【交差するいくつもの〈人生〉...こころに花咲く物語】

☆『Life(ライフ)』くすのきしげのり作 松本春野絵 2015.3 瑞雲舎 


町はずれにある小さなお店〈Life(ライフ)〉。

お店といっても、売る物はありません。
「ひつようなもの」があればそれを持ち帰り、「使わなくなったもの」や「誰かに持っていてほしいもの」を置いておくことのできるお店です。

ある日、連れ合いを亡くしたひとりのおばあさんがやってきて、小さな紙袋に小分けした花の種を置いていきます。
おじいさんが育てた春に咲く花の種。これを撒く元気が、おばあさんにはなかったのです。

次にやってきたひとりの少年。
少年は花の種を一袋持ち帰り、かわりに 幼い頃に繰り返し読んだ絵本を置いていきます。
少年の次には赤ちゃん連れの夫婦が、若いカップルが、少女が・・・次々と〈Life〉へとやってきます。

思いをこめたメッセージを添えて、いろいろなものをそっと置いていく。
そして、かわりにおばあさんの花の種を持ち帰るのでした。

やがて春の日に、おばあさんが再び店を訪れると......


「顔をあげれば、幸せは見つかるものです」ー

ひとりぼっちの気分の時にも、きっとわたしたちは、誰かと繋がっている。

いくつもの〈Life(人生)〉、それぞれの物語に思いを馳せながら・・・穏やかな春の日差しに包まれる一冊です。



(絵本コーディネーター 東條知美)