そこは全フロアがほぼ貸し会議室ばかりの、古〜いビルの一室だった。
予約した時間の少し前くらいに、扉の前で待機し、前の人が出て来たら入室するというシステム。
特に次の人どうぞ、的な声かけもなく入ってみるといたのだ。
さだじぃが。
あたりまえか。
パイプ椅子に座ってにこやかに迎えてくれたさだじぃは、包み込むような温かみでいきなり癒しを施してくる。
男前(=わたしの苗字。イケメンと読んでも可)です
と軽く自己紹介。
男前さん、いつから症状出たの?
大体4年くらい前から...
まあ、最初からのいきさつを丁寧に伝えますわな。
で、症状が出ている右足の親指近辺を揉しだきはじめる。クソ痛い。でも我慢だ。
一番神経を刺激するツボがあるらしい。
どおりで痛いはずだ。
いや、待て。
さだじぃはハンドパワーみたく触らずに気を送るはずなのに、なんで揉んどるん。
まあ、それはそこだけでそれからは脚を中心に何度も何度も気を送ってくれ、ほどなくすると歩きもスムーズになり、椅子からの立ち上がりもスッとできるようになった。
なんなら走り出したい気分にもなってくる。
いやあ、凄い〜、うんうん
満足げなさだじい。
最後に頭全体を探るようにしばらく手をかざした後、驚きの言葉が!
男前さん、これたぶんALSじゃないね
小脳の血流か何かが悪くて神経に悪さをしてると思うよ
一瞬時間が止まった。
付き添いの妻、泣き出す。
まあ、今年中には治りますよ
一ヶ月後に会うのが楽しみだね〜
妻、さらに泣き笑い。
もちろん来月の予約をして帰る。
帰り際に直筆の龍の絵をおみやげに購入(たった2000円)
施術代と合わせて6000円。
絵にも気を入れるからちょっと待ってね
本当に沢山のおみやげを持ち帰った気分だがいろいろ心の整理をしてみた。
太腿あたりに手をかざされた時は、毛穴が開くような感覚で鳥肌とは違う。
その時の筋肉の動きはピクつきと区別できないのでそこは除く。
ひょっとしてヒーリングというのは、一種の催眠術なのかもしれない。
歩けない人が歩く、酸っぱいレモンが甘く感じる、クララが立つ等。
疑念があると良い結果にならないと思い、全面的に信頼して心身を預けたというのもあるのか。
では小脳の話や、今年中に治るという言葉は?
ただ言えることは、どうであれこの症状が治りさえすればなんでもいいのだ。
さだじいはこちらの治癒力を引き出すのが絶妙に上手いだけなのかも知れない。
スーパーサイヤ人。
今年一杯、いや残りの人生をかけて検証してみようではないか。