日本とドイツ 二つの全体主義
仲正 昌樹
日本とドイツ 二つの全体主義 「戦前思想」を書く
マメに書店の新書棚はチェックしているのだが、これはすっかり、前に読んだ『日本とドイツ 二つの戦後思想』と混同していた。前作が「戦後」なので、こちらは「戦前」という位置づけらしいのだが、やはり前作同様、テキスト的手法をとっているので、入門者には予習を、既習者には復習と有用な作品である。もちろん私は前者に属するのだが、著者が「天皇制」の存在を、日本とドイツの「戦前思想」を分け隔てる座標軸としていることは分かった。その意味ではドイツの方より先進的であったということは言えるだが、西欧の翻訳から出発した日本の近代思想が、ギリシャやローマといった骨格を持った西欧思想に対し、日本はその骨格を「天皇」に求めた様な気がしないでもない。実はドイツでも似た様な事情だったらしく、当時西欧を席巻していたフランス文明に対抗して、ドイツ観念論が発展したのだという。その後の両国が辿った道も似て非なるものなのではあるが、ナチスのフランス占領と、日本の大陸「侵略戦争」を同じ文脈で捉えるとしたら、その辺に理由を求められるかもしれない。フランスも中国も「野蛮」な国に占領されてしまった遺恨から、戦後、自らの正当性の伝説を創設する一方、「敵」の再野蛮化に取り組んできたのだが、その点、ドイツのナチスに対する議論も自由がないという点では、天皇タブーと同質の問題であろう。最近の「核」を巡る一連の議論にも似た様なものを感じるが、これらが他国の干渉から離れ、自らが作り上げた枷になってしまっていることは今一度考え直す必要があろう。
★★