Bigmama Words -6ページ目

大晦日に・・・

 「あけましておめでとうございます」

 去年の6月に義姉がなくなり、本来なら喪中で新年の挨拶は控えるべきなのですが、元旦になると反射的に、その言葉が口をついて出ます。半世紀以上も繰り返してきた挨拶ですから今更止めようがありません。どうかご容赦ください。

 一昨年には10代から親しかった友人があの世へ去り、昨年は義姉がと、友人知人や近しい人との別れが、ここ数年でとても多くなりました。今月の半ばには私も後期高齢者の仲間入りです。iいつこの世におさらばしても不思議はない年齢になったのだと、またひとつ年を重ねて思いをあらたにしていますが、昨日の大晦日はわが家に娘や息子夫婦、孫たちが集まりました。四世代、上は94歳から下は6歳までが顔をそろえたのは、本当に久しぶりのことです。あと何年、こうして集まることができるのか・・・、残された時間には限りがあります。一日一日を大切にしようと思いながら、どこかでずっこけてしまう私です。気をつけなければ・・・。

ぼけますから・・・

 連れ合いが映画「ぼけますからよろしく」を近くの公民館で見てきて、私にも見せたかったと言います。87歳で認知症を患う妻と97歳でそれを介護する夫を、その夫婦の一人娘が撮ったドキュメンタリー映画ですが、とても感動的だったそうです。でも、同時に自分たち夫婦の行く末を見るようで身につまされたとも言うのです。

 私たち夫婦は80代になるまでには、まだ少々間がありますが、私の耳が遠いせいか(子供のころから難聴の気があるのです)最近は夫の問いかけに対して、私がとんちんかんな返事をすることが多く、会話にならないと連れ合いを嘆かせる状態が増えているのです。それとこのところ物忘れがひどくなってきて、先日もスーパーで買い物をして、買ったはずのものがマイバックに入っていなくて、愕然としました。確かに買ったはずなのに、レシートにも載っているのに、品物がないのです。言えば夫に叱られますから黙っていましたが、自分で自分が信じられませんでした。曽野綾子さんが昔のことは覚えているのに、近過去のことはすぐに忘れてしまうと、何かの本に書かれていましたが、本当にそうなんですよね。子供のころから記憶力がいいと周りの人に褒められ、自分でもそう思っていたのに、なんということでしょう。70の坂を越えたら、自分でも予想しなかった自分があちこちから出てきて、今のうちに私も「ぼけますからよろしく」と、夫に言っておいたほうがいいかもしれないと、本気で考えてしまいました。

読みました

 このところミステリーをつづけて読みました。ボスト・ラテンの「ひとり旅立つ少年よ」(田口俊樹訳・文藝春秋)とギヨーム・ミュッソの「ブルックリンの少女」(吉田恒雄訳・集英社文庫)の二冊ですが、二冊とも読みながらハラハラドキドキ、先へ先へと読み進み、早く終わりにたどり着きたくなって困ってしまったほどです。

 「ひとり旅立つ少年よ」のほうは19世紀のアメリカが舞台で、詐欺師の父親と、しょうがなしにそれに加担してしまった12歳の息子(少年)を中心に話が展開します。父親は奴隷解放運動の資金として集められた4千ドル以上の大金をだまし取ろうとし、少年も渋々それに従おうとするのです。でも、そのお金をさらに盗もうとする悪党が登場して父親が殺されてしまったことから、少年は次第に変化していきます。ニューヨークのブルックリンからミズーリまで、父親の罪をあがなうために、そのお金を届けようと決心するのですが、道中にはさまざまな試練が待ち構えています。善人もいれば悪人もいます。とくに父親を殺した悪党は執拗に少年をつけ狙い続けます。というわけで、読みながら私も一緒に19世紀のアメリカを旅しているような気持ちになりました。本を読んでこんなに感情移入したのは久しぶりです。それに比べると「ブルックリンの少女」は、ちょっと読み終えた後の感想が違います。作風も違えば、題材も違いますからあたりまえですが、読み終えて、「ブルックリンの少女」には、ある種のもの足りなさと、人が人に操られる恐ろしさをちょっぴり感じてしまいました。

 ストーリーはある出来事から過去の自分を捨て、別の人間になって生きてきたヒロインが恋人と喧嘩して、そのあと姿を消してしまったことから、恋人がヒロインを捜しまわる話ですが、その過程で恋人は否応もなくヒロインの過去と向き合わざるを得なくなります。途中でヒロインがアメリカ人だとわかり、ラスト近く、ヒロインの背後にアメリカの大統領選挙が絡んだりしてきますが、話としてはそれなりのところに落ち着きます。

 ただ後半で私が興味を持ったのはゾラー・ゾアキンの存在です。彼女が一人の男を政治家として、アメリカ大統領にまで上り詰めさせようして、犯罪にを犯し、何ら悪びれるところがないばかりか、それを良しとする。それはそれでいいのですが、大統領候補が殺人まで犯しているのに、そのことについての、その後の描写がないのは正直言って肩透かしをくらったようでした。途中が面白かっただけに、ちょっと疑問が残りました。