昭和の名大関、若貴兄弟の父である貴ノ花。
わたしが小学生の頃、一番好きな力士だった。
たぶん、当時の大相撲ファンなら誰しも大好きな、今で言えば大谷翔平や羽生結弦、ついでに藤井聡太くらい、人気があったのだ。
ただ晩年は顎のあたりの癌などで、55歳という若さで逝去されている。
彼に限らず、例えば横綱の平均寿命は62歳だとか。
異常な状況であり、由々しきことだ。
そこには目をつぶり、力士は食べるのも仕事だというのが当たり前の、命と引き換えの過酷な世界だ。
以前、通ってたジムに元関取ですでに引退していた寺尾関が来ていた。
彼もつい最近60歳過ぎの若さで亡くなられている。
小兵力士で土俵を駆け回るのが人気だったが、その寺尾関でさえ、胸板はとんでもなく厚く、腕は丸太、足は大木の幹のようであった。
彼を見て相撲の世界の凄さが分かった。
関取になると天国、それ以下はゴミと呼ばれるような世界。そこには確かに命よりも大事なモノが存在するようだ。
『果てなき渇望』
という、ステロイドビルダーを描いたノンフィクションの書籍がある。
これも筋肉で巨大化していくことが命より尊い、だからステロイドや成長ホルモン、大量のタンパク質摂取はやめられないという人たちを描いたもの。
ミスターオリンピアに出場するような、バケモノ系のビルダーも短命な人が多いのはそのためだ。
力士とバケモノビルダーの果てなき渇望。
見る側は娯楽でいいが、このままにしといてええんかいのー。