ナチスドイツが舞台のハードボイルドミステリー~~フィリップ・カー著「偽りの街」 | 非正規独身女の読書日記ときどき手芸etc.

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貧乏暇なし生活の合間に読書するのが生きがいです。面白くない本は最後まで読まないので、面白かった本の書評だけをブログにあげています。だから更新頻度は低いですが、ブログに挙げた本は、お薦めできるものばかりなので、読書好きの方は参考にしていただけると幸いです。

長い間、積読本だった本ですが、たまたま押し入れで見つけて読んでみました。

 

1936年、ナチス独裁が色濃くなりユダヤ人迫害が始まっていたベルリンで、失踪人探しを仕事にするグンターのもとに、鉄鋼王ジクスから調査の依頼が舞い込みます。ジクスの一人娘とその夫が殺され、金庫にあった高価な宝石が盗難されたので、その宝石を探して欲しい・・・という依頼です。グンターは、ナチ党政府高官だった娘婿の身辺を洗い始めますが、事件は意外な様相をみせていく・・・というストーリーです。

 

本作で描かれる事件&ミステリーの部分自体は小粒で地味な印象でしたが、終盤でどんでん返し的な展開があり、そこから一気に、散らばっていたパズルのピースがはまるように真相が明らかになる展開は見事でした。

 

グンターが調査のために足を運ぶ先々で目にするナチス政権の影がリアルに描写されていて、当時のベルリンの緊迫感、閉塞感がひしひしと伝わってきました。

ナチスによる祖国の腐敗に苦悶しながらも、ユーモアも失わずに不屈の精神で事件を追うグンターの生き方が、この作品の魅力だと思います。

 

本作には未解決部分が残され、完全なハッピーエンドとはならずに陰鬱な余韻を残す終わり方でしたが、この結末もナチス時代の不穏な雰囲気に合っていたように思いました。

 

続編も出ているようなのでそのうち読んでみるつもりです。