書籍化決定。
本当にご無沙汰しております。
日々の生活にスパイスを!!
C王子です。
私の作品がうそ日記 へ何点か書籍化されるようです。
詳細は決まり次第発表しますのでしばしお待ちください。
書籍化された際にはぜひ買って読んで楽しんで頂ければ幸いです。
変な高校生
「僕がまだ小学生だった頃の話をしてあげるよ」
中学校からの帰り道で僕は親友に話し始めた。
僕が6年生にあがったばかりの頃、変な転校生がやってきたんだ。
彼はずっと転校ばかりしていたらしくてさ、またすぐ転校するから
と言って全然友達を作ろうとしなかったんだ。
でも偶然彼と隣の席になってね。
僕だけは彼と友達になったんだ。
つまり、僕には友達が沢山いるけど、彼には僕しか友達はいないって
こと。
最初は仕方なく付き合ってたんだけど、やけに仲良くなってさ。
彼すごいいい奴だったんだよね。
それから3ヵ月くらい経って、彼と一緒に帰っていた時のこと。
本当今日と同じように夕日が沈みかける頃、畦道を2人で歩いて
いたんだ。
そして彼は急に小さな声で話し始めたの。
「ねぇ、最後だから君にだけ本当のことを教えてあげるよ」
実は彼は次の日に引っ越すことが決まっていたんだ。
「僕ね、本当は宇宙人なんだ」
彼は真顔でそう言ったの。
もちろん、そんなの冗談に決まっている。
僕はそれを知っていてあえてその悪い冗談に付き合ったんだ。
「そうだったの?確かに君は普通とは違うよね。
でも証拠を見せてくれなきゃ信じられないよ」
そう言ったら彼なんて答えたと思う?
こう答えたんだ。
「わかったよ。じゃあ、今すぐ君を僕の星へ連れて行ってあげるよ」
彼はそう言って、しばらく黙って僕を見つめてきた。
「ほら。早く連れて行ってよ」
彼は小さく笑った。
気付いたら辺りはすっかり暗くなっていた。
「もう連れて行ったよ」
彼はそう言ったんだ。
「もう連れて行ったって、ここはいつもの帰り道じゃないか」
「違うんだ。今さっき一緒に僕の星へ行ったんだよ。
でも僕が今、こうして君の記憶を消したんだよ。
だから君は僕と一緒に僕の星へ行ったことは覚えていないんだよ」
僕はすっかり呆れ果ててしまった。
「そんなんじゃ証拠にはならないよ。
これじゃ君が宇宙人だなんて信じられないや」
彼はもともと変わった子だったんだけどね、そのときはあまりにも
変なことを言うから僕もちょっとむきになってしまったんだ。
「ごめん・・・じゃあ、これを証拠にして」
そう言って彼は右手を僕の前に差し出した。
そして彼は僕にこの綺麗な石をくれたってわけ。
それでね、最後に彼が言ったんだ。
「僕は明日星へ変えるんだ。
でもね、僕は帰るときにみんなの記憶から僕を消去しなければならないんだ。
だから君も僕を忘れてしまうことになるんだ。
だから・・・せめてこの石を君に持っていて欲しいんだ。
僕が君と親友だったという証に」
彼はよほど寂しかったんだろうね。
そのときの彼の目は涙で溢れていた。
「本当キザな奴だよ。
この石を渡すためにわざわざそんなつくり話をでっち上げるなんて」
僕はそう言って、その転校生がくれた綺麗な石を親友に手渡した。
「これで僕の昔話は終わりさ」
「おい。何でお前が今泣いてるんだよ」
親友が僕の顔を見てそういう。
「その石は君にあげるよ。僕が君と親友だったという証に」
そう言って僕は、彼の頭にそっと手を乗せ、僕の記憶を抹消した。
NO WAR!
20XX年。
冷戦状態にあった国同士の摩擦が一層激しくなった。
そしてあわや戦争かという所まできてしまった。
人々はまた同じ過ちを繰り返してしまうのか。
その時、1人の勇敢な青年が立ち上がった。
「NO WAR!」
その1人の青年に触発され、その国の多くの人々が立ち上がった。
「NO WAR! NO WAR!」
1人の行動がまた別の1人の行動を促し、それは大きなデモ行進へと
発展した。
その行進をメディアが追う。
そして、メディアに触れた人々がまた行進に加わった。
やがてメディアは海を渡り、平和な島国にまで伝わった。
ここまで広がった理由としては、若者に支持されたことが第一にあげられる。
若者のやり場のない力がデモ行進に向いたのだ。
「NO WAR! NO WAR!」
1人が10人に、10人が100人に・・・、そしてついにその行進
に加わる数は100万人を超えた。
それでもなお増え続ける反戦運動。
街は若者で溢れかえった。
中には建物の上に乗っかったり、物を壊したりする非常識なものも
いた。
しかし、皆口をそろえて「NO WAR!」と叫んでいる。
あるテレビ局のレポーターがカメラクルーを引き連れてやってきた。
「ただいま、この街ではデモ行進による・・・」
周りの声に負けじと、レポーターがカメラに向かって大声で話す。
「それでは、何人かにインタビューをしてみたいと思います」
そう言うとレポーターは、若者のもとへと歩み寄った。
「今回の運動に参加した動機はなんですか?」
「いや~、やっぱ戦争はだめっしょ!話し合いで何とかしなくちゃ」
サッカーのユニフォームを着た若者がガムを噛みながらそう答えた。
「みんながやってたから」
メガネをかけた大学生風の青年がフレームを上げながらそう答えた。
「え?何って楽しそうだからに決まってんじゃん」
学校をサボって参加している3人組の女子高生が答えた。
「戦争はいけないよねぇ」
質問された小学一年生だというの女の子に向かって、母親がそう答えた。
「特にすることがなかったから」
そう答えた今風のカップにレポーターがさらに質問をする。
「今回の戦争はどうして起きたか知っていますか?」
カップルはお互いの顔を見つめ合ったあと、女性の方がこう答えた。
「知らな~い」
「NO WAR! NO WAR!」
雲ひとつないよく晴れた青空のもと、人々が一致団結している。
彼らがデモ行進をしている足元には、蟻が行列を作っていた。
モラトリアム
「ネバーランドって知っているかい?」
「あ、ピーターパンのですか?」
右隣に座っていた男が反応した。
「そう。子供しかいない国」
「それがどうかしたんですか?」
今度は左隣に座っていた女が言った。
「いや。俺は今でも時々、本当にネバーランドがあればなぁ何て思う
ことがあるんだ」
「またどうして?」
向かいに座っていた男が言った。
「やっぱり大人になりたくないんだろうなぁ。歳を取るにつれていろ
んなしがらみとか葛藤とかが出てきて、やがて純粋な心を失って行く
って思うと、本当少年のままでいたいっていうか・・・」
「へぇ~、そういうこと考えるなんて意外です」
左斜め前の男が身を乗り出してきた。
「でもよく考えてごらんよ。この中で俺よりも精神年齢が上の奴なん
ていっぱいいるよな?」
「そうですか?」
右斜め前の女性が首を傾げる。
「そうだよ。俺はまだ大人になりきれていない未完成な人間だよ」
「お客様。そろそろ閉店の時間になります」
その時入り口から店員が顔を出した。
「ごちそうさまです」
「ごちっす」
「いつもすいません」
「部長!おいしかったです」
「また連れて行ってくださいね」
その場にいた全員が俺に向かって声をかけてくる。
やっぱりダメか。
俺は黙って財布を取り出した。
クロの話
僕が小学生だった頃の話しをしよう。
その日、妹が野良犬をつれて帰ってきた。
全身が真っ黒なその犬を、妹は「クロ」って読んでた。
妹は自分のご飯やおかずを残してはクロにあげていた。
餌をあげる妹は、いつも両親に「住みついちゃう止めなさい」って
怒られてた。
それでも妹はクロに餌をあげ続けてた。
僕は両親に隠れて妹と一緒にクロと遊んでいた。
でも、両親の前では僕はクロに近づかなかった。
クロが近づいてきても知らん振り。
僕は妹よりほんのちょっとだけ、世の中のことがわかっていたんだ。
でも、妹は負けなかった。
両親が餌を取り上げると妹は泣いて抵抗した。
両親がクロを叩いて追いやろうとすると妹は両親に食ってかかった。
ある日、突然クロが姿を消した。
両親がクロをどこか遠くに連れて行ってしまったのだ。
妹は大泣きした。
僕も悲しかったけど涙は出なかった。
でも、クロは数日立つと戻ってきた。
両親が何度遠くに連れて行っても必ず戻ってきた。
やがて両親も妹に根負けしてクロを黙認することになっていた。
しばらくして、クロが妊娠した。
最初は両親は、妹が餌をあげ過ぎるから太ってきたんだと言っていた。
僕もきっとそうだろうと思っていた。
でも、日に日にお腹が大きくなってきて、その事態に誰もが気付き
始めた。
そして、クロは5匹の赤ちゃんを産んだ。
どの赤ちゃんもすごく可愛かった。
ある日、僕が学校から帰ると妹が庭で泣いていた。
赤ちゃんの1匹が死んでいたんだ。
赤ちゃんは目が見えなくて、いったんクロから離れてしまうとクロの
元へ戻れなってしまうのだ。
その日は炎天下だったから、熱かったんだろうね。
きっとのどが渇いたろうね。
僕と妹は、その1匹の赤ちゃんから命というものを教わった。
僕と妹は川原にその赤ちゃんのお墓を作って埋めてあげた。
数日後、僕が学校から帰ると妹がまた泣いていた。
また赤ちゃんが死んじゃったのかと思ったけどそうじゃなかった。
クロと赤ちゃん達がいなくなっていた。
父親が保健所に連れて行ってしまったのだ。
そのときは僕も妹と一緒に泣いてしまった。
自分達の無力さが悔しかった。
それからは何日待ってもクロは戻ってこなかった。
一ヶ月が経って、妹もすっかり元気を取り戻したころ、クロが戻って
来た。
そのとき家には僕と母親だけがいた。
父親はクロだけは保健所ではなく、遠くに連れて行っただけだったのだ。
でも、いつもよりずっと遠くに連れて行ったのだと言っていた。
僕は「クロ」と叫んでクロの元へ行った。
でも、クロの様子はちょっと変だった。
クロは僕の目を一度も見なかった。
そしてしばらく庭をウロウロした後、またどこかへ行ってしまった。
母親が「きっと赤ちゃんを探しに来たんだね」と言った。
僕と母親はクロが戻って来たことを2人だけの秘密にした。
それ以来、クロは二度と戻ってくることはなかった。