<馬車道の不思議少年・翔:第2話>4
女は15分遅れで叔母さんに会った。
「ごめんなさい。」
「場所が違うなんて驚いた。」
叔母さんは女の勘違いを責めようとはしなかった。
「叔母さん、さっき大変なものを見ちゃった。
もう少しで大事件になるところ。」
「今日は、この前のビルの瀬里奈を予約しているので、
その話はあとでゆっくり。」
叔母さんは女を日本興亜ビル9階に案内した。
この店はステーキドームとも呼ばれ、
客の目の前の鉄板で良質のステーキを焼いてくれる。
叔母さんはヒレのメディアムレアを注文し、
女はサーロインのメディアムを注文した。
「バギーに赤ちゃんを乗せたお母さんと、
スマホに夢中の男が激突して、
バギーが車道に飛び出しそうになったの。」
「ヘェー、それで。」
「突然小さい男の子が現れてバギーを止め、
そのまま立ち去ろうとする男の後ろ姿をにらみ、
スマホを手から離して地面に叩きつけた。
おかしな話だけど、私にはそう見えた。」
女は直前に起こった出来事を一気に説明した。
どうせ叔母さんは信じてくれないだろうと思っていたので
叔母さんの冷静な反応は女には意外だった。
「その男の子はどんな感じだった。」
「青いポロシャツとチェックのズボンで
6~7歳くらいだけど動きは俊敏だった。」
「ふーん、6~7歳の男の子。」
女はなおも不思議な出来事を話し続けたが、
叔母さんが否定も反論もしないために、
ほどなくその話は終わり、今度は叔母さんからの話に移った。
(記 原田修二)
■次回は1/19 <馬車道の不思議少年・翔:第2話>5