『シルクロード』の次に『沸騰インド』という本を読んでいる。最初、本の内容とは別に思ったのは、白水社らしくない装幀だと思ったこと。というのも、白水社は西洋中世史関係で多くの名著を出していて、それらは大抵地味(笑)。例として挙げれば、『中世ヨーロッパの生活』 『もうひとつの中世のために』 『歴史は続く』 『死者と生きる中世』 『ロマネスク芸術の時代』 『中世都市と暴力』 『中世の迷信』 『ヨーロッパの知的覚醒』 などがある。ここでも何度か引用する本たちだ。
それはともかく、最初にこの本を読んでいて感じたのは、 <読みこなすのが大変> ということ、但しこれは読みにくいというわけではない。否、ジャーナリスト出身(元朝日新聞)の著者だけに非常に判りやすい文章。原因は偏にこちらの基礎知識不足にある。
知らないことの連続で頭の中を整理したり基礎知識として覚えないといけないとかで… 例えば都市の名前と位置が頭に入っていないと、その地政学的意味が分からない。そんなわけで読むだけなら簡単(?)だが、頭を整理しかつそれを自分の言葉でメモにする過程に時間がかかった。特に読書においては後者のプロセスをよく理解する上で最重要視している。
1日で読み終わるとタカをくくっていたが、結局半分を過ぎたところで頭の中がパンパンになりダウン。 ま、いいでしょう今回は読書に飽きることが主目的(爆)
『世界をダメにした10の経済学』6
後半に入ると私のこの本に対する評価は変わっていったことは先に述べた通り。
著者は金融は経済学の中でもハードサイエンスに近い分野だという。これは質の高い膨大なデーターを使って仮説を検証できるからだとも。ところが著者が例に出すものは1970~80年代のデーター解析だ。個人的には現在のグローバルな経済では参考にならないと感じている。p194
効率的市場仮説を説明するのに高速道路の1車線と3車線の例えはわかり易い p202 デイトレーダーはそこでは3車線を縫って先を急ぐドライバーに例えている。p203
著者は1987年のブラックマンデーは1日で収まった偶然の出来事だという。p205 いずれにせよ1987年と2008年のリーマンショックは著者によれば『普段なら効率的市場からもたらされる情報供給が途絶えるためパニックに陥るということだけ』らしい。p207
最後に著者は『ケインズ学派にとっては金融市場が不完全で非効率である方が都合が良かった… 金融市場が非効率でなければ、ケインズ理論は成り立たず、マクロ経済学者が失業する』とまで言う。p214~5
「邪悪な理論7」としてマイナス金利が話題にされていた。ここからなかなか良い事も書いているではないかと心変わりした。もとよりマイナス金利は可能だし、キャシュレス社会になれば簡単にかつ大規模に導入できる。著者もそれを指摘している。p220、そして机上の空論ではないとも。p222
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電子的な世界では現金を持っていても使い道はなく、貯金がマイナス金利で減っていくのであれば投資へのインセンティブになる。p226 実際、別のレベルの話だがこれは個人的に経験済み。昔、ファースト・カルフォルニアバンクに口座を持っていた。ここは口座に1万ドルあるいは、1000ドル?以下だと毎年口座維持費(年間25ドル?)が取られていた。帰国時大部分は円に交換したが、小切手が切れるように(はい、クレジットカードのない時代はこれでした)少し残していたが、段々「マイナス金利」で減るのでどんどん使いました。
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1人あたりの現金流通量は1950~60年では200ドルだつたのが、1980年代にはインフレの影響で500ドル。2002年には2,000ドル、2007年には2,500ドルとか。p223 現在ではさらに4,200ドルにまで膨れ上がっている。
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しかもドル紙幣の場合、半分は海外=つまり違法な取引に使われている可能性が高い。
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何よりキャッスレス社会では脱税や犯罪に伴うマネーの移動は難しくなる。何故なら全てのマネーの移動がクラウド上に記録される。しかも誰から誰への移動であるかもだ。これが一番の利点。