ラスムッセンの悲劇!第四部【本当の完結編】ついに決着
【ラスムッセンの悲劇~前回よりの続き、今回は本当に完結編】
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●シーン7 東京都世田谷区のある激坂区間~通称「ラルプデュエズ峠」
彼は必死でペダルをこぎ続けた。あまりスムーズでないダンシングが多少非効率であろうが、彼のマウンテンバイク、Giant Rock4500はまだ加速を続け、「世田谷の電動ラスムッセン」が乗る電動ママチャリを追いつめていた。
山頂まであと30メートルほど。2台の距離はほんの僅か。
だが、彼の太ももは限界の悲鳴を上げていた。それもそのはず、いつもは時速12~13km/hしか出ない厳しい坂道を今日はなんと20km/hを超えるスピードで登り続けているのだ。こんな凄いデッドヒートになるなど、さすがに予想もしなかった。いくら毎日の通勤で鍛え上げられた脚力とは言え、まだ再開後の自転車歴1年にも満たず、また決して若いと呼べる年齢でもない彼がこれ以上このペースで登り続けられる筈もなかった。
マウンテンバイク、Giant Rock4500は急速にその勢いを失いはじめた。
「だ、だめだ…、あそこまで追いつめたのに…、またゼロから鍛え直しだ…ち、ちく…」
だが、まだ勝負は終わっていなかった。
勝利を目前にした「世田谷の電動ラスムッセン」が乗るオレンジ色の電動アシスト自転車が、急激に失速し始めたのだ。
「!」
彼は残されたすべての気力を振り絞った。ゴール前のマキュアンやペタッキでも決して見せたことのないほどの形相を見せながら、スプリント勝負に賭けたのだ。
最後は半車身の差も付いていなかった。あるいは自転車を“放り投げた”その分だけだったかもしれない。
かろうじてGiant Rock4500が、オレンジ色の電動自転車を制した形となった。僅差だった。
彼は最後にちらっと「電動ラスムッセン」を見た。一瞬だけ目が合った。
女性サイクリストの「電動ラスムッセン」は、目を大きく見開き、混乱した表情をしていた。恐怖の表情と取れないこともない。彼はその表情の本当の意味は読み切れなかったが、どこか違和感のある表情だと思った。何かいけないことをしてしまったような罪悪感に一瞬襲われた。
だが、勝ったのだ。目標を達成したのだ。次の攻略目標はロードバイクだ。その次の瞬間、彼の目はもはや「電動ラスムッセン」を見てはいなかった。
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●シーン8 東京都世田谷区のある激坂区間~通称「ラルプデュエズ峠」
彼女の電動自転車に速度計は付いていない。だから彼女は今何キロで走っているかを知らなかった。もっとも、たとえそれがわかったとしても、彼女にそれを気にする余裕はなかったが…。
とにかく、速く走るしかない。速くこの先に行くしかない。逃げるしかない…。
後ろのマウンテンバイクは執拗に追いかけてくる。ピタリと付いて離れない。明らかな敵意を感じる。あのストーカーかもしれない。逃げなければ…。
その切迫した状況が、あの重い電動自転車をしてこの激坂を時速20km以上で走らせているのだ。
だが、限界は突然やってきた。
電動自転車は時速15km程度を超えると徐々に電動アシスト量が減ってくる。20km/hを超えるとペダルがかなり重くなり、そして24km/hを超えると電動アシスト量がゼロになってしまうのだ。そうなるとただ単に重量20kgの重いだけの普通の自転車になってしまう。
そう、彼女はスピードを出し過ぎたのだ。恐怖のあまり、逃げ足が速過ぎたのだ。電動アシスト量が限りなくゼロに近づいたそのとき、もう彼女には自力で速度を維持するための“足”が残っていなかった。
彼女は一瞬天を仰いだ。助けを求めたかった。悲鳴を上げたい気分だった。
「も、もう逃げ切れない…」
その恐怖がまさに頂点に達しようか、というとき、そのマウンテンバイクは右横をスーッと追い越して行った。
「え…」
何が起きたのかよく理解できないうちに、そのマウンテンバイクは先へと走り去って行った。まるで彼女になど興味がないかのように…。
「急いでいただけなのかもしれない…、とにかく無事で良かった。」
まだ顔はひきつったままだったが、恐怖から解放された安堵感もある。杞憂だったのだ。まだ心臓の高鳴りは消えないが、なんとか呼吸を整えなければ…今日はこれから仕事だから。
「ちょっと汗かいちゃったかしら、今日もがんばらなくちゃ。」
額の汗を拭うと、彼女はスーパーへと自転車をこぎはじめた。
【ラスムッセンの悲劇!終わり】
※このストーリーはあくまで事実にもとづいて書かれたものです。ですが、一部の表現および状況設定に若干の妄想もしくは創作が含まれている可能性が高いです。ご注意ください。
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最後まで読んでいただけた方、どうもありがとうございました。
何気なく書きはじめたらとまらなくなってしまって…。
なぜラスムッセンだったかというと、私的に結構感情移入してしまったからなんですね。
2007年ツール・ド・フランスを見ていて、あのマイヨジョーヌ(黄色いジャージ)の微妙に似合ってない感じ、とか、
なんだか微妙にビビッてるような雰囲気とか、他人とは思えず、ちょっと親しみを覚えてしまった、というわけです。
だから、私としても「さあ、応援するか」と思った矢先のチーム解雇劇だったわけで、
多分世田谷区内で一番ショックを受けたのは私なのではないか…という感じだったんです。実は。
次回はロードバイクとクロスバイクの比較!「どっちが速い?どれだけ速い?」の予定
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