<馬車道の不思議少年・翔:第2話>3
赤ちゃんをのせたバギーが車道に飛び出そうとしたその時、
なぜか間一髪、歩道の端でピタリと停止した。
よく見ると6~7歳の少年が車道側からバギーをおさえていた。
少年は、かけよってきた婦人にバギーを手渡すと、
10mほど先を歩く先ほどぶつかった男の方に目を向けた。
明らかに男の背中にするどい視線を送っているように見えた。
すると男の手からスマホが空中に飛び出し、
そのままレンガ敷きの歩道に思いきり叩きつけられた。
男はあわてて壊れたスマホを拾い上げ、呆然としていた。
男がうろたえる様子をお酒の信濃屋の前から見ていた女は、
再び婦人とバギーの方に目をやると、
先ほど大活躍した少年はあっという間に姿を消していた。
目の前で繰り広げられた不思議な光景がのみ込めずに、
キョロキョロとしていた時、女のスマホの呼び出し音が鳴った。
待ち合わせをしていた叔母さんからだった。
「今どこにいるの?」
「え、信濃屋の前にいますよ。」
「おかしいね、私も信濃屋の前にいるけど。」
二人はすぐに気がついた。
叔母さんがいるのは太田町にある洋服の信濃屋、
女がいるのは住吉町にあるお酒の信濃屋だった。
別々の場所で待ち続けていたことがわかり、
女はすぐに叔母さんのいる信濃屋にかけつけた。
(記 原田修二)
■次回は1/12<馬車道の不思議少年・翔:第2話>4