かなり前から気になっていた小説なんだけど、amazonのプライムセールで半額になっていたので、kindleで購入して読んでみました。
1989年に小樽で発生した母娘惨殺事件の被告は、死刑判決を受け、その死刑判決が出たわずか約2年後に死刑執行を受けていた。それから約15年後、被告の娘が再審を請求した。娘の主張が認められれば、国家による冤罪死刑が明るみになる。司法の威信を賭けてあらゆる手を尽くして再審潰しにかかる検察と、真実を証明して冤罪を晴らそうとする娘と弁護団の攻防を描く・・・といったストーリーです。
すごく面白かったです。冤罪事件、それも冤罪死刑を扱っているので、すごく重い内容だけど、主役級の登場人物のほとんどが正義感の強い善人として描かれることで、物語が爽やかに進んでいくので、精神的なダメージをあまり受けずにどんどん読み進めることが出来ました。
冤罪事件をテーマにしている点では、以前読んだ太田愛さんの「幻夏」と同じですが、これと遜色ない傑作だと思います。
ただ、冤罪事件が生まれる原因となる検察や裁判所や捜査機関や司法システムの問題点については、こちらの「潔白」の方が熱く描かれていて、冤罪事件やその背景について問題提起したいという著者の信念を強く感じました。
クライマックスで明かされる真犯人の真相については、若干リアリティがないように思えて残念な点でしたが、この部分を差し引いても、傑作に間違いありません。