こんにちは。
スポーツトレーナー協会JARTA代表の中野崇です。
ちょっと前ですが、僕がSocio Onorato(名誉会員)を務めるイタリアのトレーナー協会であるAPFで講義をしました。
その場で、サッカーにおけるスピードやパワーを高めていく際、モモ裏にあるアクセル筋であるハムストリングを働かせ、モモ前にあるブレーキ筋である大腿四頭筋の働きを抑制する必要性を話しました。
そしてフォワードランジの時にもこのバランスを求めることが重要であると話した時、イタリア人のサッカーコーチから「ランジの時は大腿四頭筋は膝を固定するために重要だよ」と意見がありました。
モモ前を抑制し、モモ裏を働かせる必要があると考える方は増えてきた印象がありますが、この質問にどう答えますか?
僕がどう答えたかというと。
「なぜ膝を固定するのですか?」
まさかの質問返しです笑
するとコーチからの返答は、「ランジのフォームを安定させるためです」。
ちょっとアレンジしていますが、ランジはこんな動きのトレーニング。
確かにランジで前足を踏み出した際、大腿四頭筋を働かせると膝が前方や側方にブレるのを防ぐことはできます。
「外見上」は。
ここで気づいていただきたいのは、「フォームを安定させること」が目的となっていることです。
しかし本来、ランジは何らかの目的に対する「手段」のはず。
その時の話の流れ上だと、ランジはスピードを高めるための手段、具体的にはハムストを優位に作用させるための学習であり強化の手段でした。
そういう目的下において、大腿四頭筋を優位に働かせる様式でのランジ安定を目指すのは、「手段の目的化」です。
いくらランジが美しく「正しい」フォームでできても、踏み出した時にブレーキ筋を働かせるパターン(クセ)を自分の動きにプログラミングするトレーニングになってしまいます。
つまり、やればやるほど下手になるトレーニングになってしまう可能性があるのです。
このことは、他の多くのトレーニングにも同じ構図として当てはまります。
スクワットやデッドリフトなどももちろんです。
そのトレーニングの目的が、「正しいフォーム」になっては筋違いです。
「身体をひたすら大きくするため」「筋肉をつけて美しい外見を作るため」というレベルでの目的であれば、それでもいいかもしれませんが、トレーニングの目的がパフォーマンスの向上である場合は、この点については非常に慎重になるべき部分です。
そのトレーニングの目的は何か。
トレーニングのフォームが目的化していないか。
どうせ時間と労力を使うなら、ついでに頭も使いましょう。
そして時間と労力を使うなら、パフォーマンスにつながる割合をできる限り高めるようにしましょう。
そのトレーニングが、競技の動きにつながるのか、物理学的に有利な動きの学習につながるのか。
多くの要因によって結果が左右されてしまうスポーツだからこそ、確定できる要素を増やす。
選手でいられる時間は、本当に短いですよ。
ちなみにランジの時に膝が前や側方にブレるのを防ぐのは、まず「力を発揮する方向」を整える必要があります。
膝が前に出るってことは、前方ベクトルが優位で下方への力のベクトルが不足しています。
つまり、股関節の伸展ベクトル=ハムスト上部が不足していると言えます。
スネの骨を地面に対して垂直に強く叩きつける力を追加すれば改善されます。
お読みいただき、ありがとうございました。
全てはパフォーマンスアップのために。
Grazie di nuovo.
中野 崇
追伸
ランニングに膝を固定する必要が出てくるのは、支えた時に膝が前に出るのを防ぐためと考えられている場合があります。
足の着地時に膝が前に出るのは良くないランニング「フォーム」だからです。
ただ、これも本質的ではありません。
膝が前に出るのを前モモの筋力で止めても、膝が前に出る力のベクトルは発生したままです。
着地のタイミングでハムスト(上部)が作用していれば、膝が前に出る力のベクトルは生じません。
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