虎落笛 | ビバークラジオ

ビバークラジオ

心の曠野で開局する小さな放送局です。
日常の些事の中に
日々溢れ出る話題の中に
MAXIM(名言・金言・箴言・格言・処世術)の中に
映画や小説、音楽や1枚の写真の中に

この局が、暗夜を照らす一燈の役割を
少しでも果たすことが出来れば幸いです。合掌

ごきげんよう

 

自宅から歩いて1分程のところから墓地が拡がっています。

 

敷地面積は22,000坪、
東京ドーム約1.5倍の広さです。

 

この地に居を構えたのは
妹が黄泉の国に旅立ったのを期に
墓を用意しようと考えたからです。

 

叶うのであれば、歩いて行ける場所に

 

町営の墓地を手に入れるためには、この町の住人となる必要があったのです。


毎朝愛犬の散歩で必ず訪れるのですが、今では至福の時間となっています。

 

ナナカマドや山桜
白樺や箱根空木などの樹々が数千本。

季節をいち早く知らせてくれます。

 

北キツネには毎日のように出遭いますが
季節によっては、クマゲラ、鹿、時には蝦夷リスに出遭うこともあります。

(毎回掲載する写真のとおりです)

 

此処に1万基以上の墓石が建てられているのですが
その一つ一つに特徴があって、毎日観ていても飽きることがありません。

 

「○○家代々之墓」「○○家先祖代々の墓」と書かれた一般的なものから

「南無釈迦牟尼仏」「妙法蓮華経」「倶会一処」などと書かれたもの

 

「ありがとう」「安らかに眠ってください」といったメッセージや

 

「誠」「風」「愛」「慈」「心」「真」など、一文字に想いを託したもの

 

実に様々です。

 

墓の数だけ死生観があるのでしょうが、人それぞれ違って当たり前のことです。

他家の墓を干渉することも不要ですし
自身の建てた墓を評価される筋合いも全くありません。


でも近年では余りにも奔放に凝りすぎて、お坊さんが墓を前に

『これはモニュメントであり、手を合わせる対象ではありません』

とおっしゃっられたと、墓石屋さんから聞きました。

 

山田 真美さんが書かれた『死との対話 SPICE刊』によれば

インド共和国ジャンムー&カシミール州ラダックでは

墓には、死者の名前や生没年といった個人情報は一切記されないそうです。

 

『それが誰の墓であるのか 

 家族と、本当に親しい友達だけが
 知っていれば、それで十分ではありませんか。
 死んでまで名前や生没年を自己主張したところで
 そこに何の意味があるでしょう。
 そのような執着を、私たちは好まないのです』

 

 

 

墓地の入り口に近いところに、数年前に立て替えられた火葬場があります。

 

最新式のボイラーが点火したとき
多分棺が燃え始めたときだけ黒い煙が立ち昇り
その後はタービンの動作する軽い音と屋上の排気口から発せられた
熱気によって生じた陽炎が景色を揺らします。

 

でも時々 ・ ・ ・ 本当に時々 ・ ・ ・

そのタービンが異音を響かせることがあります。

 

ヒューッという虎落笛(もがりぶえ)のような音や
時には何かの擦れるような音がすることもあります。

 

気付くのに長い時間がかかりましたが

あれは機器の所為では決してなく

 

この世に想いを残して亡くなった


死んでも死に切れない魂の叫びに間違いありません。

 

毎日、人の死について考える機会を与えられている環境に感謝しています。

 

 

自分自身も、何年か後には多分この火葬場のお世話になるはずですが


そのときには、決して未練を残して叫ばないように


今、この生かされている時間を大切にして行動しなければと
ご先祖様の眠る墓石に手を合わせ、心を新たにした次第です。

 

それではまた、お会いしましょう

 

ごきげんよう

 

  

北キツネの福ちゃんです。彼との付き合いも今年で4年が経ちました。

 

妻帯者です。

 

今季の真冬の朝のことです。

 

玄関先の雪の上に、彼の足跡と一緒に半分焦げたミカンが1つ置かれておりました。

 

しばらく其の意味を考えてしまいました。

 

『火の元には十分気を付けるんだよ』

 

どんなに考えても、そうとしか思えないのです。