出張中の移動時間は時間外手当の対象!? | 港区汐留イタリア街の社労士の挑戦(社労士法人ビークライン)

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社会保険労務士法人ビークラインの社労士橋爪亮が、様々な困難?に立ち向かっていく奮闘記!?です。

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今日はいきなりご質問ですが、例えば東京から大阪への出張の為、

朝6時に東京(自宅)を出て、大阪9時着。打ち合わせを終えた後、

大阪を18時に出発して、東京(自宅)に21時に到着したと仮定します。

その場合に、時間外(=残業)手当はどのようになると思いますか~?

(所定労働時間 9:00~18:00 1H休憩)


結論から申しますと、時間外手当を払う必要が無い可能性が高いです。ひらめき電球


移動時間を、所定勤務時間内と時間外に分けて考えますが、

勤務時間内の移動時間であれば、労働者が提供する労務を

どのように利用するか、利用しないかは使用者の裁量に属するとの考え

(=事業主の指揮命令下にある)から、労働時間に該当するとの見解が、

有力となっております。


ですので、例えば出張による移動時間が5時間、出張先で3時間を

費やしたような場合、移動時間の5時間分を給与から控除するようなことは、

認められないものと考えられます。


ここで問題になるのは、所定労働時間外の移動の場合です。

労働時間の内容については、法律上、具体的な定めがあるわけでは

ありませんので、いろいろな説があるのですが、


出張の際の往復に要する時間は、労働者が日常出勤に費やす時間と

同一性質であると考えられる為、右所要時間は労働時間に算入されず、

したがってまた時間外労働の問題は起こり得ないと解するのが相当である。

(=出張中の移動時間は、自宅から会社までの通勤時間の延長)


日本工業検査事件・横浜地判川崎支判S49.1.26


判例では、上記のように解釈されています。

(あくまで上記は、所定勤務時間外での移動時間の解釈です)


また、行政解釈上、移動時間中に、特に具体的な業務を命じられておらず、

労働者が自由に活動できる状態(=事業主の指揮命令下にない)にあれば、

労働時間とはならないと解するのが相当と考えられているためです。


しかし、例えば①特定の用務を指示され、会社から特定の場所へ赴き、

用務処理後、再び会社へ戻り、業務に従事するような場合、

②出張の目的が物品の運搬自体であるような場合、③上司が同行、

④移動そのものが業務(=運送業)のような場合には、事業主の指揮命令下に

あると考えられ、労働時間に算入する必要が出てきます。


そうは言っても、やはり出張中の移動時間のすべてが労働時間に

算入されないとなると、労働者の負担が大きくなりますので、

一般的には距離などに応じ、日当などを支給するのが通例です。


余談ですが、出張のように、労働時間の管理が難しいような場合には、

労基法38条の2により、みなし労働時間制を適用し、就業規則に、


「出張中における勤務時間については、原則として、所定労働時間

勤務したものとみなす」


上記のような規定がなされていることが一般的です。

ですので、結果として、出張時には時間外手当が支払われないことが

通例となっております。