アフガニスタンでやべさんは、ジャララバードの民家を改造してSVAが2001年に開設した子ども図書館へも訪問しました。ジャララバードでは多くの子どもたちが働いています。
「戦争しか知らない子どもたちが、家の手伝いや学校の合間にこの図書館へやってきて、この時間だけは安心して子どもの顔になる。」と現地の日本人スタッフの方が話しておられたそうです。
子ども図書館では紙芝居やパネルシアターを実演。またワークショップで紙のヘリコプター作りをしたところ、やべさんに抱きついてくる子もいるほどの大盛り上がりだったそうです。
そんな最中に40キロ離れた場所で自爆テロがあり、数人が死亡する銃撃戦がありました。日本大使館からの緊急連絡があり、途中で宿舎への避難を余儀なくされました。
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ジャララバード市内の小学校を訪問した際には、午前中は先生方を対象に「紙芝居づくり」のワークショップを、午後は高学年(4.5.6年生)の子どもたちを対象にワークショップを行いました。
教室でやべさんは、「アフガンの小学生の考えていることを知りたい」と思い、【私の宝物】をテーマに描いてもらうことにしました。
一番多かったのは、鉛筆、ボールペン、ノートなどの文房具。次にコップなどの日用品。黒板や自転車の絵もありました。「モノがあふれている日本の子どもたちとの違いをすごく感じた」といいます。
アフガン国内では、2003年にSVAが〈アフガンのおはなし〉を絵本や紙芝居にして出版する活動を始めました。
(右上:2005年にSVAがアフガン国内で初めて出版した紙芝居『目の見えない男と歩けない男』)
やべさんは、「絵本などが少ないアフガンの現状では、多くの子どもたちが一緒に楽しめる紙芝居がもっと活用されたら」と思い、また「街頭紙芝居がやれたら子どもたちは大喜びするだろうなあ」と夢想したそうです。(街頭紙芝居はやべさんの原点。幼いころの感動と興奮を今も覚えているとのことです。)
(昭和20年~30年代 街頭紙芝居のある風景/日本)
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やべさんがアフガンを訪問してから5年後の2012年3月、SVA主催の「児童図書出版研修」の受講のため、こんどはアフガンの児童書関係者(SVA現地職員、教育や児童心理学、文学の専門家や作家などからなる「出版委員会」メンバーや画家など14名)の方々が東京を訪れました。
このときもやべさんは、一週間にわたり講師を務めました。アフガンの方々との5年ぶりの再会です。ここで制作された計4作の絵本と紙芝居はその後アフガニスタンで製本され、現地の小学校や図書館で活用されています。
(↓この研修でダミーが制作された絵本『象の王国』。今年アフガン国内で出版され好評です。)
2012年3月21日付の埼玉新聞にこの研修の様子が報じられています。以下、記事から抜粋しご紹介します。
「30年にわたり紛争が続くアフガニスタンでは、子どもたちの約半数は学校に通っておらず、15歳以上の4人に1人しか文字を読むことができない。内戦中にはあらゆる書物が燃やされ、タリバン時代には出版活動が禁止された。(省略)ナンガハル大学で児童心理学を教えているアブドゥル・ラシッドマリックザイ教授は「アフガンの子どもたちは今でも戦争や自爆テロのまねをして遊んでいる。楽しい絵本を読むことによって、子どもたちに優しい気持ちが生まれてくるだろう」と期待を寄せた。」
(SVAホームページhttp://sva.or.jp/activity/oversea/afghanistan/ )
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(④へ続く。)