実売価格558,800円前後
オーディオテクニカ、フラグシップ開放型ヘッドホン「ATH-ADX7000」。新開発HXDT技術などでさらなる高音質化図る
2025/10/23
編集部:小野佳希
オーディオテクニカ、フラグシップ開放型ヘッドホン「ATH-ADX7000」。新開発HXDT技術などでさらなる高音質化図る - PHILE WEB

オーディオテクニカは、開放型ヘッドホンのフラグシップモデル「ATH-ADX7000」を10月31日(金)に発売する。オープン価格だが税込558,800円前後での実売が予想される。
本機について同社は、“真の開放型” を意味する「トゥルーオープンエアーオーディオ」思想を具現化した最高峰モデルだと説明。同思想に基づく製品としては「ATH-ADX3000」と「ATH-ADX5000」を先行して展開しているが、その最上位モデルが加わり、“ADXシリーズ” として3機種がラインナップされる形になった
新開発の「HXDT(High-Concentricity X Dynamic Transducer)」を採用。設計から製造、組み込みまでを一貫して自社で行うことで、製造精度を向上させ、信号の正確な伝達と音の高い再現性を可能にしたという。
そのほかにもバッフル一体型の58mm口径ドライバー、無方向性電磁鋼板による磁気回路、専用設計の空芯ボイスコイル、独自開発のコアマウントテクノロジー(PAT.P)など、様々な技術を投入して高音質化を図っている。
上記「HXDT」では、同社が30年かけて探求してきたという理想的な振動板成型金型の精密成型技術により、ダイアフラムの形状を高精度で制御。長年培ってきた社内製造技術を用いて、バッフル、磁石、ボイスコイル、ダイアフラムを同軸上に配置し、同社従来製品に比べて1/10の精度を達成したとのこと

そして、アルミニウムビレットを精密切削加工したバッフル一体型58mmドライバーを搭載。バッフルとドライバーを一体化することで、構成部品を最小限に抑え、音に混ざるわずかな歪みさえも排除できるよう図った。
そのアルミニウムは、素材そのものが持つ音響特性を最大限に引き出せるよう配慮しつつ、不要な共振を抑えながら、限界まで緻密に削り出すことで軽量化にも貢献。審美性にもこだわり、5軸切削から得られる有機的で滑らかな曲線をつなぎ合わせることで形作っている。また、シリアル番号もアルミニウムのバッフルにレーザー刻印している。
磁気の流れがどの方向にも均一になるよう設計された、日本発祥の特殊な技術から生まれた無方向性電磁鋼板をヘッドホンに初めて採用。磁気回路内で磁束がスムーズに流れることで、エネルギーロスを最小限に抑え、電気の変換効率を高めるという。さらに、ノイズの発生を抑えられるため、音の透明感が一層際立つとも同社は説明している。
独自開発のコアマウントテクノロジー「PAT.P」では、バッフルダンパーとイヤーパッドの位置関係を見直すとともに、耳からハウジングまでの音響空間を2分の1に仕切るポジションにボイスコイルが配置される構造を採用。これにより、自然で広がりのある音場表現と抜けの良さを実現したとしている。
専用設計の空芯ボイスコイルを、ADXシリーズに初採用。これにより490Ωというハイインピーダンス化を実現し、より強力な電磁駆動力を獲得した。すべての帯域でレスポンスが向上し、ダイナミックレンジも一段と広がったという。
ハウジングはアルミニウムをベースに設計された特殊ハニカム構造。日本の職人によるプレス加工によって成型しており。これによって、ドライバーの駆動力と振動板のリニアリティを最大限に引き出せるようにしているとのこと。
フレームとアーム部は、高い剛性と振動吸収性を兼ね備えるマグネシウムから成型。不要な共振の抑制を図るとともに、比重約1.74という軽さによって、音の純度と快適な装着感の両立も図っている。また、チタニウム素材をスライダーに採用することで、構造の安定性と耐久性も向上させている。
イヤーパッドは、妙中パイル織物社の超高級ベルベット素材を採用したものと、イタリア・アルカンターラ社製の高級人工皮革を採用したものという2種類を同梱。上述のアルミニウムハウジングやマグネシウム成型フレーム/アームなどが相まって着け心地は軽く、特にアルカンターラ社製イヤーパッド装着時には270gという軽量さを実現している。
ケーブルは着脱式で、アンバランスケーブルとバランスケーブルの2種類を付属。ナイロン巻きシースを採用しているほか、自社開発のA2DC(Audio Designed Detachable Coaxial)コネクターによって安定した信号伝送と確実な接続性を追求している。
そのほか、専用ハードケースも付属。なお、同ケースをベースに、本機以外のオーディオテクニカ製ヘッドホンなど用に内部のクッションの形を自分でカスタマイズできるようにした「AT-HPC3」も同時発売する。こちらは税込11,880円前後での実売が予想される

公式オンラインストアでは発売記念キャンペーンも実施。10月23日(木)から11月7日(金)23時59分の期間中に、公式オンラインストアにてATH-ADX7000を予約・購入した人へ、オリジナルの「クロス」をもれなくプレゼントする。本クロスは、髪の毛の266分の1という超極細繊維で作られており、汚れをしっかりかき出し、手垢による黒ずみなどもきれいに落とすことができると同社は説明している。
また、同社は11月1日(土)に行われるイベント「秋のヘッドフォン祭 2025」に出展。本機を試聴できるようにする。
イベントはJR東京駅直結のステーションコンファレンス東京の5階および6階にて開催。オーディオテクニカのブースは5階の「503A」部屋に展開される
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ゥルーオープンエアー」思想に新たなフラグシップ機が誕生
オーディオテクニカ「ATH-ADX7000」速攻レビュー!人気ヘッドホン新旗艦機は「オープン型の理想ともいえる領域」に到達した
2025/10/23
岩井 喬
オーディオテクニカ「ATH-ADX7000」速攻レビュー!人気ヘッドホン新旗艦機は「オープン型の理想ともいえる領域」に到達した (1/3) - PHILE WEB

オーディオテクニカの「トゥルーオープンエアーオーディオ」を体現する開放型ヘッドホンに新モデル「ATH-ADX7000」が登場。シリーズ最上位機の実力を、評論家の岩井喬氏がさっそくチェックした。
人気シリーズに新たなフラグシップモデル「ATH-ADX7000」が誕生
空気の流れをコントロールし、より自然な振動板の動きで原音を忠実に再生するという、開放型の理想を再定義したオーディオテクニカの「トゥルーオープンエアーオーディオ」。
その理想を具現化すべく2017年に誕生したオープン型のフラグシップモデル「ATH-ADX5000」はオーディオテクニカが長らく取り組んできたオープン型の到達点として、国内外ともに高い評価を得ている。そして昨年にはこのトゥルーオープンエアーオーディオの世界観を広げる存在として下位モデル「ATH-ADX3000」も誕生した。
ATH-ADX5000の人気はいまだ高いものの、発売から8年と時間も経っており、その後継、もしくはさらに上位となる製品の登場が待たれていたが、この秋、そうした期待に応えるトゥルーオープンエアーオーディオの新たなフラグシップモデル「ATH-ADX7000」が誕生する。
ATH-ADX7000の進化点は?
ATH-ADX7000は、バッフルダンパーとイヤーパッドの位置を見直して、耳からハウジングまでの音響空間をボイスコイルの位置で半分に仕切る構造とし、空気の流れを制御するための一定の空間を設けた、独自のコアマウントテクノロジーをATH-ADX5000から継承。開放型方式ならではの空気の流れを意識した、より自然な振動板の動きを追求している

そしてATH-ADX7000での大きな進化点は、ドライバーの設計、製造における精度の高さについて妥協なく突き詰めたことにあるだろう。
ドライバーはATH-ADX5000と同じ大口径の58mmダイナミック型ドライバーを搭載しているが、HXDT(High-Concentricity X Dynamic Transducer)技術を用いることで、ダイアフラムへのタングステンコーティングを施す必要がなくなり、レスポンスが向上したという。
自社で開発した精密成型技術によって、ダイアフラム形状を高精度に制御することが可能となり、コーティングによる重量アップの問題も解消。また組み立てにおいても長年培ってきた製造技術によって、バッフルや磁石、ボイスコイル、ダイアフラムを同軸上に配置し、従来製品と比較して1/10という精度の高さを実現している。
そしてATH-ADX5000では樹脂製であったバッフルは、アルミビレットを精密切削加工し、不要共振を抑えながら極限まで緻密に削り出すことで剛性を保ちながら軽量化にも貢献。
5軸CNCを用いることで有機的で滑らかな曲線を繋ぎ合わせた形状として、空気の流れも一層スムーズなものとした。またドライバーとこのバッフルを一体化させることで構成部品も最小限に抑え、音に混ざる僅かな歪みも解消している。
磁気回路やハウジング、イヤーパッドにも細かな配慮が
加えて磁気回路には、磁気の流れがどの方向にも均一になるよう設計された無方向性電磁鋼板をヘッドホンで初めて導入。
ATH-ADX5000ではパーメンジュールを用いていたが、日本発祥の特殊な技術である電磁鋼板へ置き換えることで、磁気回路内での磁束の流れをスムーズにしながら、エネルギーロスも最小限とし、電気への変換効率を高めている。またノイズの発生も抑えるため、音の透明度を高め、純度の高さも追求しているという。
ハウジングのアルミ製パンチングメタルは、日本の職人によるプレス加工によって作られる、特殊ハニカム形状のものとしており、フレームやアームはマグネシウム合金で成形され、不要共振も抑え込む
。

イヤーパッドはアルカンターラ製のものに加え、より柔らかく肌触りの良い、妙中パイル織物社製の高級ベルベット素材のものも用意
。

重量は約270g(ベルベットパッド装着時は約275g)と、軽量かつ装着性の高いボディ設計も継承した。ケーブルはA2DC端子による両出し・着脱式で、6.3mm標準プラグ仕様のものと4ピンXLRプラグ仕様のバランスケーブルの2種類が同梱。ハードケースも引き続き付属する
。

ATH-ADX7000レビュー(1):音質は「オープン型の理想ともいえる領域」
試聴ではラックスマン「P-750u Limited」とバランスケーブルで繋いで聴いてみたが、幾分ウォームな印象で、音像描写もマイルドな傾向となる。音像の密度は高く、存在感はあるのだが、ATH-ADX7000の持つポテンシャルは発揮できていないように感じた。そこで上位のヘッドホンアンプ「P-100 CENTENNIAL」も準備し、置き換えてみるとサウンドも一変。不満点も解消された
空間性の高さと音像のしなやかで音離れの良い描写はオープン型の理想ともいえる領域であり、音像の厚みや低域の豊かな押し出し感も両立。オーディオテクニカのオープン型ヘッドホンでこれまで感じたことのない有機的でナチュラルな表現性を実感した
。

ATH-ADX7000はインピーダンスが490Ωと高く、ヘッドホンアンプの駆動力も相当高くないと鳴らない印象だ。ATH-ADX5000もヘッドホンアンプを選ぶ傾向があったが、ATH-ADX7000はそれ以上にアンプ選びにも配慮が必要となりそうだ。
2種類のイヤーパッドも付け替えて音の違いを確認。アルカンターラタイプはより低域の厚み、音像の太さを際立たせるリッチなサウンド傾向、ベルベットタイプはディティールを滑らかかつ丁寧にまとめ、丁寧なタッチで描き出す上質なサウンド傾向である。以降はベルベットタイプのイヤーパッドで試聴を進めることにした。
ATH-ADX7000レビュー(2):「情報量の多さと、細部にわたる制動性の良さにも圧倒される」
P-100 CENTENNIALとはバランスケーブルで繋ぎ、G-DIVモードでのパラレル・アンバランス(GND左右独立)を選択。オーケストラの管弦楽器の旋律は、個々のパートで厚みが感じられ、ローエンドにかけて伸び良く重心の低い安定感あるハーモニーを聴かせてくれる。
太鼓の響きの自然さ、弦楽器の艶やかさ、余韻の階調性の良さも実感するが、厚みがあっても楽器ごとの分離や粒立ちの良さも併せ持つ、情報量の多さと、細部にわたる制動性の良さにも圧倒される。
ジャズピアノは透明度が高いアタックを見せ、ハーモニクスの豊かさ、分離良く際立つ音像のクリアさも見事だ。ウッドベースやキックドラムの密度感、ボディの厚みもしっかりと再現し、輪郭も明確にまとめて滲みなく描き出す。
ボーカルの口元はキレ良く明瞭で、ボディの厚みもナチュラルに表現。クールな艶と爽やかに伸びるリヴァーブの清々しさが印象的だ。
TOTO『TAMBU』で聴ける大口径キックドラムのアタックで感じる空気の動きもリアルに捉え、楽器の前後感、スタジオの残響感も生々しく捉える
。

「クリアで奥行きある空間表現力がATH-ADX7000の魅力」
緻密かつ滑らかな音像の自然な際立ちと、ヌケ良く分解能の高い描写性がもたらすクリアで奥行きある空間表現力がATH-ADX7000の魅力であり、これまでの同社製オープン型では味わったことのない、音像そのものの有機的な厚みとキレの良さを両立した描写性は、斬新さに溢れたものであると感じた。
ドライバー作りそのものから精度の高さを求めて積み上げた完成度の高いサウンドは、高解像度で情報量の多いフラグシップならではの世界観をより高みに押し上げているが、几帳面で硬質なまとめ方とならず、ほぐれ良くしなやかで、豊潤かつ爽やかな音楽表現となっている点が好ましい。
これからのオーディオテクニカのヘッドホンが向かう理想を指し示しているかのような精緻なATH-ADX7000のサウンドは、長年の経験と、クオリティコントロールが行き届いた国内での生産体制があるからこそ実現できたものであるといえよう。
■試聴音源
〇アンドレア・バッティストーニ指揮/東京フィルハーモニー交響楽団『マーラー:交響曲第5番』~「第1楽章」
〇『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』~「届かない恋」
〇Suara「キミガタメ」11.2MHzレコーディング音源
〇丁「呼び声」
〇TOTO『TAMBU』~「Gift Of Faith」
(提供:オーディオテクニカ