ザ・バンドのベーシスト、リック・ダンコのソロ第1作です。
70年代にリリースされたロックアルバムは本当に数が凄くて、
ロックの名盤のほとんどがこの時代に出たと思えるほどです。
その中にあって、このアルバムの一般的知名度はどれくらいなのでしょう?
中の上くらいでしょうか、とにかく地味な評価であることは否めません。

私個人的にはかなり思い入れの深いアルバムです。
ロン・ウッド、ダグ・サム、エリック・クラプトンらゲスト陣も豪華で、
もちろんザ・バンドの面々も参加しています。

ザ・バンドの解散コンサートの模様を収めた
マーティン・スコセッシ監督のドキュメント映画「ラスト・ワルツ」で
特に印象的な場面の一つにリックの単独インタビューがあります。
「今は何してる?」というスコセッシのインタビューに、
「忙しくしてる。音楽を作ってるよ」と応えるリック。
そして彼は帽子を被り治し、椅子の背もたれに体を預け深く項垂れます。
そこで流れるのが、このアルバムに収録されている
リック屈指のバラード「Sip The Wine」です。
実に気だるくて、同時に感動的な場面です。
他にも盟友ボビー・チャールズと共作した
名曲「Small Town Talk」などエヴァーグリーンな曲が詰まった傑作です。

99年にリックが亡くなった時、二十歳の頃から私の中に存在し続けた
ひとつの大きな流れが断ち切られたようなショックを受けました。
もこもことした黒っぽくファンキーなラインを操るベーシスト、
独特の危なげで切ない個性で聴く者を魅了するヴォーカリスト、
ザ・バンドの陽気な面を徹底して演じ続けた天才。
新聞で訃報に触れ、私はすぐさま一人の友人に電話を掛けました。
年甲斐もなくセンチメンタルな、と揶揄する
もう一人の自分もいましたが、誰かと少しでもリックの話をしておきたい、
その思いには勝てませんでした。
「今ちょうど、家にあるザ・バンドのアルバムを全部出してきて床に広げてたとこ」
開口一番、友人はそう言いました。