10代のモヤモヤした複雑な葛藤を繊細に描いた傑作。揺らぎ不安定さを言葉に頼り過ぎず、丁寧に表現。学生のとき、こんないろいろ考えながら生きてたかな〜って思ったり。苦笑

 

上原実矩 (みく) × 若杉凩 (こがらし) × 森田想 (こころ)

 

居場所がない、自分がない、悔しい、嫉妬... 俳優陣の表情一つで、いろいろ想像させられ、勝手に膨らましてるからか、82分の作品でありながら、120分鑑賞したかのような厚みを感じつつ。

 

アイデンティティ、劣等感、コミュニケーション... 淺雄望監督の経験が染み込んだ脚本が、リアリティを生んでいるのかも!?

 

フライヤー観たり、予告編観たりしてイメージしてたものより、10倍面白かったというのが正直な感想。笑笑 想像以上の作品に出会えたときってホントに嬉しい。

 

壊して、壊して、創り直す。形にして完成させて次に進め!!

 

 

 

 

* 以下、ネタバレあり。

 

 

葛藤を抱えながらも社会の海へこぎ出そうとする二人の高校生、最後の夏を瑞々しく描いた青春エンターテインメント。

 

男の子が好きな女の子、女の子が好きな女の子、誰も好きになれない女の子。

 

"違ったらダメなの?"

 

"人と比べてどう思うかよりも、自分がどう思うかの方が大事だと思うけど"

 

恋バナも理解できない、家でも疎外感を感じている、嫉妬、悔しさ、フルコースで抱えまくる木崎朔子(上原実矩)、人と違うことに悩み、孤独を選択した西原光(若杉凩)、いわゆる“ふつう”ではあるけど、ちょっと攻撃的な大谷栄美(森田想)、3人のもがいてる姿が刺さる。映画としてそれぞれに役割分担があるんだろうけど、現実世界を切り取ったような自然な距離感で、映画内世界にぐっと引き込む。


人との違いに悩み、カーテンを閉めるように心を閉ざす高校生が、徐々に本音で向き合っていく。人ってそう簡単じゃないし、他人が理解できないことなんていっぱいある。ただ、少しずつ殻を破っていく姿に心動かされた。

 

 

 

 


舞台挨拶では、淺雄望監督のお人柄が滲み出る。

 

300個のタイトル候補、『その向こうへ行こう(仮)』のぼんやりタイトルから、ギリギリのタイミングで舞い降りてきた『ミューズは溺れない』

 

脚本は7年がかり。2019年8月、12日間の撮影。雨の中、学校から飛び出すシーンは、たっぷりばっさりカット。コロナ禍の影響を受け、家の解体シーンは、1年半延期...

 

自信のなさ他者への劣等感、監督自身がコミュニケーションが苦手で、アイデンティティでも悩んでいたとのこと。

 

最後の白いハトは、“平和の象徴”であり、“ノアの方舟”を連想させるものであり、外の世界への開放、ポジティブ、前向きといったメッセージがこめられているとのこと。

 

朔子の創作シーン、朔子が生み出す作業音をサンプリングして、船と一緒に音楽も組み立てられていくという劇伴のアイディア・こだわりは面白かった!!

 

次回作も計画されているようなので、淺雄望監督の作品は絶対観たい!!

 

 

 

 

 

-あらすじ-

 

高校の美術部に所属する木崎朔子は、船をスケッチしている最中に、なんやかんや巻き込まれて海に転落してしまう。その様子を見ていた同部員の西原光は溺れる朔子を題材に絵を描き、その絵がコンクールで入賞する。

 

さらに西原から「次回作のモデル」になってほしいと頼まれた朔子は、悔しさから絵の道を断念し新たな創作に挑戦しようと試行錯誤するのだが...。

 

 

 

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