ライブチャットにハマってみる。

失恋の果てにライブチャットに依存。「パフォーマにスガリながら、立ち直ることが出来るか」がテーマです。

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2ショットの悪夢

この状況下に於いて、最も危ない部分は何か?それは、チャットの相手に対して、必要以上にのめり込んでしまうこと。特に、失恋の痛手から復帰できず、話し相手に縋(すが)るような状態のときは、危ない。

既にチャットは毎晩のことなので、DXLIVE のお気に入り機能を使い、anyan のログインと同時に、ケータイ宛メール通知が来るように設定。夜中にログイン/ログアウトを繰り返されると、やたらとメールが来る弊害は有るが、無駄な待機をせずに済む。

実は、この設定によって、anyan のログイン直後から、私が独占する状況が続くようになった。他愛の無い会話が続いていることに変わりは無いが、次第に占有している状況に慣れてくると、まるで自分の為にチャットしてくれているかの様に、勘違いしてしまう。

冷静に考えれば、こちら側は相手の顔を見て会話しているが、向こうに私の顔は見えていない。つまり、相手にとっては「文字だけの男」である。さほどの感情移入は無いであろう。しかし…

1,2週間も、しかも毎日会話をしていれば、勘違いをしてしまうのも、致し方無いだろう。弱っているときには、余計に、だ。

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2005年4月8日。その日は何故かケータイの電波状況が悪く、"anyan ログイン"のメールに遅配が起こった。その為、私が DXLIVE に入ったときは、彼女は既に「チャット中」になっていた。

まぁ、仕方がないか。挨拶だけでもしておこうか。

それが、そもそもの間違いだった。

パーティチャット状態ならば、同時参加が出来る。ログインし、ダイレクトメッセージを送ろうと…した瞬間。

「2ショットが開始されました」

なんと、目の前で2ショットモードに突入されてしまった。anyan はパーティチャット中はノンエロ。2ショットに入ったということは、エロモードに入った、ということだ。

これには参った。ここまでほぼ毎日会話し、完全ではなくとも、独占状態にあると勘違いし、しかも自分はアダルトの気配無しで会話を続けていたのだ。

それが、目の前での2ショット移行。何となく気に入っていた女性が、目の前で他の男とラブホに入っていったようなものだ(笑)

なにをチャットのパフォーマーに、マジになっているのやら。今振り返れば、子供じみた話だが、なにしろこの時はマトモな精神状況ではない。


さすがに、目の前で2ショットに入られると、キツイなぁ。
何か、急に冷めちゃった。
じゃぁね。

半ば、アテツケ的に。ある種文句とも取れるメールを anyan に送り、ファンクラブ脱会手続も取ってしまった。
(ファンクラブに入ってたのかよ!という突っ込み歓迎。月額3,000円です。(笑)ちなみに、この時はシステムエラーが発生して、脱会できませんでした。)

そして、その夜は眠ることが出来ず、天井を見つめたまま、朝を迎えた。

 

「 anyan 」

初めまして。こんばんは。
決まりの挨拶から、彼女との会話は始まった。

他愛も無い会話を交わし、初回は10分ほどでログアウト。話し上手で、笑顔もよく、少々強気な感じ。話し相手にはイイかな、という印象。しかし…ちょっと苦手な匂いがあるのが気になる。もしかして、アキバ系か…。まぁ、彼女にするわけじゃないんだし、会話が成り立てば、別によいか。

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一週間ほど空いて、二回目。イキナリ「初めまして」といわれて、少し焦心(あせり。傷心ではないw)。覚えてねぇのかよ!という感じ。しかし、直ぐに思い出してくれて、カメラ越しにゴメンナサイ(^人^;のポーズ。ちょっとカワイイか?ま、10分ほどしか会話していないのだし、そんなもんか。

やはり、他愛の無い会話。このドウでも良い会話が、実は一番欲していたものだ。とりあえず、余計なことを考えないで済む。しばらく、世話になることにしようかな、と思った。

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三回目。前夜に続いてのログイン。会話の内容は、覚えていない(笑)。この日から暫く、毎晩ログインすることになる。日によって時間は異なるが、ほぼ平均5,000円/日の出費。ちょいと厳しいか…ま、天下のマワリモノだしな(笑)

毎晩の登場にも関らず、会話が途絶えてヘンな間が出来る、ということが無い。この辺は、anyan の特性か、と思う。特に不自然なネタ振りをするわけでもなく…ま、天然なのかもしれないが。それにしても、アダルトチャットのはずなのに、エロの匂いがしない。望んでいた通りだな…

という油断が、実はチョットしたトラブルを招く。

アダルトチャットの脅威

DX LIVE !

ライブチャットの存在を知らなかった訳ではない。登録してポイントを購入すれば、時間単位で女の子と会話が出来る。向こうの映像を見ることも出来るし、人によっては音声会話もできる。有名なサイトは覗いたことも有るし、待機画像を見たこともある。

そうか。気を紛らわすには良いかもしれない。金を払って会話するのだから、向こうはビジネス、コッチは客だ。毎晩女性が居る飲み屋に行くのも面倒だし、何より、暫く「生」の人間は、信じられそうに無い。

幸い、多少の金は持っているし、チャットに耐えられるだけのキー操作は出来るし、何より、昔はNifty-Serve や ASCII-NET のチャットで、随分と遊び、楽しかった思い出がある。迷いもせず、会員登録を済ませた私は、パーティチャット状態になっている女性の部屋を覗いて…

驚いた。

なんというエロさ。いや、グロさと言っても過言ではない。日本国内とは思えない光景。大勢の人間がログインしている中で、女性が、ショーであるかのごとく、曝け出している。別の女性を覗いても、同じ光景。これでは、AVを見ているようなものだ。マトモな会話をする場所ではない。気を紛らわすというより、単なる「おかず」だ。

ノンアダルトのライブチャットも存在するが、アッチコッチに登録するのも面倒くさい。こんなに大勢の女性が居るのに、皆AV女優なのか?そう思いながら、一週間ほどの間、色々な女性の部屋を覗いて廻り、そのうちに、いつも「ショーをしていない」女性を見つけたのである。

それが「anyan」であった。

シツレン ノ イタデ

よく無事に帰宅できたものだ、と、回想する度に怖くなる。何しろ、何処をドウ通って来たのか、全く記憶が無い。ただただ、これまでの思い出が頭の中を巡り、人間に対する不信感だけが、込み上げて来た。

何故だ、何故こんな事になったのだ…
相手は一体誰なのだ。キッカケは一体何だったのだ。なぜ今まで、その気配にすら気づかなかったのだ。会う回数が減ったわけではない。会っていたときも、特に不信な事は無かった。何故突然に、告白する気になったのだろうか。

解らないことは、山のようにある。
ただ一つ、とても大切なものが、手のひらからこぼれ落ちていった。それだけは、認めざるを得ない事実として、重く圧し掛かっていた。

 

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兎に角、自分には仕事しか残っていなかった。他の何事にも意識を向けず、ただ只管(ひたすら)に仕事をした。しかし、肝心な部分で、抜けが発生する。集中できない。起床時、通勤時、昼食時、就寝時。気を抜く全ての時間帯に、彼女のことを思い出す。悲しみが込み上げる。意外と女々しいんだな、と冷静に思えるときも有れば、見知らぬ男の影に、憤慨するときもある。

しかし…

結局は自分なのだ。自分自身の問題なのだ。早く、違う相手を見つけて幸せになろう、早く吹っ切ってしまおう、そう思いながら、元々多忙な仕事を抱えて、出会いの時間を取ることさえ困難な自分の境遇が、最も腹立たしかった。

そんなときに、一通のスパムメールが、Yahoo のアドレスに届いたのだった。「逆援助交際しませんか?」くだらないアダルトサイトの勧誘メールだった。下手をすれば、リンク先をクリックするだけで、架空請求が来るシロモノだ。仕事柄、こんなものは即ゴミ箱行きなのだが、そのときは、気を紛らわす意味もあって、何となくメールを開き、リンク先を辿った。

リンク先は、有料アダルトサイトのトップページだった。恐らく、これ以上何かをクリックすれば、会員登録画面が表示されるか、会員登録したので金を払え、といったメッセージが表示されるのだろう。くだらないな、と、ページの下へスクロールしていったときに、一つのバナーが目に入った。

プロローグ ~ 最悪の年明け

今更言うまでも無いことなのだが、ライブチャットというものは、無料で楽しめるものではない。無料どころか、ヘタな風俗よりも金の掛かる遊びである。DXLIVEなどのアダルト系なら、大体200円/分、Girls On Airのようなノンアダルトでも、100円/分である。1時間遊べば、アダルト系で10,000円以上の金が掛かる。安めのキャバなら、3~4,000円で遊べる時間だ。

何故にそのような高額料金を払ってまで、ライブチャットに手を出すのか?そもそも、ライブチャットに「意図的に」ハマったのは何故か?

理由を語るには、今から3ヶ月前に遡る必要がある。
忘れもしない、2005年の1月、つまり年明けの出来事である。

 

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その出来事は、何の前触れも無く、突然にやって来た。

私には、8年という長期に渡る交際期間を経た、所謂「彼女」が存在した。
松の内も明けた1月10日、私たちは、遅めの初詣に出掛けた。彼女との初詣を、10日に設定していること自体、もう倦怠期も極まれり、といった感もあるが、1月1日の午前零時には、お互いに電話をしていることだし(混雑を避ける為、良い子は真似しないように)、交際当初から「人混みは嫌だ」という双方の意見は一致していて、別段特別な意味は無かったのである。

自宅付近に停めた車の助手席に滑り込んできた彼女は、普段とは違う、深刻な顔をしていた。いつもなら、五月蝿いくらいに話し掛けてくるのだか、その日は朝から無口であったのだ。

妙な胸騒ぎがした。

昼は何を食べようか、などという他愛の無い問いかけにも、「うん…」という気の無い返事。意識は車窓に向いているようで、目は宙を彷徨っている。目的の場所は、予想以上に混雑していて、駐車に困る状態であった。

「停める場所、無いね」という私の呟きに、左側に座っていた無言の彼女は、漸く口を開いたかと思うと、「停める必要ないよ。このままドライブに行こう」と、およそ行楽に行きたいとは思えない表情で、しかし、強い口調で言い放った。

 

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「そうか…じゃぁ、何処に行こうか」
「何処でもいい。でも高速はやめて」

その返事の意味を考えながら…否、その言葉が一体何を指すのか、解らないほど若くは無く、しかし、容易に察することが出来るほど、冷めた関係ではない。とりあえず、西へ向かって車を走らせ、腹の底に押し込めた嫌な予感が、現実のものになることに恐怖を覚えながら、運転に意識を集中した。

小一時間ほどのドライブ。しかし、弾む会話があるわけでもなく、音楽だけが鳴り響く、冷たい車内、重たい空気。いつもより、運転の疲労を過度に感じた私は、人工湖の見える駐車場に車を停め、エンジンを掛けたまま、大きな溜息をついた。

「何か話があるんだろう?」

このまま寡黙を続けたほうが、何も起こらずに済むのではないか、いっそ高速に乗り、家に帰ろうか。そう考えなくも無かったが、何かあるのなら早くすっきりしたい、と思う気持ちのほうが強く、いつまでたっても無言でいた彼女に、少し苛立ちを覚えていた。

「そうね、話…私のこと、まだ好き?」
「何を言い出すのかと思ったら…なぜそんなことを?」
「イイから」
「勿論。好きだよ。でも、へらへら笑っていられる状況じゃぁ、無いみたいだな…」

8年も付き合っていて、今更「好き」も何も…と思いつつ、「お前はドウなんだ」と返す勇気は無かった。仮にここで「あたしも好き」と言われたところで、その言葉には何の効力もないのだろう。

「黙っていようと思ったんだけど。もう限界。だから、話すわ。他にも男の人が居るの。彼氏?…じゃない、多分。だって彼氏はアナタでしょ。アナタが嫌いなんじゃないの。ただ、向こうのことも嫌いじゃない。」

一体何を言っているんだ、コイツは。
どういうことだ?二股?

「二股っていうか…結果的にはそうなるんだけど、わざとじゃない。ただ、ちょっとしたキッカケで、なんていうか、その…」
「いつからだ」
「一年くらい前」

これ以上の衝撃があろうか。
一年も前から、二股掛けられていたことに、全く気づかないとは。

「それで…俺に別れろと?」
「ううん…そういうツモリじゃない。アタシはアナタが嫌いなわけじゃない。でも、向こうも切れない。だから…任せるわ。」
「ナンナンだよそれは。俺にお前を振れ、ってことか。」
「このままの関係が続けられないのなら。」
「…お前、逆の立場ならどうするよ」
「…別れる。そんなの耐えられない」

一体、何が彼女を変えてしまったのか?こんな身勝手なことを言う人間では無かったはずだ。しかし…今起こっている事は、現実なのだ。何かが変わってしまったのであろう。キッカケは、俺かもしれないし、その相手の男かもしれない。

 

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「解ったよ。悲しいけど、やめにしよう。」
「…ごめんなさい」
「謝るぐらいなら、最初からするな。8年もの間、築いてきた関係を、捨てたんだからな。呆れて何も言えないよ。」
「ごめんなさい。」

こんなもんか。3ヶ月で結婚するヤツラも居れば、長く付き合っても別れるヤツも居る。最も信じていた相手に、一年もの間騙され続けていた、という事実を目の前に、錯乱するわけでもなく、冷静に対処したのは、自分の意地なのだろう。

「…帰ろう。」
「どこか、駅で降ろして。電車で帰るから。」

JR 相模湖駅で車を降りた彼女は、目と鼻を真っ赤に濡らしながら、逃げるように券売機を目指して走って行った。

私はと言えば、暫く放心状態のまま、車を走らせることも出来ず、日が暮れるまで、駅前のロータリーに、留まっていた。