私も一応、零細法律事務所の経営者の端くれです。

 

 

ですが、経営者としては決して順風満帆ではなく、いろいろ「しくじり」もやってきました。

 

 

シリーズで、私の経営者としての「しくじり」話をお伝えしています。

 

 

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<目次>

1.前回までの復習

2.社会活動に没頭し,気づけば事務所経営は破綻寸前に!

3.今日のまとめ

 


1.前回までの復習

 

私の新人弁護士時代は,まだ弁護士人口が今よりも少なく,人手不足であり,また債務整理(過払い)バブルもありましたので,売上で苦労することはありませんでした。

 

 

ただ,そのために,私は経営者として当たり前に身につけるべき勉強や,経営者としての心構えや意識といったものを,新人時代に何一つ身につけることができませんでした。

 

 

その後,司法制度改革による弁護士の増員で,弁護士の全体的な経営環境は急速に悪化して行きます。

 

 

本来ならば,ここで気持ちを引き締めて,経営者として謙虚に学び,努力をすべきでした。

 

 

しかし,折しも当時,東日本大震災と福島原発事故が発生し,私の関心はもっぱらこちらに向いてしまいました。

 

 

第1話 合格したら一生安泰⁉︎

 

第2話 順調だった新人弁護士時代

 

第3話 債務整理(過払い)バブルの到来

 

第4話 司法制度改革と東日本大震災

 

 

私は,この事件をきっかけに,社会活動,ボランティア活動に没頭して行きます。

 

 

それはそれで,弁護士としては悪いことではありませんが,それと比例して,私の経営者としての意識はますます遠のいて行ってしまったのです。

 

 

今日は,そのあたりのことをお話します。

 

2.社会活動に没頭し,気づけば事務所経営は破綻寸前に!

 

2011年3月11日に発生した東日本大震災・福島原発事故は,東京に住んでいる私にとっても非常に衝撃的な事件でした。

 

 

当時,私は事務所で仕事をしていましたが,突然の激しく,そして長い揺れに,事務所のビルが倒壊するのではないかと大変な恐怖感を味わいました。

 

 

しばらくして揺れが収まり,テレビをつけると,あの衝撃的な津波の映像が飛び込んできます。

 

 

大津波が目の前を走っている車を容赦無く飲み込んでいく映像,今目の前で人が津波に流されて亡くなっていく映像です。

 

 

この衝撃が大きすぎて,私はしばらく仕事が手につかなくなってしまいました。

 

 

まだ若かった(といっても30代後半ですが)私は,すぐにでも東北の現地に行きたい衝動にかられましたが,何もできない自分がとてももどかしく思いました。

 

 

ただ,数日経った頃,福島県から原発事故の避難者が関東に避難してきており,埼玉スーパーアリーナが避難所として開放されている,という話を聞きました。

 

 

そして,仲間の弁護士や司法書士から,関東にいる避難者の支援活動をしたいので,手伝って欲しいと要請されます。

 

 

私は,「これだ!」と思い,すぐに埼玉スーパーアリーナに駆けつけました。

 

 

コンサートホールだった埼玉アリーナは,円形のらせん階段には床に段ボールを敷いて休んでいる避難者で溢れかえっていました。

 

 

仲間と協力しながら,こうした避難者1人1人に声をかけて,お困りごと相談に乗っていく,そんな活動からスタートしました。

 

 

このことがきっかけとなり,私は,震災の被災者や原発事故の被害者を支援する活動にのめり込んで行くことになりました。

 

 

東北の現地にも数えきれないほど足を運んで,被災者の無料法律相談活動を行ったり,原発事故被害者の損害賠償請求の裁判も手がけました。

 

 

これらの活動は大変にやり甲斐のあるものであり,大変に充実したものでした。

 

 

また,原発事故被害救済の弁護団活動は,弁護士としても大変に勉強になりました。

 

 

ただし,これらの活動は,ほぼお金にならない活動であるだけでなく,膨大な時間を使います。

 

 

当然,私の弁護士としての売上は,それから数年間,下降線の一途をたどることになります。

 

 

そして,気づいた時には,自分の足元の事務所経営が非常に危険な水準にまで落ち込んでしまっていたのです。

 

3.今日のまとめ

 

弁護士法という法律があり,その1条1項では,弁護士の使命が次のように定められています。

 

 

「弁護士は,基本的人権を擁護し,社会正義を実現することを使命とする。」

 

 

この使命はとても大切です。

 

 

弁護士がこの使命を忘れて,ただただ金儲けだけの没頭すれば,弁護士は単なる「事件屋」に成り下り,社会に害悪を与える存在になってしまいます。

 

 

しかし,弁護士がこの使命を実現する活動を行うためには,これまた非常に大切な前提があります。

 

 

それは,弁護士1人1人が,経済的にきちんと自立し,自分の力で食べて行ける存在であることです。

 

 

そうでなければ,そもそも弁護士として活動することができなくなってしまいますし,本当の意味で弁護士としての「自信」もつきません。

 

 

そう,「経済なき道徳は寝言!」なのです。

 

 

しかし,当時の私の意識はまったくこれと逆行していました。

 

 

とても大切な社会活動をしているのだから,売上を上げられなくても仕方がない。

 

 

このような傲慢極まりない言い訳をして,自分の売上を直視し,経営者としての自分に向き合うことを徹底的に避け続けていました。

 

 

言わば,社会活動を隠れ蓑にして,経営者としての役割から逃げ続ける,そんなダメダメ経営者だったのです。

 

 

当然,その結果は,事務所の経営危機となって現れます。

 

 

生まれて初めて,「お金がない!」「キャッシュフローが回らない」ということの恐怖を味わうことになるのです。

 

 

そこで、今日のポイントは,繰り返し強調しますが,

 

経済なき道徳は寝言!

 

ということです。

 

 

人権擁護や社会正義の実現といった弁護士の使命を果たすには,当たり前ですが,弁護士が経済的に自立していること,もっと言えば,自分も経営者として経済的に自立する努力を日々行うことが大前提になっています。

 

 

こうした大前提を忘れて,社会活動に没頭した挙句,私の事務所や私の生活がどうなったか?

 

 

そのへんについては,次回に具体的にお話しします。

  (つづく)

 

 

 

 

【活動ダイジェスト】

昨日(5/5)は連休最終日でしたが,早起きして渋谷区倫理法人会の経営者モーニングセミナーに参加。

 

 

エネルギッシュな経営者仲間の刺激を受けて,私も休みボケをリハビリしてきました😅

 

 

今日は,新規のご相談が3件と,夕方からはキャッシュフローコーチ仲間の勉強会です。

 

 

 

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