆「子どものための絵本を作っていきたい」
東條:今後、どんな作品を作りたいですか?
田島さん:美大時代、みんな若かったし時代の流れもあって、友人達はみんなトガッた表現を目指していました。その中で私はまわりに流されつつも、本当はただただきれいでかわいくて、見る人が幸せを感じるものをつくりたいと密かにずっと思っていました。だから清田さん(編集担当)と絵本作りをご一緒させていただけたのは本当にしあわせでした。好きなものを自由に描くことができたからです。
これからもいろいろな絵本をつくっていきたいです。中でも今度はストーリー絵本に挑戦してみたいです。たくさんの子どもたちによろこんでもらえたらうれしいです。
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会場に置かれていた(フランスで出版されたばかりの)『NEIGE』(Lirabelle)を手に取った私は、自然の移ろいを表現する緻密な美しさと、詩的な世界観に息をのみました。
デザイン的な(美しい)表現へのこだわりから、さらに一歩進んで。
「子どものための絵本作家として歩んでいきたい」と語ってくれた田島かおりさん。
これからのお仕事を心より楽しみにしております!
絵本コーディネーター 東條知美