昨日はKの誕生日。僕が本当に心から惹かれ追い続けた女性の一年で最も祝福すべき大切な日。彼女を知ってから初めて迎えるその記念すべき日を、まさかこんな気持ちで臨まなければならなかったことを、予想できたはずもありません。ただこの日を迎えるにあたって、一つだけ心に決めたことがあります。もう、何も残さない。これで、全てを終わらせるんだということです。
残業を終えると、もう時間は9時半。重い足取りを引きずるように約束の店へたどり着くと、いつものようにKとYが座っていました。二人が待つ店に、僕が合流する・・・今まで、何度となく繰り返されてきた光景。でも、きっとそれは今日で最後。いわれのない寂しさとともに、もう無駄なヤキモチを妬いたり、要らぬ心配もする必要はないんだという静かな安心感、そして今までの思い出と、様々な「思い」が胸の中に交錯していました。
「今度また3人で会った時に、きちんと話をするよ」・・・残酷な事実を伝えるメールの最後に、Kはそう書いていました。だから僕は、その日まで、その時間も、何も知らないフリをした。それが僕の彼女に対する最後の優しさでもあったから。
でもこの二人が付き合っている事を、僕はもう知っている・・・。二人とも、僕の気持ちを知っているはず?この二人は、どんな気持ちで、今日ここに僕を迎えているんだ?僕はなぜ、ここに来たんだ?僕はここで、何をしているんだ?そんな様々な心の葛藤を抑えるかのように、いつものようにバカ話をし、食べて、飲んで、笑って、そして大切な人の誕生日の夜は更けていったのです。
ラストオーダーの時間も終わり、店から出て行くまで、二人からは何も核心に触れる話はありませんでした。しかしいつものように二人を車で送って帰ろうという話をすると、Yの態度は今までと打って変わり頑なに僕の申し出を拒み続けます。その理由を尋ねると、ついに、彼は重い口を開きました。
「実は、僕たちもう付き合ってるんですよ」
・・・・・。
ついに語られた真実。わかってはいても、それが当人達の口から面と向かって語られるまでは知りたくはなかった、信じたくなかった、考えたくもなかった。でも、その受け入れ難い事実こそが、現実。・・・・・全てが終わったと、思った瞬間でした。
笑って終わりたかったKの大切な誕生日。でも、やっぱり僕はダメだった。受け入れがたい現実を理解するために、人々が行き交う街の真ん中で叫び、泣き、そして自分を失った。何も考えたくなかった、考えられなかった。呆然とするKとYを尻目に、僕は頭が真っ白になったまま、ただひたすらに泣き続けました。
全ては、終わった・・・。サプライズで渡そうと思っていた、Kへの誕生日プレゼント。グチャグチャの顔のままカバンから取り出し、彼女に手渡しました。
「今まで、ありがとうな」
それだけ言うのが、僕には精一杯でした。そして途方に暮れる二人に背を向け、僕はその場を去ったのです。
Kへの優しさも、想いも、思い出も、そして感謝の気持ちも、全てそこに、置いてきたつもりです。
この日、全ては終わりました。
ありがとうございました。