まいまいつぶろ 御庭番耳目抄 | あだちたろうのパラノイアな本棚

あだちたろうのパラノイアな本棚

読書感想文、映画感想、日々のつぶやきなどなど。ジャンルにこだわりはありませんが、何故かスリルショックサスペンスが多め。

 

 

以前読んだ『まいまいつぶろ』の続編というか、スピンオフ作品?

この小説は心温まって、良いです。優しさ溢れるの。

 

唯一無二の有能な将軍・八代吉宗の嫡男家重は、出産時の事故から体に麻痺が残り、半身が利かず話もできず、とても将軍職は務まるまいと廃嫡を検討されてきた人でした。彼が廊下を通ったあとには尿失禁で濡れた袴を引きずった跡がつき、口さがない人に「汚いまいまいつぶろ(カタツムリ)」などと陰口をきかれてきました。

 

たった一人、家重の言葉を理解する大岡忠光という側近が現れ、家重の運命が変わります。

 

忠光は影のように家重のそばに控え、家重が発する言葉を通訳します。その内容はむしろ誰よりも思慮深く、家重は頭脳明晰であることが判明。

しかし五代綱吉時代の柳沢吉保のように、幕閣を飛び越えて政治を牛耳る側用人になりはしないかと、忠光は常に周囲の厳しい目に晒されます。

 

家重と忠光の強い絆の物語。

 

で、これはその続き。

 

連作短編で、メインとなる人物は入れ替わります。

登場が多かったのは、吉宗の御庭番として、隠密の役割を長年果たしてきた万里(=青名半四郎)です。彼はずーっと吉宗や家重、忠光に加え、老中どもの企みもカゲで聞いてきた人ですから・・・

 

罵り合いとか対立もあったけど、結局のところ、それぞれが自分の命を賭して大切に守り抜く価値観のぶつかり合いだったのね。

 

特に、老中・松平乗邑のお話がよかったな〜お気に入りです。

 

この人松平乗邑は、前巻でも家重の廃嫡を強く主張した人で、敵方という位置でした。家重には弟・宗武がいたので、宗武を次の将軍に付けようと画策するのです。

 

でも乗邑には乗邑の、深い事情があったんだよ〜〜

彼は吉宗を心から慕い、吉宗が行う数々の改革をなんとしてもやり遂げること、これが至上命題だったのね。

そして実は乗邑にも、悲しい思い出があったということで。

 

いや良かった!ほっこり。

 

しかしここに出てくる人たちったら、みんなが相手の気持ちを推しはかり先回りし、良かれと思って発言して、かえってそれが誤解を生んだりとか・・・なんだか裏の裏でやっぱり表かよ、とワケがわからなくなったよ!こんなの疲れるだろうに。

もっと腹を割ってぶっちゃけて話ができないものなのか。

 

それができないのが、将軍や老中という、責任ある立場の人々なのか。窮屈よのう。

 

今回思ったのが、やっぱり八代吉宗さま、メッチャかっこよいな!頭の中で暴れん坊将軍のOPテーマが流れたわよ。

 

そして前巻でもキレ者だった田沼意次、この人天才だな!

 

田沼意次は家重と忠光の強い味方なので、今後も活躍して欲しいけれども、彼も結局あまりに目立ちすぎてやっかみを受けて、困難な立場に立たされるんだろうな。

 

皆年老いてあの世へ旅立って、次の世代が育ってあとを引き継ぐという大いなる時間の流れが描かれており、心を打つラストになっていました。

 

 

〜おまけ〜

 

 

カッコいい上様が見たくなって、暴れん坊将軍を見てしまった。

ツッコミどころ満載で、超楽しめました。

マツケン様がすんごいハンサム。