「神々のロボット」・緑園都市伝説
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第九章 「人を超えた技術」

日本ファンタジーノベル大賞2025応募作品「神々のロボット」

 第九章 「人を超えた技術」

 

 空のグループは、チーム別の討議を実施した後に、ほぼ毎回全体討議を実施しました。何度も討議を繰り返すうちに、自分たちの目指す飛翔ロボットの概要が少しずつ見え始めました。この日、高橋リーダーは全員を集めて本格的な中間報告を行いました。
「私たちは本当に幸運です。このグループには、才能溢れる専門人材が揃っています。人と同じように考え行動し、社会課題の解決に貢献するロボット、そんな素晴らしいロボット事業の提案が確実に出来そうです」
高橋の言葉に、多くのメンバーが奮い立っているのがわかりました。スクリーンに迫力のあるロボットのスケッチが映し出されました。
「これが、私たちが討議を重ねてまとめつつある飛翔ロボットの正面スケッチと側面スケッチです。身長目標は170センチ以下、体重は100キロ以下を目指します。このロボットの特徴は、これまでの人型ロボットと異なり、人間と同じように骨があり筋肉や神経網があり人工皮膚で覆われています。頭の中に脳があり、目、耳、鼻、平衡センサーから得られる情報を解析して体全体に動作指令を出します。意思伝達を果たす役割として口もあります。最大の特徴は飛翔機能を持つことです。この機能については後ほど説明をいただきます。このロボットは、人の代わりになるだけでなく、人が出来ないことをするロボット、人が働けない場所で働くことが出来るロボットです。このロボットのコードネームを、とりあえずスーパーオーバフ01、SOー01、ソーゼロワンと呼ぶことを提案いたします。もっといい名があるということでしたらぜひ提案願います」
高橋に続いて機能別の説明に移り、まず土屋が人工知能についての提案を始めました。
「土屋です。人工知能についての話をさせていただきます。人工知能のOSは、現在オーバフが開発を進めているSXOSをさらに高度化したものを使います。ロボット開発時は、クラウドサーバー上にOSと知能プログラムを載せ、各部門が同時開発を進めて、完成後はSOー01の脳内に移植することになります。脳内には、3オングストロームの最先端プロセスによるプロセッサーチップ100個を搭載し、スパコン環境を実現します。チップの開発もさることながら、いかに熱を出さない構成を実現出来るか、発生した熱をいかに放熱させるか、こうした点が挑戦のポイントとなります」
次に魚住より動作機能、動作制御の説明、と続きました。
「SOー01が体を支え、安定的な動作をする上で重要な役割を果たす骨は、関節部分も含めてマグネシウム合金とチタン合金を組み合わせます。軽さ優先か、強度優先かで使い分けることになります。筋肉は高分子樹脂の採用方向で進めています。最終的な確定はまだですが、研究はかなり進んでおりいい材料が見つかりそうです。SOー01の神経は、人間の神経とほぼ同じ機能を持ちます。これはカーボンナノチューブが現状では最有力です。人工皮膚については進化が激しく、現段階では決めかねています。人間の血管に当たるエネルギー供給システムについては、飛翔機能チームの担当となります」
最後に、私が飛翔機能について説明しました。
「このグループでは空を選択していることから、SOー01を飛翔させる、浮かせる、ということは必須の条件となります。浮かせるということは、重力に逆らうわけですから、逆重力や反重力といった技術があれば最適ということになります。ただ残念ながら事業提案までの日数は少なく、確かなものとして提案することはまず困難です。最初の挨拶の時に堀河さんが述べられたように、イオンエンジンの採用を提案いたします。ただし、現在SOー01に求められている推進力を実現しようとしますと、ロボット本体ほどの大きさとなり、これが現状での大きな課題です。やむを得ない場合、ドローンの技術を使えば容易に実現します。ただそれでは魅力がない。悩ましい所です。エネルギー供給システムにつきましては、現在選択中の段階で次回発表させていただきます」
3人の話が終わってから、高橋は補足の形でまとめました。
「事業提案は、私の感覚では6割程度まとまりつつあります。ロボット本体の構成や動作機能については方向性が見えています。ただ、人工知能と飛翔機能、それに今日は発表のなかった搭載バッテリーについては、まだ目途が立っていません。この3点についてブレークスルーすることが後半戦の課題となります」
中間報告を終えてから、高橋はチーム編成の修正について発表しました。ポイントは2つ、各チームのミッションを明確にしたことと、各チームのメンバーに若干の入れ替えをしたことでした。彼女は、チームごとにメンバー名をスクリーン上に表示し、順次説明を始めました。
「まず動作機能チームの10名です。ミッションは、SOー01の動作機能と動作制御について、センサーとアクチュエータとのリンク、材料選択、強度解析を含めて仕上げをお願いします。リーダーは魚住和雄さん。魚住さん以外の9人は、全員がサブリーダーでお願いします。次は人工知能チームの10名です。ミッションは、人工知能の構造の明確化と開発時に重要な役割を果たすクラウドシステムの詳細設計をお願いします。新OSの構成やスパコン環境の仕上げもお願いします。リーダーは土屋啓一さん、9名は全員サブリーダーでお願いします。続いて飛翔機能チームの10名です。ミッションは、何といっても飛翔機能についてブレークスルーしていただくことが、このグループの生命線となります。ミッションが重くなりますが、このチームには搭載バッテリーについても担当していただきます。リーダーは入江晃さん、9名はサブリーダーをお願いします。最後は事業提案チームの10名です。ミッションはグループ全体のまとめとインパクトのある事業提案の作成です。リーダーは私が兼務し、9名はサブリーダーをお願いします。以上が新しい構成で、今日からスタートをお願いします」
高橋が全員の前で深々と頭を下げ、演壇を降りようとした時、飛翔機能チームの堀河が手を上げ発言を求めました。
「先ほど人工知能と飛翔機能、それに搭載バッテリーはブレークスルーが必要と言われました。それはその通りだと思いますし、皆さんも同じ思いだと思います。よく考えてみますと、入江さんの会われたロボットGAIは、この3つの機能を多分かなり高度なレベルで保有しています。飛翔機能も、判断力も、コンパクトさも、私たちが目指している理想的なロボットのように思えます。彼らに教えを乞うというのは、選択肢として許されないのでしょうか」
高橋は、少し考えこんでから私に見解を求めました。
「ロボットGAIの技術は、確かに堀河さんが言われる通り見事なものです。ただ、その技術に憧れても、教えを乞うということを考えたことはありません。遠い世界から来られた異次元の技術と受け止めていたからだと思います。堀河さんに言われて、はっとしましたが、何も手を打たない、というのも違うような気がしてきました」
「レクチャーをお願いすることは難しいですか」
「唐突にお願いしても断られることは見えています。彼らに何のメリットもないことは、はっきりしています」
「ともかくもお願いしてはどうですか」
「彼らをその気にさせる何かがあればいいのですが」
私と堀河とのやり取りは噛み合わず、結論は出ませんでした。

 空のグループが、オーバフ保土ヶ谷工場の社員食堂で昼食をとっている時のことでした。食堂の壁に設置された大型テレビが、臨時ニュースを流しました。
「我が国に不法侵入し横浜に着陸した国籍不明機に対しまして、政府は、攻撃に入る旨の国会承認を得たと発表しました。早ければ3日後にも、配置している装甲車などにより攻撃態勢に入る模様です。近隣の住民への避難誘導につきましては・・・」
高橋が思わず呟きました。
「万事休す。何でこうなる。もう打つ手がない」
しかし私は、この臨時ニュースを見て、とんでもないことを思いつきました。
「高橋さん、そんなことはない。これはチャンスかもしれない」
「チャンス?どうして?」
「ロボット技術の教えを乞うために飛翔体の中に入ることが出来れば、見方を変えると、私たちが人質となって政府の攻撃を防ぐことが出来る」
「人質になる?」
「どうですか」
「なるほど、面白いかも」
「賛成してもらえますか」
「さて、どうしますか」
「問題はいくつかありますが、大きな点は、GAIが了解したとしても、飛翔体に入るまでは秘密で進めなければ阻止され、中に入れば公表しないと人質の意味がない」
「会社として対外的な発表が出来ないか人事部長と交渉してみます。だめなら私たち自身で情報を拡散させればいい」
「私は今から緑園に戻って技術レクチャーをGAIと交渉してみます。こちらは、1週間、3人ということでどうですか」
「確かにそれぐらいが限界かもしれない」
「私がGAIと交渉している間、会社との交渉と3人の選定と説得をお願いします。早ければ明日の夜からでも動く必要があります」
「そもそもGAIが受けてくれるかどうか」
「そこが最大のポイントです」
「入江さんが交渉に入ったことをメンバーに伝えておきます」
「結論は、今夜にもスマホに連絡します」
「朗報を期待しています」
高橋以外のメンバーが唖然とする中、私は緑園都市の自宅へと急ぎました。



 

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「神々のロボット」 日本ファンタジーノベル大賞2025応募作品

 

■第1章 空の選択 ■第2章 緑園都市 ■第3章 空しい展望 ■第4章 飛翔体着陸 ■第5章 大騒ぎの街 ■第6章 緊急対策本部 ■第7章 手探りの交渉 ■第8章 攻撃方針の確認 ■第9章 人を超えた技術 ■第10章 新たな使命 ■第11章 飛翔体の中へ ■第12章 予期せぬ交代 ■第13章 3つの国難 ■第14章 無敵の飛翔体 ■第15章 周囲の厳しい目 ■第16章 飛翔ロボットGAI ■第17章 社内の葛藤 ■第18章 記者クラブでの吐露 ■第19章 神々のロボット ■第20章 グループ討議の発表 ■第21章 全員の大きな拍手 ■第22章 特別プロジェクト発足 ■第23章 コラボ交渉開始 ■第24章 政府支援交渉開始 ■第25章 コラボ交渉に光明 ■第26章 政府支援への布石 ■第27章 政府支援の実現 ■第28章 新会社創立総会 ■第29章 神々のロボット開発 ■第30章 量産体制への苦闘 ■第31章 生産開始後の葛藤 ■第32章 北の海の艦隊 ■第33章 南の海の巨大地震 ■第34章 ロボットへの評価 ■第35章 巴重工業のプライド ■第36章 GAIの驚きの助言 ■第37章 再び緑園都市へ ■第38章 巴重工業の反省 ■第39章 新体制の破竹の進撃 ■第40章 新しい仲間 ■第41章 繰り返す葛藤 ■第42章 そして新文明開化 ■第43章 緑園都市の新店舗 ■第44章 本当のこと

 

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