彫金タガネの研ぎ方~第3話 | 工房BijoDamブログ

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こちらの記事は個人的おおたのブログからの
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工房BijoDam 主宰 太田 豊

間が開いてしまいましたが
左側は前回の話にて、断面が真四角ではないために下の線が傾いてますが
右側は実際に刃先が少し傾いてます
下の線にまどわされて、同じように見えると思います
この程度の傾きはタガネ研ぎにおいてはそれ程に重要ではありませんが
角度が寝る程に、下の線の傾きが大きく現れるという話です
実際問題として、右側のようにわずかでも右に傾いていますと
刃先が寝てれば寝てる程に下の線は上の線よりも傾きます
ですから、どちらにしても上の線の水平を見る訳ですが
断面が正確に90度のスクエアの場合は、その下の線で刃の傾きがわかるとも言えます

イメージ 1
さて、ここまでの話が理解出来たとして
もう一つの問題になりますが
研ぐ時に少し傾けて右側を多く削ってしまったので
これを修正するためには左側を多めに削らないと水平にならないのですが
この絵は研いだ面を見ての話です
砥ぎ直しする際には、上下反転しますので
つまり砥ぐ時には、右側を多く削るという事になります

そんな事は言われなくてもわかるという人も居れば、この文章を読み返す人も居るかと思います
例えばですが、日はどちらから上る?という問いに
天才バカボンの歌を思い出す人も私の世代では多いかと思います
西から上ったお日様は~♪なので、その反対が正解だからと東と答える人も居ると思います
これは片方を強く記憶する事で、その反対を導き出すという事かと思います
他にも直流の電気だと赤が+だから黒は-とか
RがライトだからLがレフト、ライトは右だからレフトが左とかです
どちらか印象に強い方を記憶して、その逆を記憶から導くという事です
両方を同時に一夜漬けしますと、頭の中で反転してしまう事があるという経験は誰でもあるかと思います

余談になりますが、私の親の話です
携帯に電話を掛けると切ってしまうというボケがありまして
調べましたら、数あるボタンの中でも切るボタンはわずか3つしかありませんでした
電話が掛かって来ますと、わざわざ切るボタンを選んで切ってしまうんです
掛かって来た人に電話を掛けようと電話帳のボタンを押すようです
これもまた、頭の中で記憶が反転して動作してしまうようです
残念ながら、電話帳のボタンは着信時には切ってしまうようです

この話はまだ片切りの底刃の一面の話ですので、上刃が加わりますとさらにややこしくなります
まして毛彫りの底刃は2面になりますので、なおさらややこしくなります
このように一回で狂った角度を修正出来る訳でもなく、実際問題としては研磨面は複数の面が出来てしまいますので、頭はパニックになります
タガネを砥ごうとしても上手く砥げない理由は、まずはこんなところから、実は問題になっているんです
自分はタガネ研ぎが苦手だと一言で妥協しないでください
それは現実から背けてるだけで、誰もが直面する事です
なぜ上手く砥げないのか?を私の経験から持論ながら理由付けしてみました

これまでの記事を簡単にまとめますと
水平には目のクセで個人差があり、そもそも軸が真四角でないと基準になるものがわからず
また研磨する面の角度でも傾きが異なるので錯覚が生じる
さらに砥ぐ時と見る時で上下反転するという事です

クセ、錯覚、上下反転といった事が重なりますと、何が何だかわからなくなってしまうのです
その事をわきまえてからでないと、文面で説明しても理解出来ないと思いますので、説明した次第であります
次回から研ぎの実戦の話に入りますが
クセは目だけではありません、これが最も重要なポイントとなると思います