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Between The Sheets ~夢への抒情詩~

寝る前にちょこっと読んでほしい、素敵な物語をあなたにお贈りします。

 翻訳するという講義を、週1で受けています。

 最近訳したのは、
 映画『天使にラブ・ソングを2』の挿入歌“JOYFUL, JOYFUL”や、
 ミュージカル『The Big』で歌われた”Cross the Line”などなど・・・。

 その音楽を聴きながら日本語に直しているので、
 曲との一体感がより楽しめます。




 厳密に言うと、翻訳には2つの意味があります。
 「対訳」と、「訳詞」。
 原文に(忠実に)対応させて訳文するのが対訳で、
 英語の歌を日本語で歌えるようにすることが訳詞です。

 わたしが講義でやろうとしているのは、対訳の方です。
 「どう違うの?」って、きっと思うでしょう。
 
 例えば”ドレミの歌”。
 「ドーはドーナツーのドー・・・」ってつい口ずさんでしまうやつです。
 あれの原詞は、
 「Doe, a deer, a female deer・・・」ってことは有名ですね。

 直訳すると、日本語のものとは全く別物になります。
 音符の長さと低音に合わせて言葉を置き換える。
 多少(?)の意味の違いは、大目にみる。
 これが、訳詞。

 では、対訳とは何か?
 まずは原詞の意味を一番大切にすることから始まります。
 それを踏まえた上で、
 自分の言葉で日本語を当てはめていくのです。

 英文と日本文が同じ分量になるよう、
 両者を照らし合わせながら行います。
 あと、わたしが訳しているのは歌の歌詞だから、
 当然メロディーラインとのバランスも考慮しないといけません。




 そうしてできた対訳を周りのみんなと比べてみると、
 言いたいことは同じなはずなのに、
 それぞれ表現に違いがあるのです。
 
 当たり前のことなのに、それがとっても面白い。
 時々、上手い言葉の言い回しにハッとさせられることもあります。
 


 
 100人いれば100通りの言葉がある。

 原詞の意味をきちんと捉えることや文字の分量など、
 いろいろ制約がある中で言葉を探るという作業に、
 とめどなく広がる可能性を見出すことができます。




 気が向いたらどうぞ、対訳にチャレンジしてみてはいかがでしょう。
 数人でも、1人でも、十分楽しめますよ。
 気に入ったフレーズだけでも、もちろんOKです。
 未来はどんなふうにでも書き込める。


 この白いページが少しずつ埋まっていく度


 知らない自分に近づいていく。




 これは自らが指し示すみちしるべ。


 あらゆる可能性の宝箱。
 プラスチックのふたを開け、錠剤を数粒取り出す。
 ビタミン、ミネラル、カルシウム・・・。
 その一粒一粒に、人間の体に必要な、様々な栄養素が閉じ込められている。

 飲んだらきっと、あたしは完璧になれるはず。
 いつもそう思いながら口に入れるけれど・・・、どうしてだろう。
 完璧になった気がしたためしなど、今まで一度も、ないわけ。

 あたしはそれらを、一気に口に頬張り、水で流し込む。
 欲張りすぎ? 手当たり次第すぎ?
 だけどこうでもしないと、不安で不安で仕方ないの。



 たった一時の気休めでも。
 あたしの足りない部分を、どうか補って。






 あたし、依存してるみたい。
 目が覚めたら


 そこはきっと未知の世界。


 

 今はただ



 じっと目を閉じて


 この長い距離を我慢するのみ。
 「大人になんかなりたくない」
 午後5時。だんだん空が薄暗くなってきた頃。
 ブランコを小さくこぎながら、彼はこう呟いた。

 「どうして?」
 彼の隣で同じようにブランコに腰掛けたあたしは、そう尋ねる。
 すると彼は顔を上げ、キッと宙を睨みつける。
 「大人なんか大嫌いだ。理屈ばかりこねて、すぐ人のこと封じ込めようとする」



 彼の言うことがわからないわけじゃなかった。
 だって、あたしにもあるから、そんなふうに思うこと。

 親に対して。先生に対して。
 他にも、役所の人や、警察や、アナウンサーや、ワイドショーのコメンテーターや、国を動かす人や・・・。
 みんな、あたしの思っていることとは別のことを口にする。
 そして他者を、ううん、あたしたちを批判する。


 
 でも思うの。
 「大人って、いつから大人になるんだろうね」
 「さあ・・・。いつからだろう」
 「あたしたちはいつ、大人になるのかな?」
 彼は地面に足をつけて、ブランコを止めた。

 「わかんない。一生、子供のままかも」
 あたしたちは、顔を見合わせて笑い出す。

 「ねえ。じゃあ、偉そうにしているあの人たちも、実は子供なのかな?」
 「見た目は大人でも、中身はそうなのかもな」



 大人と子供の違いって、何だろう?
 あたしたちから見た大人は、確かに大人。
 でももしかしたらそれは、あたしたちが勝手に思っているだけ?
 
 「そろそろ帰ろっか」
 彼がブランコから飛び降りて、あたしの前に手を差し出した。
 あたしは頷いて、その手を取る。

 深い紫色が、空を夜に染め替えていく。
 なぜだか彼の手が、頼もしく思えた。
 明るい話ではありませんが、
 身内の者が親しく付き合っていた友達が亡くなりました。


 わたしは直接彼のことは知らなかったのですが、
 電車にはねられた事故死だと聞き、胸が痛みました。




 身内の話によると最近の彼は、
 家庭の経済的な事情や折り合いの悪くなったゼミの先生のことなど、
 数々の悩みを抱えていたそうです。
 
 その話は彼が亡くなる前から聞いていただけに、
 不幸が重なり合ったようなこの出来事が余計に重々しく感じます。



 
 彼はその直前、
 何を思って亡くなっていったのでしょう。
 どんなことが、頭に過ぎったのでしょう。
 それを思うと、涙が出ます。

 もし、
 絶望に包まれたまま息を引き取ったのだとしたら、
 こんなに悲しいことはありません。

 


 時間に追われて信号無視をしてしまったことで起こった事故だったようなので、
 自ら命を絶ったというわけではありません。
 
 そのことに少しは救われた気がする反面、
 まだたった21年しか歩んでいない人生なのに、
 一瞬にして未来を粉々にされてしまったことが、
 ものすごく悔やまれます。

 その日の朝起きたとき、
 まさか今日、自分がこの世からいなくなるなんて、
 誰が想像できるでしょう?
 


 
 予期せぬ死は誰の側にもある。
 
 もし身内の友人でなかったら、
 これもひとつの事故として素通りしていったのでしょうか。
 そう考えると怖いです。
 螺旋階段をのぼっていると


 自分が今どこにいるのかという


 位置感覚を見失ってしまう


 そして


 一体どこまで進めばいいのか


 だんだんわからなくなってくる
 

 

 そこは目の回りそうなラビリンス
 「卵ってさ」
 休日の遅い朝。
 ホットケーキを作ろうとしているあたしの側に、彼は寄って来た。
 そして、牛乳と一緒に冷蔵庫から取り出した卵を眺めてから、そう呟く。

 「上手に割れる?」
 「まあ、人並みには」
 「ふうん、そっか・・・」

 あたしの答えを聞いた彼は、納得したようなしないような表情で軽く頷いた。
 「何でそんなこと聞くの?」
 卵を片手に取り、あたしはボウルを手に取る。
 ちょうど割ろうと思っていたところだっただけに、その心意が気になる。

 「俺、未だに上手く割れないんだ」
 「上手く割れなくても、中身が取り出せたらそれでいいじゃない」
 すると彼は、やんわりと首を横に振る。
 「割られるために存在するなんてさ、何か悲しくない?」
 あたしは手の中にある、その真っ白な外殻を見つめる。

 「卵を割ることでいろんな料理ができる、ってのはわかるよ。だけどいざ割ろうとすると、いつも手がすくむんだ」
 「割られる外側が悲しくて?」
 「何て言うか、あるべき形を壊さなくちゃならないことに・・・」

 卵の概念。
 あたしは卵の中身に用があるから、外側のことなんて知ったこっちゃないけれど。
 すべすべしていて角のない、この流線型をいとおしく思う人もいる。

 「何だか恋愛に似ているわよね」
 「え、そう?」
 目を丸くした彼を見て、あたしは思わず笑った。 
 それは、視・聴・嗅・味・触の5つの感覚。
 そんなこと説明されなくてもわかってるよー。
 ・・・まあそう言わずに、お付き合いくださいませ。



 何かを書くとき、一番、どの感覚を使いますか?



 ということをぜひ皆さんにお伺いしたいのです。

 書くもののテーマによって多少の違いはありますが、
 わたしの場合、視覚から得たものをよく書きます。
 頭の中でイメージしやすい上、言葉でも表しやすいからです。



 感覚器官から得た情報を表現する方法のひとつに、
 「形容詞」というものがあります。
 きれい、うるさい、くさい、あまい、あたたかい・・・

 勝手にわたしが思っているだけなのですが、
 こうした単語は視覚からくるものが圧倒的に種類多くないですか?
 だから文章を書くとき、つい視覚頼りになっちゃうんじゃないかなあ。



 でも、何より頼りにすべき感覚は
 「心」なんじゃないかな。
 これこそまさに、第六感ですね。 
 「髪、切ってきた」
 待ち合わせの時間に遅れて来た彼はそう言って、ニット帽を脱いだ。
 「随分短くしてもらったわね」
 あたしは目を丸くして、まだ見慣れない彼の髪型を眺める。

 少し長めのウルフカットだった髪は、見事に切り揃えられている。
 パーカーを脱ぐと更に、首の後ろがスッキリしているのがわかる。
 まあタートルネックのセーターを着ているから、そんなに寒くはなさそうだけど。

 「変、かな?」
 ウエイトレスが持ってきたチェーサーを飲みながら、彼は戸惑いがちに尋ねる。
 大胆なベリーショート。色もほとんど地毛に近い。

 

 実を言うと、あたしは彼のあの少し伸びた髪が好きだった。

 サラサラしていて、指で触ると自然に流れ落ちていく、あの感触が好きだった。
 茶色の毛先が、陽に透かされて金色に近づくのを見るのが好きだった。

 

 「前の方が、やっぱよかった?」

 ほめもけなしもせず黙っているあたしに、彼はますます不安を募らせたような顔で尋ねる。
 「ああ、ごめん。何かビックリして」
 あたしが慌ててそう謝ると、彼は膨れっ面になって再び帽子を被った。こんどはさっきより、もっと深く。

 「どうしてまた被るのよ?」
 「だって、似合わないんだろ?」

 まるで子供みたいな彼の仕草に、あたしはクスクス笑った。
 「バカね、似合ってないわけないでしょ。ほら帽子取って」
 あたしの言葉に、彼はしぶしぶ帽子を脱ぐ。
 「嫌いか、この髪型」
 静電気でくしゃくしゃになった髪を、掌で撫で回す彼。



 「前のも好きだったけど、今のはもっと好き」

 彼の小さな耳たぶに、銀色のピアスが光っているのが見える。
 よっぽど外が寒かったのか、少し赤みを帯びた皮膚。
 人前にもかかわらず、あたしはそこに手を伸ばす。ヒヤリとした感触。

 「この耳にキスしたいくらいよ」