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【果てしなく深い森】

『羊と鋼の森』(宮下奈都さん原作)は、若いピアノ調律師のお話し。・・

羊毛のハンマーで鋼の弦を叩いて音を鳴らす、ピアノ。その調整個所は1鍵につき20以上もあり、それが88鍵もあり、総パーツ数は6000を超えるという。

その1つ1つの部品が正確に動くよう整調し、フェルトの硬さや形を整え音量や音質が均一になるよう整音し、1鍵1鍵 音の高さを調律する。

さらに、環境(=温度・湿度・会場の造り・人の込み具合など)に合わせたり、奏者の要望に耳を傾けたりもする。・・

それが主人公の外村直樹くんの眼には、まるで果てしなく深く遠い森の中へ迷い込んだように映る。

その森と向き合い、戸惑い・オドオドする彼の姿が、ブリキには他人事と思えない。・・

それは、初めての妊娠・出産・育児でも同じなのでは?・・子育ては、ヒトを調律するようで、ピアノよりもっと深い森の中へ迷い込むようだと言ったら、大げさに聞こえるだろうか?・・

なお、ピアノの場合、基準音(=440Hzの「ラ」の音)に弦を共鳴させ調律するが、ヒトの場合はどーか?・・

たぶん「親」を基準にして真似るのだろ~が、音楽センスの無い(?)機能不全家族の場合、とんでもないコトになる。・・

そこでブリキは、代わりに「数学」や「コンピュータ」など、少し風変りなモノを基準にする。・・(←基準が変わると、リフレーミングになる(=対象の姿や価値観が変わる)ので案外役に立つ?)

今回は、ブリキなりの凸凹な基準音を鳴らし、現代の「子育て観」を調べ、調律を試み、新たな「子育て観」へアップグレードできないか考察する。

【迷走交響曲第1番・・子育ての意味】

まずは言葉にする力を振り返り子育てのゴールを確認する。・・ある3歳児の話しを『ちゃんと泣ける子に育てよう』から引用する。

ゆうたくんが、お砂場で一生懸命トンネルをつくっている・・。黙々と穴を掘ってわくわくと楽しくてたまりません。そんなふうに夢中で遊んでいるときに、少し大きなお兄さんがやってきて、強引にゆうたくんのスコップを借りてもって行ってしまったとしたら、・・

さて、あなたが親ならどーする?

  • お兄さんを叱り付け、小さい子に優しくするコトを学ばせようとする。
  • わが子が泣き騒ぐのを放っておく。
  • わが子が騒ぐのをたしなめ、ガマンするコトを学ばせようとする。
  • わが子を抱きかかえその場から離れ、上手く気をそらし何事も無かった様に接する。

たぶん①と②は周囲の目を気にして出来ない。③も結局泣き騒ぐだけ・・。そこで④を選ぶ人が多いと思う。・・が、そのとき子どもの身体の中で一体何が起きているか?

・・「不快な感情エネルギーが逆流している」だろう。

で、やがてこの子が大きくなり学校でイヤな目に遭ったとき、・・思春期になりそのエネルギーが増え抑えきれなくなったとき、一体どーなるか?

・・「キレる(=他者を傷つける)」「コモる(=自分を傷つける)」しかないだろう。

この狂った(←ブリキにはそう見える。)現代の「子育て観」を調律するため、「クルマの教習」を基準にして調べてみる。

教習中に生徒の運転が上手くいかないとき、教官が口ではなく、(砂場の④のように生徒を庇い)手を出したらどーなるか?・・

無論「教習」にならない。・・教官が一緒じゃなきゃクルマに乗れないのでは意味がない。

ここから次のコトが分かる。・・「保護(=守る、庇う)」は、守る者と守られる者が一体(←常に一緒に居る前提)でなければ機能しないと。・・また「教習の目的」は、生徒と教官が一体ではなく、生徒が1人でクルマを運転できるようになる(←そーなるように育てる)コトだと。・・(※補足1)

(ちなみに、子育てで親子一体がまともに成り立つのは「赤ちゃん」のときだけ。この「子育て=保護」のモデルは、子どもが立っちし歩んよすれば綻びだし、就学すれば破綻し機能しなくなる。・・このズレを調律しないと、やがて8050問題に辿り着くだろう。)

【迷走交響曲第2番・・失敗の意味】

ブリキが育った家では、家族全員が不機嫌でいつもピリピリしていた。そこで失敗しようものなら、非難の的となる。仮に「失敗」と口にしただけで、「そんなモノ在ると思うから失敗するんだ。無いと思わなきゃダメなんだ」と。・・そこまで極端じゃなくても、「失敗」は大抵嫌われる。

ここで、AI(=人工知能)を基準にして「失敗の意味」を調べる。・・AIに「イヌの画像」を認識させるとき、まず大量のイヌの画像(=ビッグデータ、教師信号)を与え学習させる。・・

その後、カメラで「イヌ」を撮影し「これは何?」と尋ねる。・・・すると「ワンワン」と答える。・・≪おぉ~、スゲ~ッ≫となる。

今度は、「ネコ」を撮影し「これは何?」と尋ねる。・・・すると今度も「ワンワン」と答える。・・≪んっ?≫・・

「ネコ」に限らず何を映して尋ねても「ワンワン」(または「分かりません」)と答えるだろう。・・なぜなら、このAIは「イヌ(のポジティブサンプル)」しか学習していないから。・・前回「『分かる』には、『何か』と『それ以外』を分かつ必要がある」と話した。・・AIも同じで、「イヌ」を正しく認識するには、「イヌ以外(のネガティブサンプル)」も学習する必要がある。・・

さて、この「何を見せても『ワンワン』としか答えないAI」は一体何の役に立つだろうか?・・可哀想だが何の役にも立たない。

ここから次のコトが分かる。・・「失敗」を経験してない者は、「成功」を学んでないも同然で、そのスキルは役に立たない(←たぶん生き延びづらい。)と。・・また親が見守れるうちに失敗を経験させ、その対処法(=コーピングやレジリエンス)を身に付けさせないと手遅れになる。そのために子育て(=親子が一緒に居る機会)があるのだと。

(ちなみに、泥んこ遊びも同じだろう。極端に清潔な環境で(=身近な微生物やアレルゲンに触れずに)育った子が丈夫な身体を養うのは難しい(←たぶん生きづらい。)と思う。・・子どもを失敗や汚れやバイ菌から遠ざけ保護すればいいわけじゃない。このズレを調律しないと、大切な子をひどいアレルギー症にしてしまうかもしれない。)

さて、あなたの「子育て観」にブリキの凸凹な基準音は共鳴しただろうか?・・音は合ってた?・・ズレてた?・・それとも何も響かなかった?・・

もし、少しでもあなたの子育てのヒントになれたなら、とても嬉しい。・・<つづく

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【補足1.産院選び】

産院にもいろいろな方針やスタイルがあり、産院選びに迷う人もいるだろう。

無論、出産は大変で、母体に大きな負担がかかる。・・

だから、「せめて入院中、お母さんは安静にしっかり休んで体力を養ってください。・・その間、赤ちゃんは産院のスタッフがしっかりとお世話しサポートします。」というセレブ向け(?)な産院もあるだろう。・・が、ブリキはおすすめしない。

理由は、教習所と同じ。・・退院後、お母さんが困ると思うから。・・

例えば、「出産後直ぐで身体が辛くても、自分でお世話してもらいますよ。」と言う先生の下で、(数日間でも)先輩のお母さん方や助産師さんらに囲まれ、何でも周囲に相談できるうちに試行錯誤しておいた方がよいのでは?・・

優しさと残酷さがあべこべに聴こえるような基準音を鳴らしつつ、・・みんなが出産や育児の森で、無用に迷わず楽しみながら過ごせたらいいなと願う。

【補足2.参考書籍】

今回の記事と共鳴する本。もっとちゃんと学びたい人におすすめ。