人工股関節術後の方のマンツーマンレッスンの機会を頂いた。
この方は、8年ほど筋肉ケアでフォローを継続している。
zoom姿勢体操教室にもご参加下さり、インナーマッスルの意味はわかってくれたが、痛みも有り動きも悪く、股関節の変形は進んでおり、手術となった。
人工関節の手術は2023年9月に実施。1ヶ月半で復職。
昔の人工関節は3ヶ月くらい入院してた記憶があるので、今の術式はすごいなあと感心していた。
でも、手術は成功し傷は治っていても、インナーマッスルは育っていなかったようで、大腿部の傷口周囲の筋肉(大腿直筋)が、「出かけて沢山歩くとパツンパツンに腫れて痛い」という症状が続いていた。
退院後、フォローしてもらっている病院では、「痛いのは筋力がないからです。鍛えましょう」と股関節屈曲練習を指導されていた。「痛みを我慢して筋トレしてます」と本人は言う。
病院勤務時の経験から、同じ仲間である前院のリハの指導を否定してはいけないと思っている。それは、傷の痛みがある時に指導されても、自主トレの趣旨がちゃんと伝わらない事がかなり多いからだ。
なので、病院の指導を直接否定したことはなかったが、ご本人の希望も有り本音を伝えた。
「股関節屈曲の筋力をつけるために大切なのは、インナーマッスルで骨盤と脊柱と大腿の安定をさせる事が1番。その上で、最小限の力で股関節をアウターマッスルで屈曲させる練習が必要となる。指導されたその自主トレはアウターマッスルのみのトレーニングなので、繰り返すと余計に痛みを作るだけだと思う。私にマンツーマンで、インナーマッスルを育てる指導をさせて欲しい」
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マンツーマンレッスンの内容は、
呼吸を使って腹部を促通し、インナーマッスルを安定させた。
ピラティス的に言うとインプリント。
インプリントのまま、股関節を曲げるイメトレをする。股関節屈曲運動に先駆けて、骨盤と背骨と股関節の安定を促す。
お腹の奥で足を持ち上げるイメトレをする。
だが、実際に足を持ち上げる事は禁止しておく。足の重みという負荷はまだかけない!!!
ここがポイント!!!
足を動かそうと意図した時
関節運動に先行して生じる
無意識レベルのインナーマッスルの活動を促通する
インプリントの動きが確実に出来るようになるまで、股関節屈曲運動を、筋トレとして実施しないよう頼んだ。
1カ月後、大腿直筋の腫れと痛みはほぼなくなり、柔らかい筋肉になっていた。マッサージでゆるめなくても、柔らかくしなやかに使える筋肉になっていた。
筋肉は、ゆるめるだけでは解決しない。
正しいリハビリ的な筋肉の運動パターンを再学習させることの重要性を実感した。
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私は、病院から出た理学療法士であり、30年前に学んだ知識を頼りに、目の前の人の痛みの原因を分析する。現在のリハのルーティンは把握していない。
でも、一発でその答えにたどりつかないことも多いが、理学療法の、リハビリの理論は、病院を退院した後の不定愁訴を変える大きな一助となっていると強く感じる。
スポーツの筋トレ的な、鍛えたらなんとかなる。筋力さえつけばいい。
身体はそのような単純なモノではない。
今、理学療法士の若い先生方が、独立していろんな試みをしてると聞く。
そんな先生方に伝えたい。
「マイナスをゼロまで戻す技術と理論」の理学療法士の知識が必要とされるフィールドは沢山ある!