自転車で糖尿病を克服した! -115ページ目

いよいよ最難関へ…【ロードバイク走行会 その4】

それはもう十数年も前のことだろうか。

場所がどこだったか、誰と一緒だったかさえも覚えていない。箱根だったかもしれないし、那須高原だったかもしれない。

だが確かにそれは厳しい峠の山頂付近。

B夫はクルマに乗って快適に坂を登っていた。B夫の乗用車にはもちろんエンジンが装備されている(あたりまえだ)。

だから上り坂にさしかかり、エンジンがどんなに苦しい唸り声を上げようと、B夫が疲れることは決してないし、当然のことながら彼の心拍数が上がることもない。あくまでドライバーはエアコンの効いた室内でラクチンだ

ふと気がつくと、前方に自転車が走っている。ここは厳しい峠の頂上付近だ。内燃機関を装備しない自転車が来るところではない……少なくともB夫はそんな認識を持っていた、その当時は。

案の定、その自転車乗りは苦しそうに見える。スピードだって大して出ているようには見えない。いくらドロップハンドル装備のスポーツタイプの自転車といえども、こんな場所で出せる速度はたかが知れている。

これを“苦行”と呼ばずして何と呼ぶ。そう感じたB夫は同乗者とこんな会話を交わした。

「なんでこんなところまで自転車で来るんだろうね…。不思議だよね、こういう人たちって…。一体何が悲しくて…。」

同乗者も、B夫のこの“一般的な”意見に異論などあろうはずがない。当然その意見に頷くと、こんなことまで付け加えた。

「でも世の中変わった人いるから。何かが楽しいんじゃない。」

その会話はそれで打ち切りだ。乗用車と峠を登る自転車とじゃ速度差がありすぎる。あっという間にB夫の乗る乗用車は孤独に奮闘する自転車を追い抜くと、先へと進む。バックミラーからも自転車は見えなくなる。

峠で苦しむ自転車などどうでもいい。興味の対象外だ。B夫と同乗者の会話はもうすでに他の話題へと移っていた…。

B夫はもう“大昔”にもなるこんなシーンをふと思い出していた

今、B夫はまさにその「世の中の変わった人」になっていることに今さら気付いた。「何が悲しくて…、いや何かが楽しくて」、一般人からしたら明らかに“苦行”と呼べることをやっている……そんな昔の会話を思い出し、そして今日の自分自身を客観視するとちょっとおかしくなった。

ロードバイクを走らせながら、まわりの状況とは全く関連のない意味不明の笑いを浮かべたB夫に気付いた人は、おそらくいないだろうが、人間、変われば変わるものだ。B夫はあらためてそう思った。

B夫がはじめて参加したロードバイク走行会は、ルートも後半に差し掛かる。

気持ちよくサイクリングをするだけならもっとフラットな道を選べばいいはずなのに、このロードバイク軍団が設定したコースには坂道が明らかに多い。苦しい上り坂もふんだんにある。

それを(自分も含めて)この人たちは喜んで登っている!一部の人などは楽しそうですらある!

良く言えば、空を飛べることが嬉しくてたまらない小鳥たちのようなものかもしれないし、ちょっと変な解釈をすれば、自分をいじめることに快感を見い出す変わった人たち…という風に思えなくもない。

だが、そんなことはもはやどうでもいい。少なくともB夫は1年前と比べれば、比べ物にならないくらいハイスピードで走れるようになったし、坂道だってこんなに登れるようになった。そのことは本当に嬉しい(!)…アップダウンの続くコースはそれほど楽なものではないが、B夫はそんな思いを巡らせる余裕を持ちながら、他のカメやうさぎたちと共にピナレロ君を走らせていた。(後半は「カメ」「うさぎ」といったグループ分けはないのだ。)

だが、そんな順調な走行もそう長くは続かなかった。

この地点までで、今日1日のB夫の走行距離はもうすでに80km以上。そろそろ疲れも見えてくる。

いや、疲れはまだいい。B夫にとっての80kmはまだまだがんばれる距離だ。多少気合いを入れればなんとかなる。

ここからの後半、B夫にとって一番の問題となるのは、腰の痛み…そう腰痛のことだった。

B夫はクロスバイクでは腰の痛みはあまり感じたことはない。だが「ジャイアントホープ」より前傾姿勢が明らかに2段階くらいキツくなるロードバイクで、長距離を乗ったときには、B夫は腰が痛くなる(!)という問題を抱えていたのだ!

40~50キロくらいまでの走行距離では全く問題ない。腰は痛くならない。

だが、3~4年ほど前に彼は「ギックリ腰」で数日間歩けなくなってしまったことがある。そのことからもわかるように、B夫は腰にちょっとした弱点があるのだ。これがロードバイクに乗ることでぶり返してしまったかのように、長距離を走ると同種の痛みがB夫の腰を襲うのだ!

だんだん腰のあたりがマズい感じになってきた。B夫はちょっとした驚きと、不安が的中した落胆を感じながら、前方を走る「カメ」に付いていく。

「ち、ちょっと休みたいな…どうしよ。」

B夫は自転車を走らせながら上体の“伸び”をするが、あまり効果はないようだ。やらないよりは多少マシ…程度の効果しかない。

でも今日の走行会は成り行き上、集団から遅れをとる訳にはいかない事情がある。

なにしろリュックが人質に取られている。この先どんなコースを通ってどこまで一緒に走るのかもよくわからない。初参加だから知らないことだらけだ。

それに気持ち的にもちぎられたくない…。ピナレロ乗りとしてのプライドもある…。

このまま我慢して付いていくしかない!

B夫は先ほどまでの“思い出し笑い”のゆるんだ表情とは打って変わって、厳しい表情となりながらも、腰痛をがまんして走る。

ちょっとした下りになる。

前を走る軽量級のカメ・サイクリストは空気抵抗を減らすべく極端な前傾姿勢で坂を下る。

だが、B夫はそんな厳しい前傾姿勢はもはやとれない。むしろ逆にペダルの上に立ち上がり、腰をなるべく伸ばしながら下り坂を下っていく。

上半身を完全に垂直に起こしたB夫の方がはるかに空気抵抗は大きくなる。前面投影面積で言えば倍近いかもしれない。だが不思議なことに、前方の軽量級サイクリストとB夫との距離は離れていかない。いや、むしろちょっとづつ距離が近づいてくる。

「これって、体重の影響?」

だとしたら重量級であることも悪い事ばかりじゃない…とB夫は思ったが、すぐに腰の痛みに意識が戻る。

やはりキツいな。最後まで行けるかな…。

重量級のメリットを享受しながら、腰を伸ばして多少のラクができるのもほんの僅かな距離だけだ。やがて道がフラットになると、ペダルを回しながら走る通常走行となる。B夫はハンドルの手前側を握り、なるべく腰に負担のかからないポジションを取りながら走る。

だが、痛みは取れない。先ほどまでの軽快な走りとは打って変わって、本当にだんだん“苦行”になってきた。

「どこの誰だか知らないが、何が悲しくて…こんな苦しいことをやってるんだ!」

B夫は自分で自分に十数年前の台詞を投げかけた。

「それはまさに、この自分だ! モノ好きはこのオレだ! だが、今日はここでリタイアする訳にはいかんのだ!」

B夫は、自分自身にさらに鞭を打った!

三十数台のロードバイク軍団は、行きとは反対のルートをひた走る。コースもいよいよ後半のクライマックスに差し掛かる。

そう、そこには最後の難関が待ち構えるのだ!

往路で登った大垂水峠。この峠を今度は逆側から登らなければならないのだ

今日のB夫の走行距離はもう90キロを超えている。疲れはないのだろうか…。足は残っているのだろうか…。いや、体調さえ万全なら問題はないかもしれない。

だが、今日ばかりはB夫の腰痛が問題だ。一定の姿勢を強いられるヒルクライムでB夫は果たして腰痛に耐えられるのか???

ちぎられてしまったら、人質に取られているリュックが危ない……。それに、あの親切な人に笑われてしまうかも……

いよいよ大変なことになってきた! 頑張れるかB夫!

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この続きは次回、【完結編】で!

(またまた続くになってしまいました。ゴメンナサイ!次回は絶対終わらせるゾ!)

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