木内昇さんのイメージは、とっても優しく物哀しい幕末小説を書く方。
この本は新選組と志士たちを一人ずつ主人公にして、女性とのほのかな愛のやり取りを描いた短編集でした。
(恋愛話かと思いきや、そうでもなかったな)
⚫︎『紅蘭』
詩人・梁川星巌と、その女弟子でもあり妻でもある紅蘭の物語。梁川星巌はこの話で初めてその存在を知りました。安政の大獄で幕府に目をつけられた人なのね。
歳が離れており、梁川星巌が浮世離れした根っからの詩人であるため、全然ロマンティックさを感じさせない夫婦です。妻の紅蘭は妻というよりは夫と対等に渡り合いたい才走った女性で、とっても気が強い。
ずっと夫に戦いを挑んでいるようで、可哀想な生き方だったなあ。
⚫︎『薄ら陽』
なんだか吉田稔麿って、いつもイケメン枠な気がするよ・・・
もちろん本作でもイケメン枠。そして、苦労性ですな。藩の犠牲になったっぽい悲劇の最期から、そういうキャラになるのかな。
ちなみに新選組・山崎烝との頭脳戦が面白かった。
⚫︎『呑龍』
沖田総司くんが行きますよ!
女性との恋バナどころか、総司くんと絡むのは同じ病気で診療所で知り合った婆さんなんだけど・・・
そして総司くん、なんとなくいつもイライラしていて気の毒である。微熱があって体が効かないことが焦りを生むのでしょうか。
⚫︎『春疾風』
ひとことで言うてしまえば、「美貌の人気芸子が高杉晋作のフェロモンにコロッといき、生涯にわたり恋焦がれる話」
なんでしょう・・・危険な男の魅力というか。
この芸子・君尾はしかし、気位が高いため、高杉の女になろうというよりは、どうやったら高杉に認められる特別な存在になれるのか試行錯誤します。なので書物を読んで思想的なトークもできるように勉強します。健気なのです。
けれども君尾は高杉じゃなくて、井上聞多とか品川弥二郎とかの女になります。好きじゃない男に抱かれながら、一番好きな男のことを密かに想う・・・
うわー屈折してるー(でも、女にはよくある話だ)
⚫︎『徒花』
坂本龍馬はともかく、中岡慎太郎がカッコよかったな・・・中岡さんはあまり描かれないので珍しい。
龍馬の性格がテキトーで突飛なことばっかりしていて面白かった。
⚫︎『光華』
主人公が中村半次郎ということで楽しみにしていました。京で仲良くなった女性・さとと写真を撮るエピソードです。
が・・・これじゃ男の方が身勝手すぎて女が可哀想だろう。後味の悪い一編でした。
〜おまけ〜
奥羽越列藩同盟の蒔絵シールは珍しい。
どこかに貼りたいが、勿体無くて貼れない。
(会津とペアっていうのもいい感じである)