三菱電機が「空港や駅、商業施設でプロジェクターを使って出口やエレベーターのサイン、矢印などの“動く絵文字”を床に投影させ、道案内するシステム「てらすガイド」を4月に販売開始すると発表した。」そうです(→記事はこちら。)
初めて行く場所では、サイン表示や案内板の記載、床に表示してある印などを頼りにすればよいとはいえ、固定された表示だと見にくかったり見落としたりして道に迷ってしまうこともあったりします。三菱電機の道案内システムは、そのようなことを低減してくれそうです
。
余談ですが、下記は、以前に行った台湾の地下鉄構内の写真。初めての場所では、“固定された表示”でも助かりますが台湾の街はきれいに整備されていて、大変行動しやすかったです。BLMさんが、「“繋がるデザイン”って、今後、重要になってくるんじゃない?」と言っていました。
(Photo by BLM)
ところで、令和元年の改正意匠法2条1項は以下のような規定になっているため、上記の三菱電機のシステムにおける「矢印などの“動く絵文字”を床に投影させ」ている画像について保護対象となり得るか、ちょっとBLMさんと考えてみました。
「この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、
建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等又は
画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。・・・(省略)・・・)であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。」
昨日、BLMさんが紹介した 『~令和元年意匠法改正対応~意匠の審査基準及び審査の運用』(審査第一部意匠課意匠審査基準室)(以下「現時点公表の『審査基準・運用』という。)を手がかりに、上記条文を読み解いていきましょう。
「現時点公表の『審査基準・運用』には、「元年の意匠法改正により、新たに画像を意匠と認め、物品から離れた画像それ自体も意匠法による保護の対象としました。」とありますが、完全に、物品から離れた!と言い切れる、つまり、例えばアニメーションの映像等が保護されるのか、というとそういう訳ではない、ということになります。以下続けます。
「現時点公表の『審査基準・運用』」には、
「画像を含む意匠について意匠登録を受ける方法には、大きく以下の2通りがある。
(1)画像意匠、すなわち、物品から離れた画像自体として保護を受ける方法
(2)物品の表示部に表示された、物品の部分としての画像を含む意匠として保護を受ける方法」としています。
冒頭例に挙げた「矢印などの“動く絵文字”を床に投影させ」ている画像は上記(1)に関係しそうですので、以下(1)についてのみ、さらに見ていきます。
「(1)画像意匠として意匠登録を受けるための要件」としては、
「機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものであること」が要件となり、「両方に該当するものも意匠を構成する」そうです。「なお、当該画像を表示させるためのデータが物品にインストールされていることや表示されるかについては不問とする。」とあります。
(『』内と絵は「現時点公表の『審査基準・運用』」より引用。)
例えば、機器の操作の用に供される画像の例として以下が示されています。
■『「アイコン用画像」(クリックするとソフトウェアが立ち上がる操作ボタン)』
例えば、機器がその機能を発揮した結果として表示される画像の例として以下が示されています。
■『「時刻表示画像」(※投影された画像)』
さらに、例えば、以下のような場合も登録対象となり得るとのことです。
(~令和元年意匠法改正対応~意匠の審査基準及び審査の運用より引用)
さらに、より実務的な話としては、「現時点公表の『審査基準・運用』」によれば、
願書の【意匠に係る物品】に、「~(画像の用途)用画像」と記載する運用となるとのことです。その他、図面等の表し方が適切に行われる必要があります。
BLMさん、曰く、「確かに、「物品から離れた画像それ自体も意匠法による保護の対象としました。」とあるものの、意匠法の法目的・趣旨、他の知的財産法との関係(特に著作権法)等から保護対象を見定める必要がありそう」と。
一つの手がかりとして、KOIPとBLMとしては、画像の“用途・機能”を見定めることが重要となると考えています。
なお、「現時点公表の『審査基準・運用』」によれば、
「映画等(いわゆるコンテンツ)を表した画像は、「機器の操作の用に供される画像」又は「機器がその機能を発揮した結果として表示される画像」のいずれにも該当しません。」とされています。
「映画等(いわゆるコンテンツ)を表した画像」とは、「テレビ番組の画像、映画、ゲームソフトを作動させることにより表示されるゲームの画像、風景写真など、画像又は映像の内容自体を表現の中心として創作される画像又は映像(注)は、機器の操作の用に供される画像とも物品等の機能を発揮した結果として表示される画像とも認められず、意匠を構成しない。」とし、「(注)スマートフォンのカメラ機能等を使って撮像した対象物等もこれに準じるものとして扱う。」と説明しています。
以上を順に追っていくと、冒頭例に挙げた「矢印などの“動く絵文字”を床に投影させ」ている画像は改正意匠法の保護対象となり得ると考えます。但し、新規性、創作非容易性等の登録要件を充たすことはもちろんですが、願書の記載、出願の図面の表し方によっては、何らかの基準を満たさない可能性もあるので、個別具体的に検討することが必要です。
おまけ(by BLM)
冒頭の台湾旅行の思い出。改正意匠法で、人工的なデザイン(意匠)の保護の可能性を考えた訳ですが、正直、台湾の古い街なみ、人々の手作り感、生活感も魅力でした。ただ、台湾の魅力はそればかりでなく、日本よりもデザイン性の高い店舗もあって、古い物、手作り的なものと、現代的なもの、おしゃれなものとが融合している点でもあると思いました。
改正意匠法の保護対象も、日本の社会の真のニーズに適合し、人々の生活を豊かにするものであることが一番です。そう考えると、用途、機能(つまり、人々の生活、社会をどう豊かにするのか?)という特定が重要になる、と思います。この点はBLMが昨日書いていた点と趣旨を同じくします。
台湾の街をサイン表示や漢字等頼りに動きましたが、なにより、ここを案内してくださった方の存在が大きかった。楽しい思い出、忘れられません。改めてありがとうございました
(Photo by BLM )
by KOIP&BLM
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