「気づかないふり」 & 『プア・ジャパン』10 | Hiroshiのブログ

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今後不定期投稿となります

金曜祭日の勉強を木曜補習とするてへぺろ


というわけで、本日は完全OFF日!爆笑ラブ

 

 

 

<気づかないふり>

数日前、日経株価がバブル超えと騒いでいた。しかしそれが現在の日本の経済の実態を反映しているか、更には今後の日本の経済の将来性を表しているか極めて怪しい。

 

極端な円安による日本株の「お買い得感」。中国からのマネーの還流。アメリカの経済の影響を挙げる人はいても、日本の経済の将来性を挙げる人はいない。

 

よい例が先日のトヨタの業績に関するデーターだ。営業利益も最終利益も上昇しているのに販売は低下している。何かオカシクないか?

 

中学生でも分かる話だが、何故か問題とされない。いや、判っているがお得意の「気づかないふり」、「知らないふり」をしているだけだ!

 

経済音痴の戯言です、お聞き流しくだされ!

 

 

 

 

 

『善と悪の生物学』を読み進めているが、不満だらけ。

 

例えば、著者は「大勢の意見に反して反対意見を述べるときは扁桃体の異常活性化が起こる」というが、捻くれ者の私としてはもう少し具体的データーが欲しい。

 

例えば、どのくらいの頻度で活性化が観察されたのか?(普通100%ということはないだろう?)あるいは最初と、10回目の実験で活性化のレベルには違い(慣れ)がないのか?

 

こうした細かい、具体的データーが実は解析の評価においては重要。この著者はそうした配慮に欠けると感じるがどうだろう? 

 

素直な大学生ならばこうした説明で「納得する」かもしれないが、もし院生ならば反論、異論を出してもらいたい。

 

 

 

 

『プア・ジャパン』10

ここで面白い相関図を出している。それは一人たりのGDPと優秀な大学数比率(ここでは上位100位以内)は相関しているという。実は二つ外れている。米国は直線から上にずれている。もう1つは香港。米国は世界中から博士を集めているからそうなるのだろう。香港は小さいので誤差が大きく出たのかもしれない。最上位はシンガポール。最下位は中国で、日本、韓国とそれに続く。p263

 

勿論、相関は因果関係を示すものではないが、示唆的ではある。

 

さらに高卒と大卒の日本における生涯賃金を比較すると面白い事がわかる。米国では高卒と大卒の差は歴然としていた。しかし日本では初任給ではほとんど差がない。年齢を重ねるごとに差が広がる。典型的な年功序列型。一般的な定年前の50~54歳のレベルで1.5倍の差が出てくる。p269

 

学歴は日本では典型的なシグナリングとして働き、能力を問う仕組みがない。その会社での勤務年限で昇給が決まる割合が大きい。


だから、学生は大学時代勉強しないでバイトやサークル活動ばかりする。場合によってはスポーツ選抜という本末転倒がことも行われている。

 

私は最後の職場である私立大学で教養科目担当が多かったので高校で殆どちゃんとした基礎的学力を付けずに入ってきた学生が一部いたのを経験している。それでも幸いなことに6年卒業時点での国家試験があるので、ほぼ全員がそれなりの知識を身につけるために頑張って卒業できたように思う。それが出来ない学生は大抵退学していった。それでいいと思う。卒業は出来たが、国試に合格できずに何年も国試浪人の学生を見るのは辛かった。

 

ここで意外なことが書かれていた。それは日本は大学院進学率が非常に低いということだ。実はこれまで日本は大学院生倍増計画で無理な定員増加を行い、不適正な学生=ピーターパンシンドローム(自分探し)の学生を入学させたと感じていたからだ。ところがデーターによれば人口100万人あたり日本は修士で588人、英国4216人、ドイツ2610人、アメリカ2550人と圧倒的に少ない。さらに博士は120人に対し、英国375人、ドイツ336人だそうだ。p275〜6

 

先端科学を切り開くのは大学院だという私の考えが正しければ、これだと当然、日本は立ち遅れる。それが現実になっているということなのか?

 

最後に著者は企業がジョブ型雇用に移行し能力と努力に応じて賃金を設定しないと世界に遅れる、いやもう遅れているので、更に差が開くという。p284

 

それは同時に格差社会を許容するということにもなる。なかなか日本では難しい部分がある。しかしこれはセーフィティーネットの構築と公平な税制、特に金融資本課税で可能になるように個人的には思う。これらの事は著者は述べていない。


いずれにせよ、そうした社会変革は痛みを伴うものだが、それを覚悟しないといけないだろう。

 

因みに中国は文化大革命とその後の反動がその「痛み」を起こしたと著者は何処かで述べていた。だから今、中国は巨大な格差を抱えながらも米国に脅威を感じさせる存在になっているのだろう。


私のかつての共同研究者で、好朋友のC氏は文革後の最初の大学入試試験の受験者。今は北京の超有名研究所の所長をしているが、彼に言わせると下放で「上の世代が居ない」とのこと。これを指すのだろう。


 

以上、この本は文庫本程度だが、考えさせることが多かった。しばしば読みながら日本の将来を憂い、辛くなって途中で放り投げそうにもなったが、最後まで読めて良かった。

 

間違いなく『お薦めの1冊』としたい。