シツレン ノ イタデ
よく無事に帰宅できたものだ、と、回想する度に怖くなる。何しろ、何処をドウ通って来たのか、全く記憶が無い。ただただ、これまでの思い出が頭の中を巡り、人間に対する不信感だけが、込み上げて来た。
何故だ、何故こんな事になったのだ…
相手は一体誰なのだ。キッカケは一体何だったのだ。なぜ今まで、その気配にすら気づかなかったのだ。会う回数が減ったわけではない。会っていたときも、特に不信な事は無かった。何故突然に、告白する気になったのだろうか。
解らないことは、山のようにある。
ただ一つ、とても大切なものが、手のひらからこぼれ落ちていった。それだけは、認めざるを得ない事実として、重く圧し掛かっていた。
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兎に角、自分には仕事しか残っていなかった。他の何事にも意識を向けず、ただ只管(ひたすら)に仕事をした。しかし、肝心な部分で、抜けが発生する。集中できない。起床時、通勤時、昼食時、就寝時。気を抜く全ての時間帯に、彼女のことを思い出す。悲しみが込み上げる。意外と女々しいんだな、と冷静に思えるときも有れば、見知らぬ男の影に、憤慨するときもある。
しかし…
結局は自分なのだ。自分自身の問題なのだ。早く、違う相手を見つけて幸せになろう、早く吹っ切ってしまおう、そう思いながら、元々多忙な仕事を抱えて、出会いの時間を取ることさえ困難な自分の境遇が、最も腹立たしかった。
そんなときに、一通のスパムメールが、Yahoo のアドレスに届いたのだった。「逆援助交際しませんか?」くだらないアダルトサイトの勧誘メールだった。下手をすれば、リンク先をクリックするだけで、架空請求が来るシロモノだ。仕事柄、こんなものは即ゴミ箱行きなのだが、そのときは、気を紛らわす意味もあって、何となくメールを開き、リンク先を辿った。
リンク先は、有料アダルトサイトのトップページだった。恐らく、これ以上何かをクリックすれば、会員登録画面が表示されるか、会員登録したので金を払え、といったメッセージが表示されるのだろう。くだらないな、と、ページの下へスクロールしていったときに、一つのバナーが目に入った。