久々のイヤミスだ!
特に、芦沢央さんの作品は個人的にだいぶ怖いと思っています・・・普通に暮らしている人間の心の奥底が、ゾッとするほど怖いのだ
短編集なので読みやすかったです。
●『ただ、運が悪かっただけ』
余命宣告されて病床にある妻と、傍らで仕事をする夫の会話。
優しい夫には拭いきれない悲しい過去があり、それを訥々と妻に語ります。夫が若い頃、クレーマー気質の顧客の相手をしていて、不注意をきっかけにクレーマーを死なせてしまったことがあるんだそうです。
このクレーマーのやり口が悪質すぎて読んでいて腹立たしい。つい、「因果応報だろ。こんな奴はこんな目にあって当然」とか思ってしまう。ホロリとくる悲しいお話で終わるのかと思いきや、そうじゃないのが芦沢さんなんだなぁ。
因果応報じゃなくて、プロバビリティの犯罪、、でもなくて、、、実は!
どんでん返しを3発くらい食らった気分。
●『埋め合わせ』
この作品はどこかのアンソロでの既読作品でした。ものすごく嫌なお話なのでよく覚えている。
自分のミスで学校のプールの水を抜いてしまった教師のお話。
確か現実でもありましたよね?この場合って、教師が自分で水道代を弁償するんですか?いくら税金とはいえ、ちょっと酷いよねえ。こんな冷たい労働環境では教師志願者が減るのも当たり前。
それはともかく、この教師はまだ誰にもバレてないので、どうやったら自分のミスを誤魔化せるか必死で知恵を絞ります。その構想がだんだん悪辣になっていくのですが、嘘をつけばつくほど、穴埋めにまた別の嘘をつき、追い詰められていくんです。「埋め合わせ」っていうタイトルがプールの水と掛け合わせて、素晴らしいと思う。
●『お蔵入り』
有名な俳優と、国民的男性アイドルグループの一人を起用して映画撮影をする監督のお話です。
さあクランクアップ!いい映画になりそうだ!と意気込んでいる監督の元に、不穏な情報が・・・
それは、主演の俳優に薬物使用疑惑があり、今まさにマトリが捜査の大詰めだということ。そんなことになったら、せっかくの映画が公開できなくなってしまう。
これも似たような話が現実にありましたね。出演者の不祥事で作品自体が闇に葬られるって、なんて勿体無い
監督は俳優を密かに訪ねて、証拠隠滅を強要するのですが、ふとしたはずみで自分が犯罪者になってしまう。
この話のオチを握るのは、実は国民的アイドルの共演者。これ、仮名を使ってるけど5人組のあのグループのあの人かな〜なんて想像しながら読んでいました。
芸能界って怖い。
が、一般人も怖いよ〜舐めんなよ〜っていう感想です。
お散歩コースの池に鴨がやってきました。