マンションの区分所有者どうしの勢力争いのようなことが行われるマンションがあります。
そうした紛争が顕在化するケースとして、たとえば、一定の区分所有者が管理組合の理事等の役員になることができないような内容の管理規約が定められることがあります。
このような不公平な内容の管理規約は、法律上無効とされることがありますので、注意が必要です。
分譲マンションの区分所有者どうしというものは、いわばご近所、お隣さんですから、仲良く良好な関係を保つというのが理想ではあります。
ところが、得てしてご近所やお隣さんというものは、利害もぶつかりやすいものです。
ことにマンションの場合は、区分所有者どうしは一種の共同体のメンバーでもありますので、内部で利害対立や政治対立(派閥抗争)などが起こりやすい土壌にあるとも言えます。
マンションの運営は、基本的にマンション管理組合が行うことになっており、特に日常的な実務は管理組合の理事会に委ねられています。
この理事のポストを特定の区分所有者の派閥が独占し、対立している区分所有者を排除するようなことが行われる場合があります。
具体的に紛争になったケースでは、もともと管理組合の役員や理事は総会で選任することとされていたものを、マンションの管理規約を変更し、理事等の役員に立候補する場合には、理事会の承認を必要とするというような条項を設けてしまったというものです。
このような規定があると、現理事会のメンバーに批判的な区分所有者は、理事会の承認を得ることができず、理事に立候補することができないことになってしまいます。
そもそも、マンションの管理規約というものは、そのマンションに関する基本的なルールを定めるものであり、規約を改正するためには総会で議決しなければなりません(しかも、単純多数決ではなく、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成が必要)。
それでは、総会で議決さえできれば、管理規約でどんなことでも定めることができるのでしょうか?
東京高等裁判所の平成31年4月17日判決(判例時報2468・2469合併号5頁)は、まさに上記のような事例が争われた事件です。
上記の判決では、そもそも管理規約は、どんなことでも定められるというものではなく、区分所有者間の利害の公平が図られるように定めなければならないとしています。
その上で、公平を害するような管理規約は無効であり、上記1の事例の変更された規約は、特定の立候補者について理事会のみの判断によって立候補を認めず、総会の決議によって役員としての適格性が判断される機会も与えられない事態が起こり得ることから、公平を害する規約である旨判断しました。
そして、このような管理規約は、たとえば、判断能力が不十分で成年後見人がついているような人など、客観的に見て明らかに理事としての適格性に欠ける人について、理事会で承認しないことができるという趣旨の限度で有効であると判断しました(つまり、原則は無効だが、例外的に極めて限定的に有効となる場合があるということです)。
いくら総会の決議(しかも上記の4分3の賛成)を経たといっても、少数派が理事になることを徹底的に排除するような不公平な規約を定めることは、法律的に許されない(つまり、そのような規約は無効になる)ということになります。
そもそも、マンションの管理運営について定めた建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)は、一部の理事が権限を独占するような不公平、不公正なマンションの管理運営を許さず、ある程度民主的な管理運営を行うことを求めていると言えます。
というのは、上記で述べたように、マンションの区分所有者どうしは一種の共同体であり、一部の理事の暴走を許してしまえば、他の区分所有者の利害に重大な影響があるためです(たとえば、一部の理事がマンションを食い物にしたりするケース)。
というわけで、今日のポイントは,
ということです。
また、マンションの区分所有者としては、日常的なマンションの管理運営にきちんと関心を持ち、人任せにしないという姿勢も大切です。
管理運営に関心を持つ区分所有者や物言う区分所有者が少なくなってしまうことは、一部の理事の暴走を許すことにつながりやすいと言えます。
まあ、国政も同じですが、権力者の暴走を許さず、民主主義を守るためには、きちんと関心を持って声を出していくことが大切だということですね。
