だんだん面白くなるスルメ小説~~池井戸潤著「陸王」 | 貧乏暇なし独身女の読書日記ときどき手芸etc.

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貧乏暇なし生活の合間に読書するのが生きがいです。面白くない本は最後まで読まないので、面白かった本の書評だけをブログにあげています。だから更新頻度は低いですが、ブログに挙げた本は、お薦めできるものばかりなので、読書好きの方は参考にしていただけると幸いです。

ちょっと前にTBSでドラマ化された作品ですが、池井戸作品はどうしても原作で読みたかったので、あえてドラマは見ないようにしていました。やっぱり、原作を読んで良かったです。

 

埼玉県行田市にある老舗足袋業者「こはぜ屋」の四代目社長の宮沢紘一は、会社存続のためにある新規事業を思い立つ。それは、伝統の技術を駆使したランニングシューズ「陸王」の開発だった。ライバルの大手スポーツ用品メーカーによる妨害、資金不足、販路の確保etc.、数々の難問が立ちはだかるなか、従業員20名の地方零細企業が、一世一代の勝負に打って出る・・というストーリーです。

 

舞台が零細の足袋製造業者ということもあって、序盤を読み始めた段階では、「地味な話だな~」って感じだったけど、読み進んでいくうちに、だんだん面白くなっていきました。

 

特に、材料開発者の飯山が登場してからは、一気に引き込まれました。

 

飯山の新素材開発への心血を注ぐ執念。仕事にかけるプライド、生き様。ツンデレみたいなキャラクターも面白かったです。宮沢の息子の大地との間に師弟関係とも友情ともいえる関係が芽生えたところでは、ウルっときました。飯山は、本作のもう一人の主人公といっても過言ではないと思います。

 

池井戸作品といえば、「勧善懲悪」が定石なので、なんとなく展開は予想できましたが、本作では、伝統文化を支える老舗の零細企業の存在意義、潤沢な資金力をチラつかせて資金難に喘ぐ零細企業を取り込もうとする大企業、スポーツ選手を金儲けの道具として利用するスポーツ用品メーカーやマスコミetc.といった問題も取り上げられていて、他の作品にはない魅力も多くありました。

 

また、池井戸潤さんは、元銀行員だけあって、企業の買収、業務提携、銀行からの融資といった金融関係の説明が分かりやすいです。その辺の知識がほとんどない私でも、難なく理解できました。

 

最初は地味に思えた本作ですが、読んでいくうちに、じわじわと面白くなる、スルメのような作品でした。

 

やっぱり池井戸作品は、ハズレがないです。