世界一ぜいたくな子育て
長坂 道子
世界一ぜいたくな子育て 欲張り世代の各国「母親」事情
副題に「欲張り世代の各国母親事情」とある。著者は在スイスのエッセイストということだが、日本では「ヴァンサンカン」の編集をしていたらしい。この出産、育児というテーマは、男性が関与すべきという議論が延々と続いている状況である一方、「母性」という殻に収まる部分では男性を排除した論議もあるので、複雑なところなのだが、前者が「先進性」の名の下に「ヨーロッパ」をお手本としたフェミニスト的議論だとすると、後者は「伝統」の名の下に「アジア」を代表とする文化人類学的議論ということになるのだろうか。男女平等を金科玉条とする人たちにとって、「出産」という不平等は避けられない以上、「育児」で取り返すべきというのは自然な事かと思うが、このヨーロッパ各国の事情を見てみても、どうもそう一筋縄ではいかない様だ。そのひとつに「授乳」という問題があるが、母乳か粉ミルクかということが、かくも重大な論議に発展したのも、そうした不平等性と関係があるらしい、母乳を雌牛的と拒否する文化があるとは大きな発見だったが、その一方で母乳信仰も大きな影響力を保っているらしい。おそらく話題になった「オニババ化する女たち」の関連で企画されたものかと思うが、「オニババ」にしてもこの本にしても、男性と女性では全く受け止め方が違うものになるのであろう。
★★
ドリアン
塚谷 裕一
カラー版 ドリアン―果物の王
中公新書のカラー版、植物編。タイトル通り、丸ごと一冊ドリアンの話。著者は植物学の先生なので、一応、学問的な講釈もあるのだが、このお方、実は大変なドリキチらしい。ということで、ドリアンは臭くないという主張から始まり、素人には難しいドリアンの選び方も指南してくれるし、ドリアンの品種から、歴史から、何でも教えてくれるので、かなり面白く読めた。持論として戦前の南洋研究を評価しているらしく、バナナやマンゴの高級果物説も、戦後の伝説に過ぎないと一蹴する。そういったことと関係しているかどうか分からぬが、日本人のドリアンに対する偏見も何とか是正したいという意思が痛いほど伝わってくる。私はむしろ偏見というか未知なのではないかという気がするのだが、ドリアンが好きと公言する日本人は著者の様な真性の人は少なく、所謂、なんちゃって「現地化」の人たちに多いのではないかとも睨んでいる。私自身のドリアン初体験はスリランカであったということもあって、よく言う「チーズの腐った匂い」ではなく、「ガム」という印象だったのだが、味云々より、強烈なドリアン体験は、やはりマレーシアであった。ある日ペナンで知り合った華人グループにドライブに誘われ、どんどん山道を上っていくと、何もない山中にいきなりドリアン屋台が数件並ぶところに出た。それまで陽気に喋っていた連中は車から降りると、戦闘モードに入り、物凄く真剣な顔付きでブツを吟味。それが約一時間続き、ただならぬ気配に不安を感じたところで、おそろしく大量のブツ(トランク一杯分)を購入。出発しても終始無言で、猛スピードで山道を下る。何か危険な匂いを感じたが、急カーブで林道に入ると、いきなり秘密アジトみたいな小屋に到着。そこに大量のドリアンを運び入れると、驚愕の饗宴が始まったのだ。(続く)
★★