NO WAR!
20XX年。
冷戦状態にあった国同士の摩擦が一層激しくなった。
そしてあわや戦争かという所まできてしまった。
人々はまた同じ過ちを繰り返してしまうのか。
その時、1人の勇敢な青年が立ち上がった。
「NO WAR!」
その1人の青年に触発され、その国の多くの人々が立ち上がった。
「NO WAR! NO WAR!」
1人の行動がまた別の1人の行動を促し、それは大きなデモ行進へと
発展した。
その行進をメディアが追う。
そして、メディアに触れた人々がまた行進に加わった。
やがてメディアは海を渡り、平和な島国にまで伝わった。
ここまで広がった理由としては、若者に支持されたことが第一にあげられる。
若者のやり場のない力がデモ行進に向いたのだ。
「NO WAR! NO WAR!」
1人が10人に、10人が100人に・・・、そしてついにその行進
に加わる数は100万人を超えた。
それでもなお増え続ける反戦運動。
街は若者で溢れかえった。
中には建物の上に乗っかったり、物を壊したりする非常識なものも
いた。
しかし、皆口をそろえて「NO WAR!」と叫んでいる。
あるテレビ局のレポーターがカメラクルーを引き連れてやってきた。
「ただいま、この街ではデモ行進による・・・」
周りの声に負けじと、レポーターがカメラに向かって大声で話す。
「それでは、何人かにインタビューをしてみたいと思います」
そう言うとレポーターは、若者のもとへと歩み寄った。
「今回の運動に参加した動機はなんですか?」
「いや~、やっぱ戦争はだめっしょ!話し合いで何とかしなくちゃ」
サッカーのユニフォームを着た若者がガムを噛みながらそう答えた。
「みんながやってたから」
メガネをかけた大学生風の青年がフレームを上げながらそう答えた。
「え?何って楽しそうだからに決まってんじゃん」
学校をサボって参加している3人組の女子高生が答えた。
「戦争はいけないよねぇ」
質問された小学一年生だというの女の子に向かって、母親がそう答えた。
「特にすることがなかったから」
そう答えた今風のカップにレポーターがさらに質問をする。
「今回の戦争はどうして起きたか知っていますか?」
カップルはお互いの顔を見つめ合ったあと、女性の方がこう答えた。
「知らな~い」
「NO WAR! NO WAR!」
雲ひとつないよく晴れた青空のもと、人々が一致団結している。
彼らがデモ行進をしている足元には、蟻が行列を作っていた。