ストーリー8【簿記部先生の授業その3】

(登場人物)
ヤマダ君AC高校簿記部のエース
サトウさんAC高校簿記部の
      マドンナ
タナカ君:簿記に興味を持ちなん
     となく簿記部に入部
スズキ君:簿記部の部長

先生:簿記部の顧問


前回までのストーリー。

簿記部に入部したタナカ君は

簿記部顧問の先生による入門

の授業を受けていた。


頑張れタナカ!!


「えー、では授業の後半に入り

ます。


まず、簿記とはいったい何か?

ということから説明します。」


先生がテキストを見ながら

説明入った。



1、簿記っていったい何

簿記とは、「帳簿記入」という言葉

からの造語ともいわれ会社やお店の

取引を帳簿に記録し、これを会社や

お店の利害関係者に報告するための

技術をいいます。

2、簿記の目的

簿記では、会社やお店の日常的な

取引を帳簿に記録することにより

最終的には、次のような報告書を

作成することが目的となります。

『貸借対照表』

貸借対照表とは会社やお店にどの

くらいの土地や建物などの資産が

あるのかまた、どのくらいの借金

を負っているのかなどを会社や

お店を取り巻く人々(利害関係者)

に対して報告する報告書のことを

いいます。

 

資産や借金などのバランスの状態

を「財政状態」といい、この

「財政状態」を明らかにするもの

が貸借対照表なのです。

『損益計算書』

 損益計算書とは、会社やお店がどの

 くらい儲けたのか、または損したの

 かということを利害関係者に報告す

 る報告書のことをいいます。

 会社やお店の儲けの状況を

 「経営成績」といいますが、この

 「経営成績」を明らかに するもの

 が損益計算書なのです。

3、会計期間とは

お店は、店主のやる気さえあれば、

つぶれるまで半永久的に営業を行な

うものと考えることができます。


しかし、営業を行なっている期間の

どこかで、貸借対照表と損益計算書

を作成しなければなりませんから


 営業を行なっている期間を区切って、

その期間の儲けなどを計算する必要

があります。


 この区切った期間のことを「会計期間

 といい、通常は1年間で区切られます

(個人商店は税金の関係から11日~1231日)。

 そして、1年間の始めの部分を「期首

 といい、終わりのことを「期末」といい

 ます。


 また、「期首」と「期末」の間のことを

 「期中」といいます。


 さらに、計算がおこなわれる年度のこと

 を「当期」といい、次の年のことを「次期」

 といいます。また、去年のことを前期とい

 います。


 これらの用語は、試験問題の文章としても

 使われるので、それぞれがどの時点のことを

 言っているのかしっかりと覚えるようにしま

 しょうね。

 先生の授業はまだ続くのだった。


ストーリ7【簿記部先生の授業その2】

(登場人物)
ヤマダ君:AC高校簿記部のエース
サトウさん:AC高校簿記部の
      マドンナ
タナカ君:簿記に興味を持ちなん
     となく簿記部に入部

スズキ先輩:簿記部の部長
先生:簿記部の顧問


<これまでのストーリー>
友人に誘われて簿記部に入部した
タナカ君。

簿記部の部室にいたスズキ先輩
から簿記の初歩について教わる。

そして、簿記部顧問の先生に
よる簿記入門の授業が始まった。


簿記部顧問の先生による、新入
部員向けの授業は中盤に差し掛
かっている。

新入部員達は、みんなやる気に
満ちた目で先生の授業を聞いて
いる。



2、2つの情報を得るという観点
 からお店の活動をみる

 
お店を開店し、儲けを出すまで
の活動を追っていくと通常は
以下のような流れになると思い
ます。

①資金の調達→②商品や店舗などの購入
→③お客さんに商品を販売→④給料や
水道光熱費の支払い


このような、活動を経て手許に
残ったお金が通常、お店の儲け
となるわけです。

そこで、これらの一連の活動を
先ほどの2つの情報を得るという
観点から分類してみます。

【お店の財産や借金などの情報】
まず、お店の財産や借金などの情
報という観点から分類してみます。

お店として活動するためには、お金
が何よりも必要です。

よって、①資金の調達という活動を
みてみると

(A)投資家に出資してもらうか自分
  で出資する 


(B)銀行などからお金を借りる
  
というように、大きく2つに分けら
れると思います。

そこで、その2つの行為に対して、
次のような名前をつけてみます。

(A)出資という行為→『純資産』 

(B)借り入れという行為→『負債』

 また、調達した資金は店舗や商品
を購入することにより運用します。

よってその運用先についても名前を
つけてみます。

店舗や商品などの購入したもの
→『資産』


すると、これら3つの行為を記録する
ことで、お店の財産や借金の情報を
知ることができます。

【お店が儲かっているかどうかという情報】
今度は、集めてきたお金を使って
お店の従業員に給料を払ったり、
購入した商品をお客さんに販売し、
代金を受け取ったりします。

ここでも、先ほどと同じように、
これらの活動に名前を付けます。
 
商品の販売による代金の受取り
→「収益」 
 

従業員への給料の支払い
→「費用」


すると、これら2つの行為を記録
することで、お店がいくら儲かっ
たのかという情報を知ることが
できます。

以上のことより、お店を上手く営
業するためには、「お店が儲かって
いるかどうかという情報」のほかに

「お店の財産や借金の情報」も入手
する必要がありましたが、これら
2つの情報を入手するためには、
取引を次の5つに分類し、それらを
記録することで得ることができます。

【お店が儲かっているかどうかという情報】
 →「収益」「費用」

【お店の財産や借金の情報】
→「資産」「負債」「純資産」

お店の取引を、このような
①資産 ②負債 ③純資産 
④収益 ⑤費用に分類して、
帳簿に記録することで

「お店の財産や借金の状況」

「お店が儲かっているかどうか」という

ことを知る技術のことを簿記と
いいます。

このように、簿記によって取引
を帳簿に記入すると、1度の記録
で2つの情報が入手
できるため
に、お店を上手に経営するのに欠かせな
い、非常に便利な記録方法といえるの
です。

「どうでしょうか?
簿記の大切さはなんとなくわかってい
ただけましたでしょうか?」



先生が新入部員の生徒の反応をうか
がう。

「は~い。」

生徒のみんなも笑顔で返事する。

ただ、タナカ君は表情がすぐれない。

「う~ん。なんか分かったような
わからないような・・・・。」


そんなことを内心感じていたから
だ。

それでも、先生の授業はいよいよ
終盤に向かう。

「とにかく、やるしかない!」

そう、気合いを入れるタナカ君
だった。

ストーリ6【簿記部先生の授業その1】

(登場人物)
ヤマダ君:AC高校簿記部のエース
サトウさん:AC高校簿記部の
      マドンナ
タナカ君:簿記に興味を持ちなん
     となく簿記部に入部
スズキ先輩:簿記部の部長
先生:簿記部の顧問


<これまでのストーリー>
友人に誘われて簿記部に入部した
タナカ君。

簿記部の部室にいたスズキ先輩
から簿記の初歩について教わる。

先輩によれば、簿記では2つの
情報を入手するためのものだ
そうだ。

(過去の記事)
【タマゴを100円で買ったら】


そうこうしているうちに、
いよいよ、簿記部顧問の先生
による新入部員向けの簿記講義
が始まった。

さあ、読者のあなたも、
この講義を聞いてみよう!

キーン、コーン、カーン
コーン

学校の始業ベルが鳴る。

「え~それでは、新入生向け
アンド、普通科の生徒向けに
簿記入門の講義を行いたいと
思います。」


タナカ君は、先生の「普通科
の生徒向け」という言葉を聞いて
「ゲッ俺のことか」と思った。

~簿記部顧問の先生の授業~

1、お店の経営に必要な情報って何だろう

ここで例えば、お店を開くとします。
このとき、お店を上手く経営するため
にはどのような情報がいるでしょう
か?

『儲かっているかどうかという情報』
お店の経営に必要な情報としては、
やはり、「儲かっているかどうか」
ということが挙げられるのではない
でしょうか。

このような情報は、お店の収入から
支出を差引くことで通常計算するこ
とができます。
 
  計算式:儲け=収入-支出

ところで、このような儲けを出す
ためには、まず売るための商品を
仕入れなければなりません。

そして、商品を仕入れるにはお金
が必要ですよね?

では、このお金はどこから集めて
くるのでしょうか?
 
【お金を集めるにはいくつかの
方法があります。】

①自分でお店に出資するか、誰か
 に出資してもらう方法


②銀行などから借り入れて集める
 方法


 以上のような方法でお金を集めた
として、今度は集めたお金を運用し
なくてはなりません。

例えば、お店の店舗を購入したり、
販売する商品を購入したり、従業員
を雇い入れたりすることにお金を使
ったりします。

 このように、集めたお金で店舗を
購入したり、商品を仕入れたりする
ことでお店の営業を行なうわけです
から、収入や支出をもたらすものは
お店の店舗であったり、商品であっ
たりするということが分かるかと
思います。

 ということは、お店がいくら儲け
たかという情報を得るためには、
さらにお店の財産や借金の状況も
知る必要があるということになり
ます。 

このため、お店の経営をするうえ
で必要な情報とは、以下の2つとい
うことになります。

①お店が儲かっているかどうか
 という情報


②お店の財産や借金などの情報


「ふ~ん。なるほど。スズキ先輩
に習っておいてよかったな。」


ノートを取りながら、そう思う
タナカ君であった。

  先生の授業はさらにつづく



ストーリ5
【タマゴを100円で買ったら】

(登場人物)
ヤマダ君:AC高校簿記部のエース
サトウさん:AC高校簿記部の
      マドンナ
タナカ君:簿記に興味を持ちなん
     となく簿記部に入部
スズキ君:簿記部の部長


簿記部の部室で、部長のスズキ先輩か
ら簿記の手ほどきを受けるタナカ君。
スズキ先輩の話は、いよいよ、簿記の
根幹の部分に入ってきた。


「タナカ。君ならお店を営業するとし
て、お店の取引をどのように記録して
いくかい?」


部長のスズキ君は、タナカ君に質問し
た。

「う~ん。そうすね。やっぱ、お小遣
帳のように、お金が入ってきとき、出
て行ったときにその金額を記録してい
くんじゃないんスかね・・。」


タナカ君は、腕組みして考えている。

「そう。普通はそのように考えるんだ。
家の家計簿とかはそのようにしてお母
さんが家計のやりくりをしているだ
ろ。」


タナカ君は、自分の母ちゃんが家計簿
と睨めっこしながら、息子の小遣いを
減らさなきゃ、と言っていたのを聞い
てゾッとした時のことを思い出した。

「家計簿のようにお金の出し入れを記
録しただけでは、さっき挙げた2つの
情報が簡単に入手できないのさ。」


ヤマダ君がさりげなく口を挟んだ。

「おっ、さすが簿記部のエース!」
スズキ先輩が合いの手を入れる。

タナカ君は、「カッコつけやがって~」
と内心、ちょっとだけ悔しかった。

「つまり、儲けに関する情報と、財産
や借金、元手に関する情報の2つを得
るためには、家計簿じゃ無理ってこ
と?」


タナカ君は簿記部エースのヤマダ君に
聞いた。

「そうさ。ちょっと家計で考えてみよ
う。仮に買い物に行き、100円払って
卵を買ったとしよう。すると、家計簿
だとこのような記録の仕方になるよ
ね。」


ヤマダ君は、紙を一枚取り出して説明
した。

【家計簿】
支出
タマゴ代100円


「うん。まぁ、こんなんだよな。
でも、これの何が問題なの?」


タナカ君は疑問に感じたことを質問し
た。

「これだと、お金が入ってきた、出て
いった、ということが記録されるだけ
で、収入と支出の差として、いくら儲
けたのかということは分かるんだけど、
じゃあ、財産はいくらあるのか、借金
はどれくらいあるのか、という情報は
入手できないんだ。」


タナカ君は「ふ~ん」って感じの顔を
している。

「つまり、このタマゴを100円で買っ
たという例で、お金が100円出ていっ
たということだけでなく、タマゴが
100円分増えたという記録も同時にす
るということが必要になるのよね。」


「おっ、サトウさんいいね~。」
「サトウ、やるな~。」

タナカ君とスズキ先輩がグッドのポーズでサトウさんを褒めた。

「つまりだな~。」

スズキ先輩が紙に書いてまとめる。

お店を上手く経営するためには2つの情報が必要。

①お店が儲かっているかどうかの情報
②お店の財産、借金、元手などに関す
る情報

(タマゴ100円を買った。)
【家計簿】
支出:タマゴ代100

これだと、収入と支出しか分からない。
つまり、①の情報だけ。

【簿記】
お金が100円出ていった。
タマゴが100分増えた。

これだと、100円の支出という①の情
報と、タマゴという財産が増えたとい
う②の情報が一回で記録できる。



「なるほど~。一度に①儲けに関する
情報の部分と、②財産、借金、元手に
関する情報の部分を記録できるのか。
ということは、元手が増えた原因①と
元手が増えた結果②を記録できるって
こと?」


タナカ君はスズキ先輩のまとめ図を見
ながら言った。

「そうだよ!タナカ。お前飲み込み早
えじゃねーか~!」


スズキ先輩はタナカ君の背中をバンバ
ン叩きながら言った。

「そうさ。①元手が増えた原因を報告
するものが損益計算書で、②元手が増
えた結果を報告するものが貸借対照表
といえるのさ。」


ヤマダ君がまとめの図に書き込みながら言う。
タナカ君は深く頷いた。

           次回へつづく

ストーリ4
【同級生2人がやってきた】

(登場人物)
ヤマダ君:AC高校簿記部のエース
サトウさん:AC高校簿記部の
      マドンナ
タナカ君:簿記に興味を持ちなん
     となく簿記部に入部
スズキ君:簿記部の部長

簿記部部長のスズキ先輩から指導を受
けるタナカ君。
タナカ君は簿記をマスターできるの
か?!

「そうか~。お店が儲かっているかど
うかの情報・・。それだけじゃ、駄目
なんスね。同時に元手や財産、借金の
状況も分かってないといけないのか
~。」


タナカ君は、うんうん頷く。

すると、簿記部部室のドアが「ガチャ
ッ」と開いた。

「おっタナカ、ついに入部したな・。」

あっ、タナカ君来たんだね~。」

タナカ君の同級生で、簿記部エースの
ヤマダ君と、簿記部マドンナでタナカ
君の幼馴染みのサトウさんが部室にや
ってきた。

「そうだよ~。お前らがあんまりしつ
こく誘うから、とりあえず入ってみる
ことにしたんだよ。」


タナカ君は、照れくさそうに言う。

「スズキ先輩、こいつ普通科なんで。
どんどん鍛えてやってください。」

「なに、タナカ、お前普通科なの?!
珍しいな~普通科で簿記やるなん
て・・。」


スズキ先輩は驚く表情を見せる。
普通科の人が簿記部に入部するのは簿
記部創設以来始めてなのだ。

「先輩、タナカ君家は、お祖父ちゃん
が税理士事務所をやってるんですよ。」


タナカ君は、余計な事を言うなという
表情を見せる。

「そうか、お前ん家は税理士事務所を
やってんのか。じゃあ、簿記ぐらいと
っておかないとな~。」


「んじゃ、先輩。また続きを教えてく
ださいよ~。俺、こいつら2人に早く
追いつきたいんスよ。」


タナカ君は、ヤマダ君とサトウさんの
2人の顔を見ながら、スズキ先輩も頼
む。

「おっ、タナカ、お前やる気でてきた
な~。じゃあ、次は簿記のルールを教
えてやろう。」


「はい、よろしくっス!!」

「おい、タナカ。簿記のルールは根幹
の部分だからな・・。しっかり理解し
ろよ!」


「そうよ。ここは大事なところよ。
聞き流していると、ホントに大切なと
ころがわからないままになるからね
~。」

タナカ君は、「いちいちうるせ~な。」
という表情をした。

でも、タナカ君は内心思った。
そんなに大事なことなのか・・・。
その簿記の根幹とやらは一体何なの
か?!

           次回へつづく