1967年の発表当時、ヒットしたアルバムではありません。
後にすべての収録曲が有名無名問わず無数のアーチストにカバーされ、
大いに再評価されました。
今では余りにも有名な、ロックの金字塔的1stアルバムです。

同じ年にビートルズは「サージェント・ペッパーズ・・・」を発表し、
ジミ・ヘンドリックス、ドアーズがデビューするなど、
まさにサイケデリック全盛、
すなわちロックの生命力が歴史上最も燃え上がった時代の作品です。
その中にあってもなおヴェルヴェットは完全な異端であり、
最先端の、まだその先を行く存在でした。

ポップアートの鬼才、アンディ・ウォーホールが自らプロデュースを志願、
彼の工房によく出入りしていた女の子、
ニコをヴォーカリストに迎え入れて制作されました。
インパクト絶大なバナナのジャケットも勿論ウォーホールの手によるものです。

芸術志向の強い都会の若者が、創作衝動のすべてぶつけたような迫力が漲っており、
40年以上たった今も、まったくその魅力は褪せることはありません。
基本的なメロディ素材としては耳馴染みの良い美しいものが揃っていますが、
ノイジーなサウンド処理の仕方が異様で、
そこに性倒錯や薬物を露骨に歌った極めて過激な歌詞が乗せられ、
全体として聴くとやはり美しいとしか表現しようのない
高次な音楽空間を生み出しているのです。
これぞロックと言いたい音です。

私の10代には欠かせない一枚で、数え切れないくらい繰り返し聴きました。
今ではぐっと回数は減りましたが、それでもLPをたまに聴きます。
このアルバムの録音状態を悪い、とする人があまりに多いのには驚きます。
テクノロジーへの依存を未来志向と居直り、
ふやけきって鈍磨した感性に一抹の危機感も持てない現代の音楽家には
決して再現できない閃光のようなロックのオーソドキシーがここにはあり、
最高の録音だと思います。