表題作は小唄ですが、こんな傑作、一体生涯に幾つ巡り会えるでしょう。
彼のショーマンシップの塊のような個性は、
レコードでも存分に発揮されていて、
何度も何度も繰り返して聴くことが出来ます。
愛嬌も芸として徹底され、突き抜けた完成度。黒人がショーをやるという意味が、
やはり今とは全然違った時代の人なので、
そういった事にも想像力を働かせながら聴くと興趣は増します。
楽しくて、あっと言う間に聴き終えてしまうので、
それだけでは勿体ないと思うのです。
人類が音楽を喪失しつつある現代、こういう巨大な才能はもう現れないのでしょう。
ヴォーカルもピアノもまさに至芸!
「手紙を書こう」「ハニー・サックル・ローズ」・・・
非の打ち所のないゆとりと距離感が素晴らしいです。
そこから自然と生まれ出るユーモアは、
市井に生きる人々へのこの上ない励ましです。
受け入れ側の我々が、その励ましの値打ちを見損なったり忘れたりしない限り、
ウォーラーの音楽は永久に滅びず生き続けるでしょう。



